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本の備忘録

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16年前くらいから、読んだ本の備忘録として、それから未読の積読本も相当溜まっていたので重複して購入しないようにと、書評というには拙い内容をとつとつとブログで綴っていました。 6…
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2021年4月の記事一覧

タイガーマスク小説

2007年4月10日に投稿したブログより。 ビバ、メヒコ。 ルチャ・リブレをご存知でしょうか。メキシコでいうところのプロレスのことです。下級層に熱狂的に支持をされる、征服者と被征服者の戦いを具現化したようなショー。 この物語は、そんな世界に身を置いた日本人と、それを辿る息子との無言の交流の話。 ベタな設定なのはよく分かりますし、結構乱暴な展開の部分もなくはないですが、とにかくこういったスポーツ小説というのは読んでいて熱くなれるところがいい。 プロレス好きも、興味のな

大人の想いを砕く文才

2007年4月13日に投稿したブログより。 本好きが高じて、ということもあり、たまに「将来は何か本でも書いてみるか」なんて夢想することがあります。 でも、こういうのを読んじゃうと、正直自分のふわっとした夢想なんてパッと散らされちゃいますね。 タイトルどおり小学生高学年の時から中学生低学年の時期に著者が書いた日記というか私小説。 めちゃめちゃ上手いです。小5とか、小6ですよ。「作文?めんどくせー!」とか大半の小学生は思ってる時期ですよ。 もともとモデルということもあっ

和製スパイ小説の決定版

2007年4月21日に投稿したブログより。 主人公は和製ではなく日系人。しかも正確にはスパイではなく殺し屋です。 そう、日本人の顔をした主人公ジョン・レインを配した珍しい洋物シリーズ・第三弾。 日本びいきの元CIA出身の作家が描く殺し屋のディテールは、回を追うごとに、よりリアルになっていき、外人が書いたとは思えないほど、日本に関する描写には、何の違和感もありません。 これからも是非とも読み続けて行きたいシリーズです。

これがホントのあぶない刑事

2007年4月25日に投稿したブログより。 極悪な刑事のお話の第二弾です。 何だか好きなシリーズ物なのですが、とにかく主人公の徹底ぶりが凄いです。全ての基準は自分にとって利益になるかどうか。そのためには警察の権力は最大限に利用しますし、警察内部の上長だろうとなんだろうと、弱みを見つけては骨の髄までしゃぶりつくしていきます。 ヤクザ顔負けというか、じっさいにヤクザもひいこらしてしまう悪徳振りですし、かといって弱者に優しいかというと、弱きもくじくこの根性、凄すぎます。 で

骨太恋愛小説

2007年4月28日に投稿したブログより。 ゴリゴリのエンタメ小説。 アクションあり、設定としてはSFっぽくもあり、警察小説でもある。でも、何といっても真っ当な恋愛小説でもあります。 上下段で、しかも全900ページ近くのぶっとい小説ですが、読み応えたっぷり、あっという間に読破しました。 本の厚さと読み応え感はあっても、ストーリーはいたって簡単。 諸事情により世界初の脳移植手術を受けた女性捜査官と、そのパートナーであった男性が、その技術を軍事的に利用されたロシアの殺し

男汁満載サラリーマン小説

2007年5月2日に投稿したブログより。 いやー、男の世界を描かせたらやはり上手いですね、この人。 実際にあった航空史上最大級の事故をベースに、飛行機の落ちた御巣鷹山のある群馬県の新聞記者を主人公にしたお話。 社内の人間関係や派閥による軋轢・摩擦、過労死した友人の謎の行動、そして彼との約束、意思疎通の上手く出来ていない息子との距離感を緊張感溢れるタッチで描き切っています。 しかし、アレですね。自分の所属する組織が、女性中心なためか、もしくは結構柔らかいというか闘争心の

映画のような巻き込まれ型小説

2007年5月7日に投稿したブログより。 間の悪い時に、間の悪い場所にいるフリーライターを主人公にしたシリーズ第4弾。 こういうシリーズものは途中から読み始めた人には、主人公とその周辺のメインキャラクターとの背景が説明されず、会話ひとつとってもピンとくるものが少ないかもしれませんが、物語が発しているメッセージは強烈なものがあります。 「世界中の人間がアメリカを憎んでいる」、というのが一貫したメッセージになっています。そしてその裏にある、今までアメリカの傲慢さが行ってきた

変わらない良さ

2007年5月7日に投稿したブログより。 即買い、即読み。 この人の格闘系の話ほど、ホイホイと簡単に読めてしまう本はありません。上下段270ページだって、1時間もあれば充分です。 この巻から「新」のタイトルが付きましたが、何にも変わっていません。前巻からのまんま続き。 どの巻をとっても、どのページを開いても、結局は男と男が汗を流して骨をギチギチと軋ませて、肉をガシガシと打ち合って闘っているだけの話なんですが、とにかく読むのです。読みたくなっちゃうのです。 ずっと読み

スポーツ、恋愛、家族の全要素あり!!

2007年5月8日に投稿したブログより。 青春小説の佳作です。 恋愛から家族まで、主人公たちの成長に合わせて、自転車を主軸にして追っていきます。 ここ最近で読んだ青春モノの中ではピカイチです。 カレーライフといい、この話といい、断言しますけども、この作家もうしばらくしたらバーンと大化けするというか、名前が売れるはず。というか売れて欲しいです。 単行本でも同名の小説が出ているのですが、文庫化したものとはまた別物らしいです。何でも文庫版の主人公たちのもっともっと若かりし

久々の衝撃恋愛本

2007年5月10日に投稿したブログより。 結構衝撃的でしたし、いろんな意味で面白い小説でした。 以前に初めて読んだこの作家の本、蕎麦屋の恋は結構あっさりめのオーソドックスな恋愛モノっていうイメージだったので、その同じ人が描いた長編という捉え方で入ったら、いやビックリ。 衝撃の度合いからしたら、を読んだ時みたいな感じ、って言ったら分かる人には分かるのでしょうか。あくまでも感じですけどね、感じ。 恋愛モノとはいえ、小学生の生活から大人になるまでが描かれます。主人公と呼ん

フンワリ温かく、そして切ない恋物語

2007年5月17日に投稿したブログより。 この作家、好きなのです。 もうしばらくでブレークすると思いきや、未だその寸前といったところでしょうか。 この人の描く登場人物たちの会話や主人公ののんびりそして淡々としたたたずまいが好きです。 他愛のない会話の積み重ねなんですが、その他愛のなさ気な話題の選び方や展開の仕方が絶妙な感じ。おそらく、この辺が好みの分かれる部分になるのかもしれません。 こんなフワフワした会話を自然のままに、ずーっと好きな人とし続けることが出来るので

久々のワクワク

2007年5月22日に投稿したブログより。 この人の話は、展開の分からなさと、会話の妙が大好きです。 安く手に入ったので珍しく単行本で読みました。 というのも、この作家や竹内真は場合によっては、文庫化に際して手直しを若干するから。 先ずはオリジナルで読んでおいて、もし文庫化で改訂されれば、そちらも読みたいし。 今回は関連する中短編の2本立て。政治絡みで、全体に何やら不穏な空気が漂っているのも、今までにない感じ。 それでもいつもの如くの不思議と心地よい会話のキャッチ

「察してくれ」は求めない

Netflixの企業文化について書かれた本については、既に何度か紹介をさせていただきました。 その中でも何度も繰り返し述べられていたのが「コンテキスト」の重要性について。 日本の文化というのは単一民族から成り立ってきたこともあり、「言わなくても分かるでしょう」ということが社会の中でも会社の中でもまかり通ってしまうことがままあります。 この、「言わなくても分かるでしょう」という思い込みは、言い換えると「察してくれないあなたが悪い」という相手を責める姿勢にもなり得ます。

和製X-MEN

2007年6月2日に投稿したブログより。 久しぶりのSFです。 いい年したオッサンの割には感性が若い方と思われるのは、イメージを喚起しながら読まないとよく分からないこういったSF小説とかを、いまだに読み続けられる多少は柔軟な頭があるからなのかもしれません。  本作は前作マルドゥック・スクランブル三部作の前夜を描いた物語。 前作の主人公バロットの宿敵であったボイルドが本作の主人公。 前作ではバロットとペアを組んでいた万能ネズミのウフコックとの因縁に触れていましたが、本