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インドが僕に教えてくれたこと。

うるさい。危ない。人が多い。計算が速い。頭がいい。タージマハル。カレー。

この記事を読んでいる人は「インド」という国についてどんな印象を持つだろう。混沌の国。しばしばそんな風に称される場所に僕は大学四年間で二回も訪れた。


遡ると、あれは高校三年生の頃だった。父親の本棚から引っ張り出してきた一冊の本が、”バックパッカーのバイブル”として、日本を飛び出した往年の旅人たちに崇められていたとはその時はまだ知らなかった。

そう、言わずと知れた沢木耕太郎の「深夜特急」。

インド編から始まり単行本で約400ページの3部作に及ぶ長編を2週間夢中になって読みふけった。18年間同じ町で生まれ育ち、学校と家を往復し、ある程度学力も感性も近い友人たちと青春を過ごしてきた僕にとって、あまりにも衝撃的な旅の風景がそこにはあった。

10歳にも満たない女の子が身体を売る国。路上に並んだベッドを宿として寝泊まりする旅人たち。ハシシを吸うフランス人。牛と広場で寝る人々。

聞いたことない言葉で想像もつかない世界が綴られている。だけどまるで自分の眼前にその光景が存在しているかのように感じる。

後から考えると人生のターニングポイントだった瞬間は誰しもあると思うが、まさに僕の人生が変わった瞬間だった。

「こんな世界本当にあるのか。見に行って確かめたい。」

そう思い続けること一年。


19歳の僕はまさしく真夜中のニューデリーの空港に降り立っていた。

ツンと鼻を突く酸っぱいような匂い。鳴りやまないクラクション。目が霞んでいるように感じる埃っぽい空気。

そのすべてが新鮮で、いまだに脳裏に焼き付いている。

初めての一人旅でインドに行くといったときは親にも友達にも心配されたけれど、

「日本酒持っていきます!」(インドにはほとんど売っていない)の一言で向こうで色々と助けてくれた方には本当に感謝しているし、ツテをたどりにたどってでも行ったその時の自分を褒めてあげたい。

(結果的に、旅に取り憑かれ、大学4年間は長期休みの度に旅に出かけないと落ち着かない身体になってしまったんだけれど。)

世界には人の数ほど価値観や考え方がある。世界は広い。

だけれど遥か遠くに思っていた国も案外近い。世界は案外狭いかもしれない。

何言ってるんだこいつ……と思われるかもしれないけれど、そういう事なんだ。旅を通してそんな事を知ることが出来た。


本で読んだインドとどう違ったのか?

それも一概には言えない。同じと感じる部分もあったし、違う部分もあった。時代背景も違うし、行った場所も、会った人も違う。

でも旅ってそれが面白いんだと思う。旅人の数だけ旅の種類がある。

前に友人とこんな事を話した。

「旅って人との出会いが面白いよね。会った人の印象でその国のイメージが一変する。」

と僕が言うと友人は、

「俺はその国の建造物に惹かれるなあ。文化が表れている気がするし、大昔の人が何もなかった土地に建物を建てて、こんな精巧な模様を彫ったと思うとロマン感じるよ。」

と言った。その時に、旅とか旅行ってその人によって感じることが違うんだなと強く実感したのを覚えている。


話が少し逸れてしまったが、そんなインドには大学4年の卒業旅行でもう一度訪れた。

なんだか社会に出る前、もう一度訪れたくなって。

いや潜在的に、社会のシステムに組み込まれる前にあの国に戻るべきだ。という意識が働いたのかもしれない。

ゼミ仲間との卒業旅行を終えた後、その足で向かったのはネパールはカトマンズ。ネパールに入るのは初めてだったけれど、町の雰囲気や人柄はインドに比べて優しく穏やかな印象を受けた。

ネパールでヒマラヤ山脈を一望できるトレッキングをしてから、インドに入国し、バラナシ(ヒンドゥー教徒にとっては聖地の1つ)という街のガンジス川のほとりで酒を飲んだ。

ヒマラヤ山脈アンナプルナ連峰 8000m級の山々を望む

ガンジス川ほとりで夕日を望みながら宿で出会った人達の演奏を聴く


何に惹かれて最初にインドにきて、また今ここにいるのだろう。


インド名産のキングフィッシャービールを煽りながら、そんなことをふと考える。

ぼったくられたし、危険な目にもあったし、ここには書けないような風景もみた。料理だってほとんどカレーとラッシーしか食べていない。
一見嫌なことしかなったように見える。

だけど気づいた。

多分、人と人との距離が近いんだろう。人口が多いから物理的に...それもあるけどそうじゃない。

”人間味”が溢れている。

旅行客をだまそうとする輩もいるが、道を尋ねれば正直に教えてくれるし、超満員の電車やバスで老人に席を譲ったり、旅行者に譲ってくれることもある。リキシャ―の料金交渉だってイラっとする事はあるけれど、終われば知らないおじさんと一気に打ち解けられたような気がする。

日本、とりわけ東京にいると感じてしまう他人の壁のようなものがない。

あるインド人に聞いたことだが、インドでは

「人間は生きるうえで他人に迷惑をかけるのは当たり前だから、他人の迷惑を許容しなさい」

って考え方、文化らしい。

「他人様に迷惑をかけるな!」と教えられる日本とはだいぶ違う。

何が言いたいのかというと、インドが教えてくれたことは

相手の文化を知らずに、自分が生きてきた狭い価値観の中で相手の言動を判断するのはどうなんだろう

ということ。相手の文化を知れば、相手の行動への見方も変わるんじゃないか。と思う。


どうだろう。ここまで読んできてくれた人の3割ぐらいはインドに行ってみたいと思ってるんじゃないだろうか?

そんな人たちにもう少しだけインドの楽しみ方を知ってもらいたい。

それはオープンマインドでいるということ。怖い話だけを事前に取り込んで、ある側面だけを見るのではなく、楽しもう!という気持ちで人と出会い、場所に赴く事。

もちろんすべてを信じろというわけではないけれど、

何もかも疑ってかかるとそれで旅は面白くなくなってしまうし、その感情は相手にも伝わってしまうと思う。

もう一つは、自分の中の価値基準を決める事。

これはインドに限った話ではないのだが、現地での比較的安価な物価に慣れてしまうと、ちょっと高い値段がモノやサービスの対価として提示されたときに「ふっかけられた!」と感じてしまう。だけど、実際は根本的に明確な値段が決まっていないことがあったりする。

自分の中の基準で、そのモノやサービスは提示された値段として見合っているかどうか。を判断する事で、支払う対価に自分自身納得感を持つことが出来る。

時には、安全・安心・快適な対価として多少の金額を上乗せして払う必要が出てくるかもしれないし、払ったことで一生モノの経験を得られるかもしれない。

ぜひ自分自身の価値基準も見つめながら、楽しい旅にしてみてほしい。


さーてコロナが落ち着いたらどこへ行こう。今から浮足立ってしまう。




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