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クリエイターの4つのテーマ その4

令和初投稿です。それがどうした!という感じですが…。
これまで3回書いてきましたが、神奈川県厚木市を拠点として活動する「クリエイターズ!エンタテインメント」の配信番組「クリエイターズ!エンタテインメントFM」の平成最後のゲストとして、演劇にフォーカスしたクリエイター事情を話してきました。今回が最終回です。

【テーマ4 クリエイター活動をする上での資金の話】
これは前回もしていたのですが、この回ではかなり具体的な数字を挙げて、どんなことにどの位のお金がかかっているのかをお話ししました。詳細は実際の配信をアーカイブでお聞き下さい。これはあくまでも僕がプロデュースする公演の例であって、もっとお金をかけずに面白いもの、素晴らしい作品を作っている人もいらっしゃいますし、逆にもっとお金をかけている団体さんもあるでしょう。番組でも言いましたが、これが劇団やユニットだと、団員やメンバーでいくらかずつでも積み立てていくとか、赤字分の補填のお金を出し合うとかあるのでしょうが、僕は基本的には1人で自腹を切ります。
はっきりいって、辛いです。自分1人ではどうにもならないことも多いです。

そんなわけで、2016年12月から、僕の演劇ユニットFavorite Banana Indians公演は「事業」として行うことになりました。早い話が、金融機関から融資を受けて(借金をして)公演を行うことになったのです。当然借りたものは返さなくてはなりませんし、事業である以上は収益を上げなくてはなりません。
これは想像していた以上に大変なことでした。何しろ、演劇それ自体は何も生み出しません。毎月コンスタントにやれるものでもありません。毎月どころか毎週やっているところもあるにはあります。しかし、番組でも言いましたが、それはビジネスとしては成り立っても、結局は粗製乱造なのです。見る人のことを舐めきったような、まさに「金返せ!」レベルのクオリティの作品を垂れ流しているだけです。そんなところをお手本にはしたくありません。
かといって、無尽蔵にお金をかけるわけにもいきません。クオリティか利益か。永遠の課題といっていいでしょう。

チケットと物販の売上の範囲内で予算を立てるわけですが、公演は水もので、予想通りにお客様が入るとは限りません。昨年9月の公演では、最終日に首都圏を台風が直撃して電車がストップするというアクシデントに見舞われました。当然、収入は見込みを下回る結果になりました。逆に、キャパが小さめな劇場を借りたら、集客ができる人達が多く集まって、結果的に呼べるはずのお客様が呼べなくなってしまったということもありました。
収入を増やすためにはチケット代を上げるのが一番簡単な方法ですが、それにも限界があります。僕がやっている舞台の場合、料金を5,000円以上に設定しないと正直採算を合わせるのは困難です。しかし、世間的に無名の人間が作ったどの位面白いかも分からないものに、人はそんな大金を払うでしょうか。友人・知人であってもなかなかきついと思います。チケット代を値上げしたお陰で動員数が減ってしまっては本末転倒です。

では、チケットや物販の売上以外には資金調達の道はないのか?
以前僕は「クラウドファンディング」で制作費を集めたことがありました。確かにこれは1つのやり方ではあると思います。ただ、問題が2つあります。1つは、僕が使ったReadyforのシステムがそうだったのですが、募集期間中に目標金額に1円でも達しない場合は、こちらは1円も受け取れないということです。僕の場合は超過達成したのでよかったものの、結構リスキーではあります。もう1つの大問題は、たとえ目標金額を達成したとしても、実際に受け取れるのは数ヶ月先だということです。番組中にも話していますが、演劇はチケット等の収入が入ってくる前に出て行くお金(劇場費や稽古場代、小道具代等々)があります。リターン(クラウドファンディングでお金を出して下さった方への「お礼」)にチケットを含めてしまうと、その分のチケット代が入ってくるのが数ヶ月先になってしまうわけですから、直後に手元に入る現金が減り、各方面へのお支払いの際に大変苦労します。勿論、お金に換えられないこともありますので、全否定はしません。ただ、資金調達という面からいえば、いいことばかりではないというわけです。

バブル期には、企業が文化的な活動に対して資金面での支援を行うということがよく行われました。所謂「企業メセナ」というやつです。これは「スポンサー」とはちょっと意味が違います。支援してくれる企業の宣伝をする義務が支援される側にはないのです。あくまでもその企業のイメージ戦略です。「文化に対してお金を出す企業」というイメージができれば、企業価値が高まるということです。しかしバブル崩壊後、企業にはそういう余裕がなくなってしまいました。目に見える利益が出ないものには一切金を出さない。残念ながらそういう考え方になってしまったのです。
多くのクリエイターがやっていることは、すぐには大きなお金に結びつかないことが多く、それなのに制作原価は結構かかるという不条理なものです。企業に支援が望めないとなったら、もうエンジェル投資家にでも期待するしかありません。演劇という活動が如何に人々の心を豊かにし、社会に貢献しているのか。「文化」というものの価値を分かっていて、そこにお金を出して支援することに意義を見出す投資家がもっと増えて欲しいと思ってしまいます。他力本願の考え方ですが、そうでもしないと、小劇場である程度以上のクオリティの芝居は作れません。
勿論、如何にして動員を増やすかに知恵を絞るのが最優先であることは間違いありません。しかし、それにも限界があります。動員目当てで客に媚びるものを作っても、すぐに見抜かれます。「よくてトントン」ではなく、確実に利益が出て、それで生活しつつ、次の活動の資金にもなる。そういう仕組みを作っていかなくてはと思っています。市場原理からすると、そうできないのは需要がない=価値がないことを意味し、市場から退場すべきだことになるのでしょう。しかし、文化は市場の論理だけでは語れないと信じたいです。

とはいえ、市場原理の中で苦しみ、請求書に埋もれてアップアップすることを引き受け、必死にそれを解決する道を探ることこそ、小劇場といえども演劇が趣味や遊びではないことの証明になります。
現在飛ぶ鳥を落とす勢いの劇団☆新感線の制作の細川展裕さんは「出を減らすより入りを増やすことを考える」という方針を貫き、関わった劇団を大きくしてきました。ジリ貧にならないためには正しい発想だと思います。無駄を削るよりも、お金をかけた分入ってくるお金を増やす方に頭を切り替えた方が、長い目で見ればいい結果に繋がるでしょう。その一方で、まずは手元にお金がないと何も作れない。
…結局堂々巡りで答えは出ません。
クリエイターとお金は永遠のテーマです。
でも、お金が理由でリタイアすることだけは避けたい。その一心でこれからももがき苦しんでいきます。

こういうことをクリエイター同士がオープンに語り合って、協力できるところは協力し合えるという場があるといいのですが。なければ作るだけです。そちらにも知恵を絞りたいです。

万国のクリエイター、団結せよ!

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