あさりの味噌汁で彼の心を
なんか、なまぐさい。
私は血の気がひいて、変わりに背中から脂汗がどっと出た。
たたたたっと台所に駆け寄り、がばっと開けたシンク下の戸棚には、昨夜仕込んだ鍋から異臭が漂っている。
いや、漂うなんてぬるいものではない。この鍋が明らかに臭いの震源であり、私の皮膚や鼻が、これは緊急事態です、と本能レベルで危機を察知した。この鍋の蓋をとったら、どんなお腐れ神がいるのだろうと想像し、つばを飲む。
おそるおそるパンドラの箱を開け、思わず彼と二人で鼻をつまんだ。そこにあったのは黒々とし