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本が好き、猫が好き…  人生を折り返してしまったけれど、気持ちも暮らしもまだまだ整わず…

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本が好き、猫が好き…  人生を折り返してしまったけれど、気持ちも暮らしもまだまだ整わず。 この生きづらい感じはいつまで続くのか。 日々のできごと、思ったこと、読んだ本について書いてみます。

最近の記事

「自分から捨ててもいい」と言った人

2か月ほど前、知人が亡くなった。30年近く前に一緒に働いていた先輩で、訃報は当時の同僚からもたらされた。まだ62歳だった。 そのうち会えるだろうと思っているうちに、20年以上経ってしまった。どうして、当然のように「そのうち会うだろう」と思っていたのか。しばらくは心にぽっかり穴があいたようだった。20年以上も会っていないのに。 連絡をくれた同僚と何度もLINEを送り合った。最近の彼の様子を聞いたり、あの頃のことをなつかしんだり。 彼を「冷たい」「厳しい」と評価する人もいる。それ

    • 親の望むことって…

      両親は「なぜこの人たちが?」と今でも思うくらい、考え方も性質も異なる二人だった。父は幼くして親を亡くしてさびしくしていたようだし、母にしても、昔のことだから、ある程度の年齢で結婚しなければ…という風潮だったんだろう。 私には兄がいて、母は兄にすべての愛情を注いでいた。母親からの愛情に飢えていた父は、息子にそそぐ愛情が過剰すぎることに苛立ち、母に暴言を吐いたり、手をあげたりしていた。そして、母のうっぷんは私に向くようになった。早く大人になりたい。この人たちから離れたいと思ってい

      • 子どもに自立してほしくない親って。『傲慢と善良』辻村深月

        辻村深月さんの『傲慢と善良』。 西澤架の婚約者、坂庭真実がなにもいわず、姿を消した。その数か月前、真実は「誰かに見られている気がする」と言い、2か月前から二人は架の部屋で暮らしはじめたのだった。ストーカーに連れ去られたのではないかと考え警察に足を運ぶが、ストーカーが誰なのかがわからなければ何もできないと言われてしまう。真実のストーカーは誰なのか。まずは、真実が上京する前に結婚相手を紹介してもらった人を訪ねる。 その女性は、一般的な話として「皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一

        • 全力で応援する潔さ(『空をゆく巨人』)

          川内有緒さんの『空をゆく巨人』。 川内さんのお名前は『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』で知っていたけれど、著書を読むのははじめて。そして、蔡國強というアーティストについては、この本を読むまでまったく知らなかった。 1957年、中国福建省に生まれた蔡國強は、27歳のときに学生ビザを取得して日本にやってきた。銀座の画廊に通い作品を売り込むが、まったく相手にされず、そんなときに蔡の才能を見出したのが鷹見明彦という美術評論家だった。この鷹見さんという人が蔡と福島県いわきのパ

        「自分から捨ててもいい」と言った人

          「世間とは…」(『さびしさについて』)

          『さびしさについて』は小説家の滝口悠生さんと写真家の植本一子さんの往復書簡をまとめたもの。心の底にずっとかかえているさびしさや悲しみ、ままならない思いについて綴っている。 滝口さんから一子さんへ「生活」 ふたりの往復書簡は2022年4月でいったん終了しているが、本書には2023年にやりとりした手紙の内容も収録されている。 「生活」は滝口さんから一子さんに送られた最後の手紙。歩くこともおぼつかなかった滝口さんの娘は2歳9か月になり、おともだちとのコミュニケーションの有様も複雑

          「世間とは…」(『さびしさについて』)

          人から見た自分と、自分のありたい自分(『さびしさについて』)

           『さびしさについて』は小説家の滝口悠生さんと写真家の植本一子さんの往復書簡をまとめたもの。心の底にずっとかかえているさびしさや悲しみ、ままならない思いについて綴っている。 一子さんから滝口さんへ「離ればなれになる道」 一子さんについて書いてみたという連絡が友人からあり、確認してほしいというメールがきた。その人にとっての一子さんに対する所感を読んだとき、「こんな風に書いてほしくないな」と思ったけれど、そのまま通したのだった。書かれるってこういうことなのかと身をもって感じたと

          人から見た自分と、自分のありたい自分(『さびしさについて』)

          自分のあたりまえはほかの人にもあたりまえ?(「作りたい女と食べたい女」)

          NHKドラマ「作りたい女と食べたい女」が最終回をむかえた。 いっしょに暮らすことを決め、部屋探しをはじめたけれど、「二人入居可」という条件が、家族や結婚を前提としたカップルに限定されていることが多いと知り、考え込んでしまう野本さんと春日さん。そんな矢先、SNSを介して友だちになった矢子さんにLGBTQ+にフレンドリーな不動産会社を紹介され、これからの暮らしがイメージできる部屋への引っ越しが決まり幸せをかみしめる二人。 春日さんの仕事先の女性と南雲さんは就職活動をはじめ、矢子さ

          自分のあたりまえはほかの人にもあたりまえ?(「作りたい女と食べたい女」)

          「食べなさい」という圧(「作りたい女と食べたい女」)

          NHKドラマ「作りたい女と食べたい女」。 野本さんと春日さんのマンションに引っ越してきた南雲さん。野本さんは「今度、食事でも」と誘ってみるが、すげなく断られてしまう。あとから事情を聞いてみると、小学生のときのつらい経験で会食恐怖症になってしまったという。それが原因で人間関係がうまくいかなくなって会社を辞めたといこともあり、沈んだ様子。「飲み物だけでもいいんだよ」と野本さんたちに誘われたことで、食べなければいけない圧を感じることのない関係性もあると気づき、少しずつ二人に心を開き

          「食べなさい」という圧(「作りたい女と食べたい女」)

          家族って…(「作りたい女と食べたい女」)

          NHKのドラマ「作りたい女と食べたい女」。現在、Season2が放映されている。 主人公は、料理が趣味だけど小食なため大盛り料理に挑戦できないというジレンマをかかえる野本ユキと、食べることが大好きな春日十々子。二人は同じマンションに住んでいて、一緒に料理を作って食べることで関係を深めていくといったドラマ。 春日さんは封建的な実家や高圧的な父親をきらっている。先日の第17回では、春日さんは父親から電話で、実家に戻り祖母の介護を手伝うよう強く言われている。そして、それを断った春

          家族って…(「作りたい女と食べたい女」)