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閉店後の見えないお客様

美大生時代、短大と家の中間にある飲食店でアルバイトしていました。

17〜22時まで。
お店の閉店が21時の為、最後の1時間は閉店作業です。

大概、閉店は10〜15分ほど毎回遅れますがかなりゆっくり閉店作業をしても時間があまり打刻の15分前には帰れるような状態でした。

閉店業務はアルバイト4人の学生のみで行うので、それなりに片付けた後は残った食べ物をアレンジし退勤時間まではダラダラ過ごすのがお決まりです。


とある日。

いつも通り閉店作業を終え、残りの時間をスタッフルームでダラダラモグモグ過ごしていると、厨房のタイルをヒールで歩く音が聞こえてきました。

先輩スタッフが「またか…」と呟きながら、残りの食材で作ったハイカロリーのスイーツを頬張ります。

直線の厨房内をヒールで早歩きしたような音がカツカツカツ…と響きます。

もちろんお客様も残っておらず、
スタッフは全てスタッフルームにいます。

いま、厨房に行かない方がいいのだろうと言うことは誰も言わずとも理解し
ヒールで歩く音が厨房をひたすら往復する状況が終わるのを皆無言で咀嚼しながら待ちました。

しばらくすると、ヒールの音は聞こえなくなりました。


先輩曰く、時折あれは「来る」そうです。


なぜか厨房だけを歩くようで、足音が響いてる最中は厨房は見ないようにしているという事でした。


このアルバイト先に入った時に、閉店業務にこんな人数いるかな?

と学生ながら不思議に思っていたのですが、もしかしたらこの為なのかもしれない。

と頭を過りました。


現在、そのお店は無く
足音の主についてのその後の情報は不明です。

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