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SES企業で働くメリット・デメリットと向いている人・向かない人~エンジニアの客先常駐とは~

先日、このような相談をいただきました。

「IT業界未経験から転職活動をして、やっと内定した企業がSESでした」
「SESについてよくわからないまま面接を受けていましたが、内定後に改めてSESについて調べるとネガティブな声が多くて不安になりました」
「内定を辞退した方がいいのでしょうか」

このnoteでは同じような悩みを抱えている方々に対して、SESやSES企業に対する私なりの考えをお伝えします。

SES=System Engineering Serviceの略。詳細は以下の記事参照。
>> SES契約の概要とメリット・デメリット
SES企業=所属エンジニアをSESという契約形態で客先常駐させる企業。

ネット上ではSES契約で客先常駐しながら働くエンジニア側のネガティブな声がたくさん見つかりますし、それに対してSES企業やSES肯定派のエンジニアが反論記事を書いており、どの情報を信じていいのかわかりづらい状況です。

だからこそSESで客先常駐を経験した私が、比較的中立な立場でメリット・デメリット向いている人・向いていない人についてまとめてみました。

SES界隈が語らない不都合な真実

前提としてSES契約で客先常駐という働き方はメリットもデメリットもあります。そのため、それらを考慮した上でエンジニアはSES企業で働くか否かを決断すればよいと私は考えています。

「SES=悪」だと決めつけるつもりはありません。受託開発や自社サービス開発にもメリット・デメリット両方ありますし。

しかし、エンジニアの味方面しつつSESのメリットしか語らないSES企業の経営者がネットや現実世界に数多く存在しますし、そういう人たちほどキラキラしていて声が大きい。私は彼らを情報商材屋並みに胡散臭いし卑怯で不誠実な存在だと感じています。

詳しくは後述しますが、彼らの大多数はSESで働く上で被るデメリットというかIT業界が抱える闇(多重派遣・偽装請負・案件ガチャなど)について全く触れず、是正に向けた努力もせず、いかに集客して手数料(マージン)を稼ぐかしか考えていません。

※まれに「是正に向けた努力をしている」と主張するSES企業の経営者もいますが、その実態は取引先に対する「(指揮命令などの)自粛の要請」なので問題は解決せず実質何もしていないに等しい場合が大半です。

また、私がSESで働くリスクについても発信すると「俺はSESで成長できた」「SESでもホワイトな現場で働ける」といった擁護コメントがSES肯定派エンジニアから飛んでくることがあります。

これは「たばこを吸う人にはがんのリスクがありますよ」と説明する人に対して「俺の90歳の祖父はヘビースモーカーだけど健康体で生きているぞ!」と言い返して論破した気になっているようなもので、自分がいる界隈を擁護するために極一部の都合が良い事例だけを強調しているにすぎません。不都合があるからデメリットには触れないわけですね。

また「SESがブラックだとかいう人も多いけど、そんなことはない。本人(エンジニア)のやる気の問題だ。」とのたまうSES肯定派エンジニアもいます。

私としては「論点をすり替えるな。SESのデメリット(法的にアウトな部分)に触れないどころか、エンジニア側に責任転嫁するとはとんだ性悪だな。どれだけ本人の努力次第とかやる気の問題だとか強弁しようがSESのブラックな部分は否定できていないし擁護になっていないぞ。」と思います。

SESについて正しい知識を持たない情報弱者は、このようなメリットしか語らない発信者たちの言うことを鵜呑みにして食い物にされるということを覚えておきましょう。

SES企業への入社に不安を感じるなら答えてほしい3つの質問

「内定したSES企業にはよくない噂があり不安を感じている」
「SESに対するネガティブな声をネットでたくさん見かけるが、SES企業は転職先候補に入れないほうがいいのか」

このような相談を受けたときに私がしている質問をお伝えしますね。

あなたもSES企業への入社に対して不安を感じたときに自問自答してみることをおすすめします。

1. SES契約について知っているか

SES契約について解説しているサイトは検索するとすぐ見つかります。

そのため、SES契約についての基本的な知識(請負契約や派遣契約との違い、常駐先から直接指揮命令を受けると偽装請負にあたることなど)について知っているかを質問者に確認します。

知っている場合は次の質問に移行します。知らない場合はSES契約について調べるところからはじめてもらいましょう。

2. SES企業に入社する理由が明確に存在するか

「SES企業からしか内定がもらえなかったから」
「SES企業の社長から熱心に口説かれて嬉しかったから」
「今のご時世だと実務未経験からエンジニアになれるのはSES企業くらいだから」

という消極的な理由や他人に流されたという理由ではなく、自分の理想のキャリアを実現するためにあえてSES企業を選んだんだというポジティブな理由が相談者の中に明確に存在するかを確認します。

答えられる場合はメリットもデメリットも知ったうえで「自分の理想のために利用する」つもりで入社する自立型人材と思われるので背中を押しますが、「SES契約で客先常駐という働き方」に不安があるのではなく「内定先がブラック企業の可能性が高い」ことが不安の根源である場合は次の質問に移行します。

答えられない場合、後述の「SES企業のメリット」について説明します。それを聞いても、あえてSES企業に入社する理由が思い浮かばない場合はやめておけとアドバイスします。

ネットで語られているSESのネガティブな声は大体が真実(エンジニアの実体験)なので、消極的な理由や他人に流されてSES企業への入社を決めたなら高確率で心が折れる上にそれを自分以外のせいにしてしまうからです。

3. 内定先や選考中の企業がブラックと感じたのはなぜか

相談者が内定先や選考中の企業に対してブラックだと感じた理由を確認します。

その企業名とブラックな理由を私が知っている場合は相談者に辞退をすすめますが、知らない場合は独自に調査したり横のつながりがあるエンジニアたちにインタビューしてみます。

それでもわからない場合は、私が考案したブラック企業を見分けるための方法を伝授します。

SES企業のメリット

✔様々な現場やプロジェクトで働けて様々な技術に触れられる。
✔IT業界の実務未経験でも入社しやすい
✔入社困難な大企業やメガベンチャーに常駐できる
✔ベテランとセットで現場に送り込まれるので実務経験をつみやすい
✔(ベテランとセットなので)上流工程にも経験が浅いうちから関われる

SES企業のメリットは何といっても「内定のハードルの低さ」と「現場経験のつみやすさ」でしょう。実務未経験の新人でもベテランエンジニアとのバーター(セット売り)で現場に入って経験をつめます。

また、通常の中途採用では書類選考通過すら難しいメガベンチャーでもSES契約での常駐は比較的容易に行えます。都心のオシャレなオフィスで憧れのプロダクトの開発チームの一員となって働くことも夢ではありません。

SES企業のデメリット

✔偽装請負(常駐先社員から直接指揮命令や勤怠管理等される)を黙殺
✔多重下請け構造で元請けとエンジニアの間に存在するSES企業が手数料(マージン)を中抜きするが介在価値は皆無
✔まともなキャリアがつめるか否かは運次第(案件ガチャ)
✔炎上案件に巻き込まれて心身ともに疲弊しやすい
✔年齢が高くなると常駐先が見つからなくなり自主退職を求められる
✔長時間労働になりやすい。SES企業側も売上のためにそれを抑制しようとしない。

これについては株式会社アクシア 米村社長のブログ@ITの記事で詳しく解説されているのでそちらをご覧ください。

多重派遣・偽装請負などの解説

>> エンジニアがSES企業に就職してはいけない5つの理由

>> IT業界の多重下請け構造とは何なのか

>> 人売りIT派遣企業はそろそろ壊滅させてもいいと思う

>> 日本のIT業界のためにSESは消滅するべきだと思う

案件ガチャの解説

>> 「案件ガチャ」はなぜ起きる:スライムしか出ないダンジョンを周回していませんか

>> 案件ガチャとは。意味と対策まで

SESに向いている人

✔ストレス耐性が強い人
✔人に媚びるのが上手い人
✔言われたことに素直に従う奴隷根性のある人
✔長時間労働で充実感を得られる人
✔手っ取り早く実務経験者になって本命の企業へ転職したい人
✔将来フリーランスとして独立したい人

もともとは自分自身がSES契約で客先常駐するエンジニアだったが、フリーランスとして独立したのち常駐先企業とSES契約を結びなおして常駐し続けている人を何人か見てきました。

そういった人たちがやがてSES企業の経営者や役員となり、自分だけではなく所属エンジニアもSES契約で常駐させて稼いでいるので将来フリーランスとして独立したい人や起業したい人にとってはその足掛かりとなるかもしれません。

また、SES契約だとメガベンチャーに常駐することも比較的容易であるメリットを活かして、本命のメガベンチャーにSES契約で常駐したあと現場で成果をあげながら直雇用を目指す道もあるでしょう。

メンタルがタフで人たらしで他人や会社を踏み台にしてのし上がることもいとわない(良い意味で)腹黒はSES企業に向いていると思います。

SESに向いていない人

✔技術力を高めたい人
✔性格がまじめで優しく責任感が強い人(最悪、病院送りになる)
✔体育会系のパワハラ気質な人間関係が苦手な人
✔ライフワークバランスを大切にしたい人

技術力を高めたい人にとってはSESだと案件ガチャのリスクがありますし、様々なプロジェクトを渡り歩いた結果「明確な強みがない器用貧乏」と化してしまうリスクも考えられるのでおすすめしません。

また、SIerのプロジェクトに下請けとして常駐するSES企業ですと令和の時代に中世の奴隷制度が復活したのかと驚くレベルで理不尽な上下関係を強いられますので、比較的フラットな組織で働きたいエンジニアには絶対向きません。

>> 行ってはいけない常駐先とは!?客先常駐は地雷だらけだった件

まとめ

✅SES界隈が語らない不都合な真実
 ・多重派遣
 ・偽装請負
 ・案件ガチャ
✅SES企業への入社に不安を感じるなら答えてほしい3つの質問
 1. SES契約について知っているか
 2. SES企業に入社する理由が明確に存在するか
 3. 内定先や選考中の企業がブラックと感じたのはなぜか
✅SES企業のメリット
 ・様々な現場やプロジェクトで働ける
 ・実務未経験でも入社しやすい
 ・入社困難な大企業やメガベンチャーに常駐できる
 ・ベテランとのセット売りで実務経験をつみやすい
 ・上流工程にも経験が浅いうちから関われる
✅SES企業のデメリット
 ・偽装請負を黙殺
 ・多重下請け構造で手数料を中抜き
 ・案件ガチャ
 ・炎上案件に巻き込まれやすい
 ・年齢が高くなると自主退職を求められる
 ・長時間労働になりやすい
✅SESに向いている人
 ・ストレス耐性が強い人
 ・人に媚びるのが上手い人
 ・奴隷根性のある人
 ・長時間労働で充実感を得られる人
 ・手っ取り早く実務経験者になって転職したい人
 ・将来フリーランスとして独立したい人
✅SESに向いていない人
 ・技術力を高めたい人
 ・性格がまじめで優しく責任感が強い人
 ・体育会系のパワハラ気質な人間関係が苦手な人
 ・ライフワークバランスを大切にしたい人

私はSES契約で客先常駐という働き方についてはメリットもデメリットもあるので各々のエンジニアがそれを踏まえた上で入社すればよいと考えています。

しかし、SES企業の経営者に対しては、不都合な部分に全く触れず良い面ばかりを強調しているので情報商材屋のような不誠実さや胡散臭さを感じています。

不都合な部分も包み隠さずに「こういったリスクもありますが、弊社ではリスクが実際に発生した場合、このように対処しています」といった情報発信を行う経営者こそ誠実で信頼できるし、エンジニアも安心してSESで働けるからいいことづくめなのにと感じるのは私だけでしょうか。

SES契約で客先常駐という働き方をすすめてくる人間と関わる中で少しでも「おかしいな」と感じる瞬間があれば、情報収集を行ってどこまでが真実なのか、何を隠しているのかを確かめましょう。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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