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詩「9YEARS」

楽しみにしているよ。
そう言った やさしい瞳
幼いわたしの かわいい夢

移ろいゆく時間の中でも
ずっと変わらないもの
大切なこの気持ち

幸福はすぐそばにある
当たり前だと思っていたの

震える手で鋏を手に取った
もうわからないよ
浮かんだ ママの涙

子供のくせに。と嘲笑って
子供だからと甘えるな。と怒鳴りつけた
あの大人は今も知らない
わたしが泣きながら切り落としたのは
髪なんかじゃないの
毎朝ママが結わってくれていた
あたたかい思い出とその手首

九つのわたしの心
繋ぎ止めてくれていたのは
たまたま出会ったその手のひら

怖い人だと思っていた
あの人を見上げたら
微笑んでくれた

失ってしまったものは帰らない
そう諦めていたのにね

おはよう。おやすみ。
おかえり。ただいま。
ねえ、パパ わたし生きてるよ

新緑が芽吹いた朝
崩れそうな心を守るため
自分の腕を切りつけては
その傷口を不思議に思った

雪が降りしきる夜
裸足で震えた幼心は
理不尽な痛みにも
理由を必要としなくなった

いつしか
悲しみの意味も忘れてしまったけれど
わたしたちに
狂わされた時間は返してはもらえないこと

存在を否定されても
いのちに値段をつけられても
過去に蓋をして忘れたからって
生きている事実を使いこなせなかった

いのちを懸けて守ってくれる人たちが
確かにいたら 確かにいれば
何かが変わったかもしれなくて

そんな彼女が口ずさむメロディは
親友が教えてくれた名もない歌で

あれから九年のときが過ぎて
笑顔の奥に隠された
過去の涙に思いを馳せる

今のわたしは 怖い人だと誤解していた
彼の隣で笑っているの
九年前のわたしに教えてあげたい

闇に溺れたわたしを
包んでくれたあたたかさ
もう会うことすら叶わない
決して忘れない
祈り続けるの

世界はとても残酷で
果てしなくて あまりにきれいなの

わたしの知らない暗闇で蹲る人たちに
ねえ いつかわたしも
安らぎのひかりを灯して見せたいの

贖罪かもしれない
復讐かもしれない
私怨かもしれない
そして
幸福かもしれない

ほら、生きているよ
ねえ、生きているの
ありがとう 大好きよ
ありがとう 大好きなの


遠い昔に書いていた、
ラノベ的なものだったストーリー。
ものすごく長いものになって、
自己満足のために、
苦しみと悲しみと痛みばかりで、
救いのあるものにしてしまった。
中二設定めじろーし。
でも、書きながら、泣いていた。
救われたいと泣いていた。
誰よりも、誰よりも、
わたしが救われたくて。助かりたくて。
主人公は幸せになった。
痛みを越えて。悲しみを越えて。
ご都合主義の物語。
わたしはいつ救われるだろう。
わたしに救いはあるだろうか。
それとも、このときの描いた物語のように、
自分自身で救い出すしかないのだろうか。
主人公のような特殊能力もないのに、
わたしなんかが、どうやって。

ちなみに、この詩は、
主人公と関係の深い人物が、
18歳の時に歌う設定という、
後日談で作ったもの。
恥ずかしい黒い歴史。
でも、嫌えない。大切な思い出。

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