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散文のような詩など

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詩のようなものたちの置き場にします。 思いや記憶、出来事を別の形へと変えてお届けします。 中二で患うの黒歴史も晒しましょう。
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記事一覧

詩「シャリラ」

こんな夜には 何も視たくない 何も訊きたくない 何も云いたくない 何も感じたくない 何も考えたくない 何もかもが無意味に思える こんな夜には こんな夜には 笑いたくない 泣きたくない 食べたくない 飲みたくない 眠りたくない 心も体も怒りに支配されている こんな夜には 明日は来るのだろうか 明日には何か変わるのだろうか 人々はなぜ 明日が来ることを当然だとしているのか わたしに明日が来たことを実感できる日は 燃える朝焼けを 左に傾いた視界で何度となく捉えていても 一向に訪

詩「わたしは白猫」

わたしは涙に色があると知っている わたしの涙は墨のように真っ黒だ ときに粘度を帯びていて 頬を裂きつつ流れ落ちる けれど誰かの涙の色は判らない 涙は確かに見えているのに色は判らない 涙としてしか見えない それでも わたしのものより絶対的に 奇麗な色だろうことは 承知している 或いは 純粋、葛藤、孤独、挫折 逃げる、生きる、守る、忘れる 歩む、転ぶ、立ち上がり支えられ 抗う、見ない、選ばない、モラトリアム わたしよりよほど人間らしい そんな他人が暮らす街の灯を 羨ましい

詩「告発文」

世界はどうしてこんなにも残酷で 冷たくて汚くて痛くて臭くて 何も無くて それでもどうして 絶望に振り切らせてはくれないのでしょうね 心身を切り刻まれて 魂を抉られて 呼吸さえままならず もう無駄とさえ思える生命の 手当てをしようとしてくれる人たちを もうどうにもならないわたしを 放って置いてはくれない人たちを こんなにも愛おしく思ってしまうのでしょう どうして絶望だけを見せてはくれないのでしょうか 血を吐き、泥水を飲んで 吐しゃ物に塗れ 見上げると、人の足の裏 のっぺらぼ

詩「人生の当事者」

子供の頃からいつも 仲良しの友達がいなくて 誰かと誰かの仲違いの話を聞いては それは大変だ!と その当事者のお互いを励ましたり 蚊帳の外にいるばっかり 仲良しだって わたしを嫌いじゃないって みんな言うけれど わたしはいつも みんなとは別のところにいるの 蚊帳の内には入れずに いつも、いつの間にか わたしは独りぼっちなの 嫌われることも 強く好かれることも 蚊帳の外にいるから 無くて いつの間にか、いつも 独りぼっち よく誰かが 悩みを打ち明けてくれていて わたしは一緒

詩「9YEARS」

楽しみにしているよ。 そう言った やさしい瞳 幼いわたしの かわいい夢 移ろいゆく時間の中でも ずっと変わらないもの 大切なこの気持ち 幸福はすぐそばにある 当たり前だと思っていたの 震える手で鋏を手に取った もうわからないよ 浮かんだ ママの涙 子供のくせに。と嘲笑って 子供だからと甘えるな。と怒鳴りつけた あの大人は今も知らない わたしが泣きながら切り落としたのは 髪なんかじゃないの 毎朝ママが結わってくれていた あたたかい思い出とその手首 九つのわたしの心 繋

詩「御守りが壊れた日」

泥の中に咲いた花 罅割れた鏡の向こうの世界 手を振る少女の瞳を覗く 夢はもう消えたのね 蕾が開く音を聞く 焼け野原に並んだ約束たち 爪を剥いで数えたら 指は二十本ありました あの頃はもう戻っては来ないって その延長線にいまがあるって? 認めたくないからって 逃げられもしないんだって ねえどうしてなの教えてよって 誰も知らないことなんだって こんなに喚いても変わりはしなくって 地団駄踏んで 駄々こねて あなたが教えてくれたこと いまになって ああなんて 眩しいほどに降り

詩「殺気」

コップのお水にお砂糖を ほんの少しだけ混ぜました そんな罪悪感を抱いて 今日は眠りにつくのです   お砂糖に襲われる夢を見ました   ココアの粉末をいつもより 多めに入れて濃厚に そんな不安を胸にしながら 明日はお出かけしようと企みます   ココアの海で遭難する夢を見ました   ママの手料理を食べないで お菓子を食べて食事の代わり そんな後ろめたさを覚えつつ 今夜は夜更かししてやるぞ!と決めました ママに叱られたから眠ることにしました   ママに抱きしめられて 息ができなくな

詩「本日も晴天為り」

わたしは本棚に棲んでいる 今日の髪色は桃の花 瞳は若草色に染めて 少し左を気にしつつ 隣の部屋で鳴り響く音楽 上の階はある種の異世界 下に階ではミシンが走る 壁にはドアノブがずらり並んで ええ、そうね……。 オレンジのネコがこっちを見てるわ カギしっぽをピンと立てて 黄色の水玉模様がとってもキュート お気に入りのバレッタの横 蝶々結びのリボンがくつろいでるの わたしは本棚を警備する 緩く巻いた栗色の髪 エメラルドグリーンの瞳の先 見据えているの いつかの記憶 たまに脳

詩「神経衰弱」

ここまでは良かったけれど この先は求めてもないの ここら辺で終わりにしましょう   泣いて 喚いて 切って 笑みを湛え そっと 睨んで 乱れ咲いた 花を踏んで   夢ならどうか どこまでも行って 空を飛んだら 帰らなくていいの 星を溶かした ソーダ水を飲んで 譲り合う椅子 だれも座らないで   そこでは正しいのでしょう それこそ間違いでしょう そして選ぶのは自由でしょう   笑って 殴って 知って 幻に酔って 叫んで 揺れて 胸を裂いた 言葉捨てて    遠い場所なら きっ

散文「メンヘラ女からの手紙」

性被害を受けて 被害者の看板を上げたの わたしはきっと酷いことをされた PTSDにもなった だからきっとこんなにツライんだって でもときに それは言い訳なのかなあ? そう考えるときがある 本当になかなか乗り越えられないの? それとも乗り越えようとしないだけ? 被害者の立場にしがみついているだけなのかな?って どうにもならない!って 本当にどうにもならないのかな?って どうにもしたくないだけじゃないのかな?って でも誰もその答えを持たない それでも やさしいひとは言うの

詩「ヒツジの話」

迷子の夢見るヒツジにお願い事をしてみた セーターを編んで着せてあげるから そのふかふかの毛を刈らせてくれないかな? ウールのセーターは暖かいらしいから、ね? 二つ返事でヒツジは快諾してくれて だからお礼にセーターが編みながら 一緒においしいジンギスカンを食べたんだ って言うのは嘘だけれども けど、編み物は初挑戦だったし 結局セーターは編めもしなくて ヒツジはもうご立腹でジンギスカンをやけ食いしてさ というのも嘘だったりして そもそもヒツジの毛刈りをしたことがなかったし

詩「おもしろい人生」

浮かれませぬ このまま眠れというの? 粋な計らい 少しは気を利かせて やっぱりそんなものです 一般人の人生になんて 上がるにしても下るにしても おもしろいこと転がっているわけがない つらすぎるよ 特別つらくもないから 虚しいだけ そこらにありふれている どうしたって何だって 緩やかな変化すらない 変わらないことが良いなんて 変わってみなきゃ分からないのよ 幸せの絶頂喰らい 不幸のどん底飲み干し 普通のど真ん中じゃ 味わえない酸いも甘いも 食べ尽くしたいの 幸福に醒め

詩「正義」

どっかの国は戦争/紛争 どっかの国は独裁政権 どっかの国は貧困/麻薬 どっかの国の差別主義 どっかの国の宗教弾圧 そして わたしは、勉強嫌い 遠くにある良くないこと 助けを乞う声 悲痛な叫び 見えなければ 聞こえないから 楽しいだけで遠慮もない 何が正義か悪か 幼い心に聞く たとえば この手に銃を取ったとして わたしのちっぽけな脳みそは 正しい判断をするのかしら? さっきまで チョコレートパフェを食べていたのに? 埋もれたわたしの指は 何ひとつ解っていない 真実も事実

詩「死にゆく中で生きゆくわたし」

あなたが発する 悲しいを 悔しいを ツライを この心に刻みつけるためにも わたしは生きてゆきたいのです 自身の心臓が止まるときまで あらゆるひとの苦しみを刻んでいたいのです 生きることに意味は必要でしょうか? 有意義なことだと 誰に判断してもらえば そこに意義があると証明できますか? 誰の何の役にも立たないわたしは そんなことをしたって 役に立ちもしないことを 理解しているつもりです こんなにもちっぽけな存在に届いたとて あなたの苦しみに何の変化もないだろうこと 理解しな