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私が教師をやめるまで#19~#20

【第21話】問題は生徒のみではない:モンスターペアレンツの私 前編


生徒たちとも仲が良く、授業も楽しくやっているつもりだった。
しかし、ある日、一人の保護者から電話がかかってきたことで、私の平穏な日常は一変した。

「先生、娘が勉強が苦手だと言っています。どうしてですか?」

電話の主はA子さんという生徒の母親だった。A子さんは成績は平均的だが、授業態度は良くて積極的に参加している生徒だった。

「A子さんは勉強が苦手だとおっしゃいますか。でも、授業ではよく頑張っていますよ」

私はそう答えたが、母親は納得しなかった。


「それじゃあダメですよ!娘は大学受験を控えているんですから!先生のせいで学力が低下しているんじゃないですか?」


「そんなことはありませんよ。A子さんはよく勉強していますし、十分に伸びています」



私は冷静に説明したが、母親はますます怒り出した。


「冷静に何を言ってるんですか!先生は娘の将来を軽視しているんですね!こんな教師が担任だと娘の人生が台無しになります!今すぐ辞めてください!」


「辞める?何をおっしゃいますか?私はA子さんを含めて全ての生徒に責任を持って教えていますよ」


私は驚きと憤りで声が震えた。こんな理不尽な要求をされたことがなかったからだ。


「責任も何もありませんよ!先生みたいな無能な教師に責任なんて持てません!学校にクレームを入れますからね!」


母親はそう言って電話を切った。私は呆然と受話器を見つめた。




【第22話】問題は生徒のみではない:モンスターペアレンツと私 後編



その後、母親は本当に学校にクレームを入れた。
校長や教頭にも電話をかけて、私の解雇を要求した。


私は呼び出されて事情を説明したが、学校側も母親の言い分は理解できなかった。

「先生は何も悪くありません。A子さんの成績や態度も問題ありません。母親の方が過剰に反応しているだけです」

校長はそう言って私を慰めたが、母親は納得せずに、さらにエスカレートしていった。

「学校が先生を守るなんて信じられません!これは教育委員会に訴えます!メディアにも暴露します!」

母親はそう言って、教育委員会にも連絡を取り始めた。
母親からのバッシングや誹謗中傷が始まった。

毎日学校に電話
保護者面談の拒否

私は苛立ちを隠さずにはいられなかったし、こんな理不尽な状況は今すぐにでも抜け出したと思った。

しかし他のクラスを見ても、同じような状況だった。

「娘がけがをしたので、学校に手すりをつけてください」
「息子に連絡がつかないので学校側で探してください」
「骨折してしばらく車イスです。毎朝校門で補助してもらえませんか」

等々…、どのクラスも大変そうであった。


教員・学校の仕事・責務はどこまであるのだろうか。
そう考えずにはいられなかった。

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