今までクソお世話になりました!

この記事を8月3日に書くのは少し遅いんですけど、ちょっと話させてくださいな。今回は本の話じゃなくて、本屋さんにフォーカスした話をしようと思います。

7月31日、名古屋で一番有名と言っていい『ちくさ正文館書店』さんが閉店しました。
閉店の理由は学習参考書の売上の減少、コロナ禍で客足が遠のいたことが原因だそうです。一応ネットニュースの記事のURLを記載しておきましょうか。

[Yahoo!ニュース]
「ちくさ正文館書店」が60余年の歴史に幕。どうなる?名古屋の本屋カルチャー(大竹敏之) - エキスパート - Yahoo!ニュース

僕としてはものすごくショックでしたし、悲しかったですね。

一応知らない方のために説明しておくと、ちくさ正文館書店さんは人文学・芸術・歴史書などに精通した書店で、「通えば頭の良くなる本屋」とまで言われていました。

僕が初めてちくさ正文館書店さんに行ったのは大学3年の頃ですね。
たまたま、大学に行く地下鉄と乗り換えの駅がちくさ正文館書店が一番近い千種駅だったんです。

で、当時の僕はなんていうか……すげえ嫌なヤツでしたね。
その人に嫌がらせをするとか、イジメるとか、そういう系統の嫌なヤツじゃないんですけど……一言で当時の僕を言い表すなら『論破ヤロウ』でしたね。
ビジネス書とか学術書、学術論文を読み漁っていて、自分と意見の異なる相手を論破してねじ伏せるっていう、理論武装をしためんどくせえ読書オタクだったんです。笑
でもそれを崩したのが当時の僕のゼミの担当教員だったんです。
ゼミ生は大したことなかったです。全然読書しない連中で、「コイツらの研究なんざ無価値だ」くらいに思ってましたね。
ね? 最悪な野郎でしょ????笑

で、自分の研究や課題発表をして、学生には理論武装してねじ伏せることが出来たんですけど、担当教員はまあダメでしたね。やはり教授の名前を持つ人は違いますね。先行研究だけでなく、細かな学術本も読んでらっしゃる。どれだけ理論武装してても足りなかったですね。

それである日、たまたまゼミ開始前に僕が教室に1番乗りして、次が先生だったことがあって、少し雑談したんです。そこで「キミはちくさ正文館書店に行きなさい。そこで古田店長と話して足りない部分を補ってこい」と言われました。
当時は尖ってたので「そんな個人経営の本屋がなんぼのモンじゃい」っていう気持ちで行くわけですよ。今考えたら超失礼ですよね。

で、行って古田店長さんに「◯◯先生に言われて来ました。僕は普段こういう本を読むんですけど……」って言ったら吉田さんは「おーなら◯◯の原典は読んだことある?」とか「△△は? 精神分析学なら□□は?」とかものすごいマニアックな本とか勧められたり、逆に知見を広めるなら「音楽史とかどう?」とか「これ麻薬に関するノンフィクションで法との戦いがすごいよ」とか、ものすごい色々勧めてくれたんです。

それで調べてみたら店長の古田さんが作る棚は古田棚って言われてて、その店に並ぶ本にハズレなし、くらいのことがあったらしいです。

今思えばそこかもしれないですね、僕が書店員を目指そうって思ったの。
本の魅力を届けたい、もっと色んな人に読書を身近にしたいって気持ちと、俺みたいに性根が腐ってひん曲がったヤツに「この古典は読んだのか!?」とか突きつけてやりたいと思うようになりましたね。

それで本当は当時ちくさ正文館書店はアルバイトを募集していたんですけど、僕の大学のスケジュールとあわず、結局今、自分が働いてる店でアルバイトを始めましたね。

でもやってみると難しいですね。羽喰棚、僕も作りたいですね。笑
いや作りたいと言うか、作りつつあるというか。
子どもでも分かる論語の本を置いたり、仏教を子どもでも分かるように解説された本をおいたり、結構ムチャクチャな棚作りしてますね。笑

そのちくさ正文館書店さんの閉店は本当に悲しかったですね。
自分の原点になる本屋さんでしたからね。当時は一日500円の昼食代を親からもらって、5日間昼飯を食べずに過ごして、2500円持ってちくさ正文館書店で本を買う、なんてこともしていました。

就職してからも通っていたので、棚の変化や変遷から、客足が遠のいているのはなんとなく感じていました。凝りに凝った古田棚より、安牌といいますか本屋大賞とかの売れ筋の本を並べたり、児童書コーナーを広げたり、様々なコーナーを削って別コーナーにしてお客さんを増やそうという工夫が見れましたね。
でもあのお店は最後まで歴史書・人文学・芸術のコーナーだけは一貫して素晴らしい選書のままでした。
だからこそ僕はあのお店に行くのが楽しかったです。

これからの本屋業界、どうなるんでしょうね?
電子書籍が台頭してきたと言っても、紙の本がいいというお声もたくさんいただきますし、ウチの店は結構繁盛している方なんじゃないでしょうか?
ローカライズ? と言っていいのか分かんないですけど、時流には乗るようにしてベストセラーを置いたりしてますし。

ただ、ちくさ正文館書店さんみたいにフロイトの精神分析学を深めるような本屋さんではないのでそこは残念ですね……。いつか、ちくさ正文館書店さんみたいに超超マニアックな本を置けるようになりたいですね。

まあそれをするには僕が死ぬほど嫌いな出世をする必要があるんですけどね。

では最後に
自分の読書の可能性を広げ、新たな見地や知識を広げてくださった吉田店長さんと、ちくさ正文館書店さんに敬意を評させていただきます。
本当に、お世話になりました。

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