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子どもに自立してほしくない親って。『傲慢と善良』辻村深月

辻村深月さんの『傲慢と善良』。
西澤架の婚約者、坂庭真実がなにもいわず、姿を消した。その数か月前、真実は「誰かに見られている気がする」と言い、2か月前から二人は架の部屋で暮らしはじめたのだった。ストーカーに連れ去られたのではないかと考え警察に足を運ぶが、ストーカーが誰なのかがわからなければ何もできないと言われてしまう。真実のストーカーは誰なのか。まずは、真実が上京する前に結婚相手を紹介してもらった人を訪ねる。

その女性は、一般的な話として「皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で自己愛はとても強い」という。そして、親に関しても、結婚に関して介入するのはめずらしいことではなく、それにゆだねることに慣れてしまっている子どもは多いという。

本人の自信のなさやプライドの高さ、傷つくことになれていない繊細さと、親が子どもに対していだいている「自分がいなくなったらどうなるのか」という心配、自分の体面、子どもに対する依存がうまく作用しているような…

子どもを自分の思うようにコントロールしたがる親はいる。
子どものことについて、自分の感情をコントロールできない親。
私の母がそうだ。
私には兄がいる。母にとって兄がすべて。
ずっと兄の世話に明け暮れていたが、兄が結婚してそれがかなわなくなった。
私はすでに実家を出て、ほとんど連絡をとっていなかったのに、突然、毎日のように電話がかかってくるようになった。
「今日はごはんをちゃんとつくったのか」「いま、なにをしているのか」
兄が手元を離れてさびしくなったのだろう。
数日はつきあったけれど、つきあいきれず電話線を抜いた。

その後、兄は離婚した。
兄は一人暮らしをしたがったけれど、母が「家のことなんてできないでしょ?」と猛反対し、実家に戻った。今は二人は実家で一緒に暮らしている。母は兄の自立を阻んだのだ。とても平和に暮らしている。

でも、結婚前後は母に面倒をみてもらい、結婚している間は妻にすべての家事を任せっきりしていて、兄は料理も洗濯もできない。
それでいいのかなと思うけれど、それも自分が選んだこと。
それはそれで幸せに見える。

この小説にもあったけれど、人にしたがうほうがラクという人はいるんだ。
そして、子どもに自立してほしくない親も。

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