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千夜千句

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4年前にカードゲーム『俳聖』出版記念としておっ始めた「千夜千句」。 3年9ヶ月のブランクを経て、復刊!
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2022年5月の記事一覧

千夜千句(211〜220)

千夜千句(211〜220)

瓦斯燈を模す街灯に雪刺さる

冬晴れのスマホに映る指紋かな

冬天の聳ゆるものはみな寂し

我捨てし母いじめては三日咳

春浅し祖母妖けて出てまだ叱る

ぽかぽかや口ほどに凧上がらない

栗の樹の冬盆栽の如く斬る

恋猫の強情っ張りや本閉じる

新酒古酒まっすぐ帰れるわけがない

立春や道まっすぐにまっすぐに

千夜千句(201〜210)

千夜千句(201〜210)

煮大根ひとは顎から年を食ふ

鳥渡るだれ悲しまぬ恋もあり

 ※羅(うすもの)や人悲します恋をして(鈴木真砂女)の本句取り。

県境尾根に木立のまばらなる

温泉(ゆ)の猿のどこがおかしや雪信濃

初氷雪一片をのせて割れ

ケータイを咥へる鰓の夜寒かな

節分や平和は願うものですが

節分や非戦はそうと決めるもの

眼鏡宝石時計鉄砲店に雪

豪雪の町は原野となるごとし

千夜千句(196〜200)

千夜千句(196〜200)

月夜みち薄荷の如き冷気かな

榾の火や背を辿りつつ夢枕

氷り滝動く輩はわれのみぞ

冬山のこだま順々に子となりぬ

水温む昔のひとはやたら死ぬ

千夜千句(192〜195)

千夜千句(192〜195)

望楼や地より降りくる細雪

涸滝の落ちるものなしひとの声

いきものとみて突き返す海鼠かな

振り向かずゆけ立春のふくらはぎ

千夜千句(191)

千夜千句(191)

癩人と言ひ争へば陽が溜まる

ハンセンの俳人村越化石へのオマージュ。元の句は、

癩人の相争へり枯木に日 

20年以上前、目も鼻も耳もないハンセン病の詩人桜井哲夫をドキュメンタリーに残そうと、草津温泉の療養所に通い詰めたことがあります。結局、自治会の反対にあい、写し取ることはできなかった(その企画者兼監督は、ゴールデン街の最古参「わらじ」の主人。もう亡くなって、お店も閉じましたが、私の師のひとり

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千夜千句(181〜190)

千夜千句(181〜190)

カードゲーム『俳聖』出版記念

2018年2月1〜2日

寒月蝕終えて朧の地に生きて

冬日向きものの中にきみを容れ

太き薪の火を頬張りて世を問ひつ

虎落笛どこからどこに線引くや

疎まれてやっと一息節替わり

氷柱下腿たたまれしカマドウマ

逆さまに曲がる膝あり冬の虫

冬ごもり海星のごとき手の人と

薪くべて世情を問はぬ爪の先

凍てるみち芭蕉憎みし烏が歩く