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#散文

【詩】一角獣の婦人

【詩】一角獣の婦人

一角獣の婦人は
宝石で飾られた鏡に向かい
顔の角度を何度も変えながら
微笑みを送り続けている
鏡の中の婦人は真顔のままで
警戒を解こうとしない

婦人が
なだめすかしたり
説得したり
表情を変えたり
語りかけても
鏡の中の婦人はつれない

ついに怒りが湧き上がってくる
お前は私のくせに!
磨き上げられた鋭い角を鏡に向けて突進する
鏡の中の婦人も同じように向かってくる
今まで動きもしなかったのに

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【詩】こうもりの家

【詩】こうもりの家

こうもりはいつのまにか家の中にいた
窓の内側に静かにとまっていた
ここは自分の家だと言わんばかりに
しっくりと落ち着いていた

まるで私の方が他人の家にいるような気分だった
だけどここはまぎれもなく私の家だった
こうもりには申し訳ないけれど
家から出ていってもらうことにした

窓を開けて
出ていってと声をかける
こうもりは気づいているのに
聞こえないふりをしている

仕方がないのでそっと手で押し出

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【詩】肉体を空へ

【詩】肉体を空へ

 思い切って肉体を空へ放り出すんですよ。迷ったり、怖がったりしたらだめなんです。気負ったり、焦りすぎてもだめなんです。何も考えずにただ放り出すんです。そうすれば自然と肉体は浮かび上がっていって、そのまま落ちてきません。気がついたらもう空に浮かんだままでいるんです。
 浮かんだ肉体はどうなるかって?  すぐにばらばらになって、あちらこちらへ飛び散っていきます。頭は頭の行きたい方へ。手は手の行きたい方

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