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定食はあの店でしか食べなくなった

定食を食べる時、「日本に生まれてよかったなあ」としみじみ思います。

大手チェーン店の季節ごとに変わる定食メニューも魅力的ですが、最近の私はもっぱら、あるお店でしか定食を食べません。

「孤独のグルメ」気分で入った食事処

月に一度の病院通いで、いつも迷っていたのがお昼ごはんを食べるお店でした。

病院近くの飲食店で何度か食べたものの、これといって気に入った店はなく、数駅先の駅ビルに入っているカフェなどで済ませることがほとんど。

毎度受診の度に外食をしている訳ではありませんが、何となく味気なさを感じていました。

ですが、現在の病院に通うようになってからしばらくして、周辺に一軒の食事処を発見したのです。

どうやらランチメニューがあるらしく、軒先のホワイトボードにずらりとおかずが書かれていました。

何度かお店の前を通る度にどんどん気になってきて、ある日「ええい、ままよ」と入ってみました。
気分は完全に「孤独のグルメ」の井之頭五郎さんです。

店内はこぢんまりとしていて、カウンター席と小上がりの席がいくつか。お客さんも席の半分ほどで、会計の頭上に設置されたテレビではワイドショーが垂れ流しされていました。

ちゃきちゃきとしたおかみさんに通され、カウンター席の端に着いて店内を見渡します。

食事処といっても、昔ながらの食堂ではなく、モノトーンとグリーンを基調にしたインテリアでカフェに近い印象。おかみさんのセンスなのでしょう。

ランチメニューは主菜が10品以上から選べる上に、サラダ、副菜3品、漬物、みそ汁、ご飯がついて850円。
プラス150円で飲み物を頼んでも税込1000円。値段の割に至れり尽くせりです。

主菜は肉、魚、揚げ物、煮込み、カレーなど、季節ごとに何品か変わります。
まだ10回通ったかな? 程度なので、主菜は制覇できていません。

ここからは今まで食べたランチメニューを3種類紹介します。

とりの唐揚げ なすのねぎソース

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さっくり揚がった唐揚げと、色鮮やかななすの素揚げに甘辛いねぎソースがかかっています。

揚げ物なのに全然脂っこさがなく、小気味よいサクサク感の唐揚げ。
なすは身の食感がしっかり残っていて、野菜本来の味がします。

みそ汁はだしがきいた薄味、ご飯もほかほか。小〜大盛りまで自由に選べます。

副菜3品はその日のお楽しみです。
この日はひじきのおから和え、ゆで卵入りポテトサラダ、ほうれん草のお浸し。
ちまちまとした副菜ひとつとっても、青菜のみずみずしさやおからの素朴な味が胃に優しく、丁寧に作られているんだなとしみじみします。

キャベツに紫たまねぎやにんじんのスライスを合わせたサラダには、必ず2種のドレッシングがついてきます。
しょうゆベースのものもあるのですが、私はもっぱら玉ねぎにんじんドレッシング!
にんじんの自然な甘みがシンプルなサラダと絶妙にマッチして、つい多めにかけてしまいます。家でも作ってみたい。

ほっけの煮つけ

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普段は魚料理を頼まないのですが、執筆していた小説にこちらのお店を出したくて、取材を兼ねて注文した料理でした。

煮魚といえばかれいを思い浮かべますが、こちらはほっけ。
塩焼き以外で食べたことがなかったので、どんな感じかそわそわしながら待っていた記憶があります。

とても肉厚で、煮汁が甘すぎず濃すぎず、ちゃんとほっけのうまみも感じられるおいしさでした。
歳を重ねると魚料理にほっとします。

副菜の糸こんにゃくがまた珍しく、ほっけに合いました。

この日は祝日で、一緒に行った夫も前述の唐揚げを食べて大満足の様子でした。
季節ごとに可愛い箸袋が使われているのも、楽しみのひとつです。

チキン南蛮

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おそらく1番頼んでいるであろう、チキン南蛮!

私はタルタルソースが大好きです。
キューピーのタルタルソースをエビフライにかけて食べるのが子どもの頃から好きで、家でもたまに作ってもりもり食べるのが幸せなひとときです。

他店に比べて、こちらのお店のタルタルソースはマヨネーズのこってり感がほとんどありません。
あくまで主役は卵。さらさらとしたソース、ゆで卵の食感がさりげないのです。

それ故、鶏肉のしっとりした柔らかさが伝わり、ソースにごまかされない肉本来のおいしさが1番に届くのです。

さらに、副菜がサラスパ(サラダスパゲッティ)!
ポテトサラダといい、タルタルソースといい、こちらのお店は通常マヨネーズを使う料理の口当たりが非常にマイルドです。
サラスパも例外でなく、変な酸味が一切ありません。懐かしくもスーパーのお惣菜とは一線を画する味です。

お店のご夫婦の思い

こちらのお店のことは、以前からnote記事として書くつもりでした。
書こうと決めて間もない頃、お会計の際おかみさんに聞いてみました。

「品数がいっぱいあって、作るの大変じゃないですか?」

おかみさんは「そりゃ大変だけどね〜」と苦笑して、「かといって出来合いのものを出したくないからね」と仰っていました。

客席からはあまり見えませんが、奥の厨房で調理をするご主人もおかみさんも、食べる人のことを思って工夫されているのだろうと思います。

よそのお宅で出てきたごはんのような安心感は、お店を経営されているご夫婦の細やかな気配りと思いやりを感じます。

純粋に「食べること」と向き合えるお店

最寄駅からすこし離れた立地にあるこちらのお店は、いつも穏やかな空気が流れています。
がやがやした場所が苦手な私にとって、とても落ち着けるお店です。

何より料理がおいしいので、黙々と、純粋に食べることと向き合えるのです。

じっくり定食を味わってから、食後にコーヒーを飲むのがお決まりの過ごし方です。

カウンター席の端はちょうど陽当たりがよく、空いていると必ず座ります。
背中に温かな光を感じながら、のんびりコーヒーをすするひとときが食後の満足感を高めてくれるのです。

次に訪れた時は何を食べようか。
今度こそあれを食べようと行った時に限って、魅惑的な新メニューが登場している、何ともニクいお店です。

※表紙画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございます。

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