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デザイン心理学で解き明かす「インスタ映え」。1秒で「いいね」を判断する「流暢性」とは?

本当に「良い」写真って、どんな写真なんでしょう。
解釈は見る人の自由です。しかしその真意は、その写真の撮影者にしか分からないものだと思います。
ではなぜ、インスタグラムでは「いいね」がたくさんつく投稿と、つかない投稿があるんでしょうか。
それは、「処理流暢性」の差。
つまり「理解しやすいものに好感を持つ」という人間の心理(というか脳)によるものなんじゃないでしょうか。

気になっちゃう「いいね」の数

私はカメラオタクなんです。
日々、街中で持ち歩いていると二度見されるレベルのごつい一眼レフカメラで写真を撮っては、せっせとインスタグラムに載せています。ちなみに、日常のカフェとか食べ物系じゃなく、花や風景を意味ある形で写した「良い写真」を載せようとがんばっているアカウントです。でも私にとっては完全に趣味、自分だけの世界なので、他人からの評価なんて気にしません。
とか言いつつ、どうしても気になるのが「いいね」の数
評価が数値化されてるようなもんですから、どうしてもね…。

インスタ映えって、人間の心理をすごく反映しているんだな、と思ったきっかけがありました。
もう3か月近く前ですが、大学時代にお世話になった心理学の先生のデザインセミナーに参加したんです。講師の荷方(にかた)先生は、私の出身校である美大の、教育や心理学が専門の先生。ちょっと、いやだいぶ変わった人です。久しぶりにじっくり講義を聴いて、「ああ、こんな感じだったな…変わってないな…」としみじみ思いました。にこやかでキレのある講義です。在学当時から、私は結構好きでした。
無料のセミナーだったので、以下のページで講義の全編を動画で見れます。
興味のある方はぜひ。

インスタグラムで写真を見るときの流暢性とは?

このセミナーの中で、「美的好感情の流暢性」という話がでてきました。
それは、なにかの物事を判断するとき、
「自動的処理」をすると「流暢的好感情」が生まれ、
「認知的処理」をすると「刺激的好感情」が生まれる
というものでした。
認知的処理をするためには、自己の接触経験の量が必要になります。

(「『クリエイターのためのデザイン心理学Up to Date』第8回FIXプロモ研究会セミナーレポート」より画像引用)

この理論をふむふむと聞きながら、これってまさにSNSやインスタグラムの反応そのものだな、と感じました。
インスタグラムの1投稿を見るのにかける時間は、約1秒。フィードに流れる投稿を、秒速スクロールで判断するんですから。
置き換えると、次のようになります。

自動的処理をされるものの特徴は、典型性があり、単純であり、対称であり、コントラストが高いもの。
つまり「短時間で理解しやすいもの」です。
インスタグラムの画面をスクロールしながら、とくに深く考えず、自動的に「いいね!」を押す。これが「流暢的好感情」です。

いっぽう、認知的処理をされるものは、新奇性に富み、複雑性があり、非対称であり、コントラストの低いもの。
つまり「じっくり考えないと理解できないもの」です。
自分の経験や知識を照らし合わせ、思考し理解することによって「うーん、良い…!」と判断する。
これが「刺激的好感情」です。

見てください、この写真。

具体例を見てください。
たとえば、私が投稿した、この写真。
今週火曜日(4月9日)の夜に撮ってきた、金沢城の写真です。

この投稿には、200以上の「いいね」が押されました。
数字で見るとたいした数ではありませんが、フォロワー数470人ほどの私の投稿では、200超えるとかなり多いほうです。
でも正直、私にとってはたいして面白みのない、記念写真に近い感覚のものです。だって、この時期にこの場所に行き、ここでシャッターを押せば誰でも撮れる写真だから。つまり定番、お決まりの写真です。

でも、だからこそ分かりやすいんですよね。
金沢であること、であること、であること。
スマホの画面でこれらを判断するのに、1秒もかかりません。
金沢の春の夜なんて、もう言葉だけでもなんだかすてきな雰囲気です。
分かりやすい=すばらしい、つまり多くの人に流暢的好感情がはたらいている典型例だな、と思ったのでした。

いっぽう、次の写真は、去年の冬に撮ったものです。

この投稿には、90件ほどの「いいね」しかつきませんでした。
アベレージから見ると、90という数は最低レベルです。
しかし、私としては思い入れのあるお気に入りの写真です。
こんなにいい写真なのに、なんでみんな分かってくれないんだ
それはずばり「映えない」から。

この写真を1秒見て、判断できることはなんでしょうか?
・21世紀美術館らしい(位置情報に書いてあるから)
・3人座って喋ってる
・曇りの日っぽい
ぐらいではないでしょうか。

でも、10秒じっくり見ると、気づくことがたくさんあるはずです。
・外の木には雪吊りがしてある
・ということは季節は冬だ
・金沢の冬は天気悪い日が多いんだっけ
・でも雪はない。そっか暖冬だよね~
・座っている3人は外国人っぽい
・右の人はグレーヘアで左の2人は若そうだ
・ということは親子かな
・家族旅行で金沢に来たのかな
・どこの国から来たのかな
・外国の人はこの金沢の冬景色を見て何を思うんだろうか
・美術館を回ってきてひと休みしてるのかな
・お母さんはどこ?もしかしてお土産のショッピング待ちかも
・椅子の手前に何か置いてある
・よく見るとカメラだ
・なぜここにカメラが…

などなど。
見れば見るほど疑問に満ち、あれこれと思考を巡らせることができるのです。最終的にどう感じるかは見た人次第ですが、撮影者である私の思いとしては「うす曇りの冬の金沢で外国人観光客が見た景色は、美術館の展示とはまた違うしっとりとした美しさがあり、その感覚は日本ならではの風情である」みたいな感じのことを伝えたい写真なのでした。

(本当は、もっと少ない情報量でも深く思考を巡らせることのできる良い写真を撮りたいんですけどね。目指す目標はそこです)

結局、「いいね」の数じゃないんだよ!

と言いたいけれど、でも実際、秒速でスクロールしているときに目に留まらないと、そもそもじっくり見ようとも思わないわけで…
分かりやすい、かつ、深く思考できて意味のある写真。
自動的かつ認知的にも好感情を持ってもらえる写真。
込めた思いが伝わる、感情豊かな写真が撮りたいなーと考える今日この頃です。
私の住んでいる地域では、今日やっと桜が満開になりました。
桜の写真で、何を伝えようかな。
まずはそこから考えてみたいと思います。

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娘たちと飲みながら語れる日がくるのを夢見ています。
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兼業ライター@能登半島の生え際。写真と音楽が好き。本業はデザイナー。
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