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夜の浅草神社で「利き酒」と「利き米」をしてきました!

浅草と言うと、誰もがまず初めに思いつく場所といえば、浅草寺と言うことになるでしょう。ただ、浅草に来られた際は、浅草寺と切っても切れない関係にある、浅草神社にも行ってもらいたいです。

左から浅草寺の仁王門、五重塔、観音堂(本堂)

以前noteに、浅草の由来について記したことがありました。

推古天皇の時代に、近所の兄弟が舟に乗って隅田川で魚をとっていました。すると網に観音像が掛かったといいます。兄弟は「こりゃあえらいこっちゃ」ということで、地元の郷士・土師中知さんに「こんなものが網に引っかかってしまいました。なんだか分かりませんが、ただの人形じゃないことは確かなようです。どうすりゃいいでしょうか?」と尋ねました。

推古天皇の時代の日本は、まだ仏教が知れ渡っていたわけじゃありません。おそらくこの兄弟も、観音像がなんなのか、よく分かっていなかったんじゃないかと思います。

聞かれた土師中知さんは「これは仏様に違いない。なんで川を流れてきたんだろうか」と、いぶかしんだはずです。そうして「だけど、ともかく尊いものに違いない。私の家は手狭だが、ともかくもお祀りしておこうじゃないか」。

これが「浅草寺」の始まりです。そして、仏教や観音様の信仰が浅草界隈に定着しつつ、この観音像の由来も一緒に広がっていったのでしょう。そこで、観音様を川からすくい上げた兄弟と、それを祀った土師中知の三人も、やしろを建てて祀られることになりました。こちらが浅草神社=三社様の由来です。もともと3人が祀られたから三社……なのでしょう。

これで浅草寺と浅草神社が、切っても切れない関係だと、お分かりいただけたかと思います。

かくいう我が家は……いつも混んでいる浅草寺は、本堂まで登ってお参りすることはめったにありません(遠くから拝ませてもらっています)。その代わり、いつも空いている……というと失礼ですが……浅草神社をお参りすることが多いです。

そんな浅草神社では、毎月1日の夕方から、「社子屋」という小さなイベントを開催しています。

別に、氏子を増やそうっていうようなイベントではありません。浅草神社の案内によれば下記のような趣旨で行っているとのこと。

日本伝統文化の継承を目的に社務所を定期的に開放し、神道や神社そして御祭礼をはじめ、我が国古来の大切な伝統文化や古き良き風習、さらには伝統芸能・工芸等を広く学ぶと共に、知識や教養を身につける貴重な機会です。

■武田昌大さんの「お米」の話

例えば今月の1日に開催されたのは、「お米と、そのお米からできるお酒について学ぶ」セミナーです。

会では大きくわけて「お米」と「お酒」について学んでいきました。いずれも登壇者が豪華でした。

まずは「お米」について語ってくれたのは、内閣府で地域活性化伝道師や総務省で地域力創造アドバイザーを務める武田昌大さんです。

彼は米どころ秋田県の生まれ。かつては地元が嫌いで、秋田を出たくて仕方のない若者だったと言いながら、どれだけ秋田が魅力の薄い地域なのかを、各種のデータをもとに語ります。

例えば、「行ったことがない都道府県ランキング」をはじめ「幸福度調査」、「人口減少率」など、秋田県は軒並みワースト1だそう。

ただし、ワーストだけではないと続けます。秋田県がナンバーワンに輝くのは「お酒の消費量」と「睡眠時間」。こうしたデータから分かる秋田県人の特徴は、いつもお酒を飲んで寝ている……という自虐的な分析。

そうしたデータを見ていると、武田さんが秋田を出たい! と、若い頃に願っていたのも無理からぬことと言えそうです。武田さんは、高校を卒業すると立命館大へ進学して秋田を離れます。大学卒業後には夢だったゲーム開発会社に就職。秋田県出身者の中では順風満帆の人生を過ごし始めたのです。

そんな武田さんが25歳の時に、秋田に帰省し、故郷の情景を見て愕然とします。本当に故郷の秋田がなくなるかもしれない……と。

地元の駅前商店街は、平日の日中でも店のシャッターが閉まっていて、歩く人影は見られません。文字通りのシャッター商店街だったのです。

そこから彼は、秋田の魅力を伝えていこうと奮起します。秋田といえば「米」ということで、平日は東京で働きつつ、週末は秋田へ行き、米作りを始めるとともに、秋田の様々な人と話をしていきます。

そこで気が付いたのが、良いお米を作っても、農協へお米を売ると、秋田の色んな人が作ったお米とミックスされてしまうこと。スーパーで並ぶ秋田産のお米は、自分達が作ったお米とは言い切れないということです。

自分たちが作った特徴あるお米を、そのままお客さんに売って食べてもらいたい。そこで、第一歩として、想いを同じくする農家の若者を集めて「トラ男」というブランドを作り、トラ男のお米として、それぞれの農家が作ったお米の販売を、2010年に開始します。

この「トラ男」は、「トラクターに乗る男前」という意味だそうです。

また、ほぼ同時期に、日本橋小伝馬町で「おむすびスタンド ANDON」を開店します。これはアンテナショップのような位置付けですが、自分たちの作ったお米を、自分たちで炊いて、もっとも美味しい状態でお客さんに食べてもらい、「トラ男のお米」のファンを増やすことが目的だったといいます。

おにぎり販売だけでなく、各種イベントを開催して、どんどんファンを増やしていった「トラ男のお米」は、様々なメディアにも取り上げられて順調に知名度を増やして来ているといいます。

また武田さんは、2020年の春に、下北沢に2店舗目を出店します。こちらはお粥とお酒のお店です。当初は、飲み屋的な位置付けでしたが、開店直後に新型◯◯◯禍に見舞われて、街に人が来なくなってしまいました。「どうしよう?」と考えながら、店舗の窓から外を見ていると、外から下北沢へ来る人は激減しましたが、元々の住民は周りにたくさん住んでいることに気がつきました。そこで、地元の人に愛されるお店へとコンセプトを転換することにしたといいます。

さらに観察すると、お店の前を、やたらと犬の散歩をしている人がたくさんいることに気がつきました。そこで編み出したのが、犬用のおにぎりです。無添加で体に優しいおにぎりなので、ペットの犬たちは大喜びです。

さらにお店の隣は保育園(幼稚園だったかも…)なので、その子どもたちが楽しめるようにと、おにぎり形のガチャガチャを店の前に設置しました。すると幼児たちが、お店に集まり、ガチャガチャをして、おにぎりを食べていくようになりました。今では、お店に子どもが入ってきて「おにぎり ちょーだい!」と……当初は大人たちがお酒を飲みに来る場所を想定していましたが……カウンターに子どもたちが座り、秋田産のりんごで作ったジュースを飲んでいくそうです。

そんな話を聞きながら、その夕方の会では、「トラク男のお米」と、スーパーで買った あきたこまち が振る舞われました。はたして、「トラ男のお米」は美味しいのか!?

おかわりもいただきました

結局のところ、見た目は「トラ男のお米」の方がキラキラと輝いているように思えましたが……味が美味しいかどうかで言うと……正直、圧倒的な差は、わたしには分かりませんでした(笑)。どちらも美味しいんですもん。

■下戸なのに利き酒をしてみました

利き米の後は、日本酒講座です。

ただ……わたしは下戸なんですよ(笑)。下戸がなんで来たんだ!? と怒られそうですけど、これって、妻が半ば強引に申し込んだんですよね。

それでも、地元の酒屋さん「酒の大桝(だいます)」のご主人によるお酒の解説は、聞いていて楽しかったです。内容はすっかり忘れてしまいましたが、佐賀県の富久千代酒造の「鍋島」というブランドは、同店で人気が急上昇しているそうです。

下戸ですが、出していただいたお酒は、すべて少しずつ飲んでみました。思ったのは、嗅いだ感じが甘い風味だと、ちゃんと味も甘いものなんだなということ。今回ので言うと千葉の「電照菊」と、佐賀の「鍋島 純米吟醸山田錦」が、もっとも甘く、ペロッと飲んでみた感じだと、いずれも甘みを感じつつ、飲んだ時に喉がカッと来る刺激も少なく、下戸のわたしでも、喉越しやわらかくて飲みやすかったです。

毎年、正月に少しだけいただいている「三社権現社 清酒」は、わたしの中での、いわゆる日本酒っていう感じですね。御神酒なので、ありがたいなぁ…という感じです(笑)。

一方で、この利き酒の時間に、小学2年の息子は何をしていたか……と言えば、利きオレンジジュースをさせてもらっていました。100%のと、30%くらいのと、25%くらいのオレンジジュースを、巫女さんと一緒に楽しそうに飲んでいました。

まぁでも途中からグズりが激しくなり、わたしもお酒が飲めるわけでもないので、妻を残して途中で離脱させていただきました。我が家と同じように、子どものいる家族も、気がつけば、もう帰ってしまったようでした。

■おもわぬお土産

社務所の会議室を「すいませぇ〜ん」と退出して、玄関へ行きました。すると、息子がめざとく、受付に置いてある、小分けにされた玄米を見つけました。

「これ、もらってもいいんじゃない?」なんて言いながら触ろうとするので、「黙って持っていったらダメだよ」と注意しました。すると事務所の奥から人が出てきて「よかったら持っていってください」と言ってくれました。「ありがとうございます」と一つ受け取ると「玄米なので、白米と一緒に炊いてみてくださいね」と言います。「いただきます」と言って、靴を履いて出ようとすると、もうひと袋を持ってきてくれて「良かったら、人数分もっていってください」と、手渡してくれました。

それから、わたしと息子は、夜の浅草神社&浅草寺の境内を散歩しました。時折、近所の人たちが立ち寄っては、拝殿前で深々と頭を下げていきます。

あとで妻に聞いたのですが、社務所の玄関でいただいた玄米は、福島県の「タカハシ農園」さんから奉納された三俵のお米のお裾分けだそうです。

珍しいなと思って、たまたま撮っていた奉納米

なんだか、そういうのって嬉しいです。どういうの? って……そういうのです(笑) 善意の善意……みたいな……わたしもなにか、善意をつなげたくなります。

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