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虐待の後遺症としての「多動」の要因

拙著「わたし、虐待サバイバー(ブックマン社 2019)」の第6章でも書きましたが、「虐待の後遺症」の1つに「多動」があります。今回は、この「多動」が起きる要因について、もう少し詳しく述べたいと思います。

児童期に受けた虐待は、長期にわたるトラウマとして「複雑性PTSD」という病名で2018年6月に厚生労働省が認定しています。レイプ被害や震災トラウマなど1度だけの被害から生じる単回性のトラウマと、虐待の後遺症のように長期にわたり反復的な被害から生じるトラウマ(複雑性PTSD)は、区別されました。この長期にわたるトラウマが引き起こす「虐待の後遺症」の1つに「多動」という症状が虐待サバイバーには目立ちます。しかし、「多動」といってもそれが起きる原因は、以下のように複数、考えられるのです。

①ADHD(注意欠陥・多動性障害)

②愛着障害による衝動性の制御の困難さ

③解離性障害による多動人格の存在

④双極性障害(躁鬱病)の躁状態による多動

⑤薬物依存や買い物依存症などアディクションによる衝動性の制御困難

⑥自己肯定感の極端な低さによる承認欲求の異常な強さから何事においても「待てない」という多動が生じる

主に上記6つの要因が考えられます。このため、「多動」という症状の要因が何かについては、精神科医でも見分けが難しく、精神科で誤診が起きていることが多いように感じています。また、誤診というわけではなく、上記6つを重複で併発している虐待サバイバーも多く、私自身も、上記の6つは、ほぼすべて過去に併発していました。

このように多岐にわたる原因からの多動が考えられますが、虐待の後遺症(複雑性PTSD、愛着障害、解離性障害など)は、要するに〈多様な調整障害〉と呼べるべきものです。人間は、赤ちゃんから大人になるまでに、いろいろな感情の調整を学んでいきます。しかし、親からの虐待によって怒るときに怒れなかったり、甘えたいときに甘えられなかったりする子ども時代を過ごすと、感情のコントロールができないまま大人になり、〈多様な調整障害〉が起きてしまいます(羽馬, 2019)。

虐待の後遺症は、特徴的であるにも拘らず、従来の病気(発達障害や双極性障害、うつ病など)と症状が酷似していることから、未だに精神科でも誤診が生じており、その方の成育歴と関連した病状を呈している理解がなされないケースがまだまだ多い実態があります。まずは、精神科医の方に、虐待サバイバーには「多動」が起きる要因が複数あるという実態を知ってほしいと思います。

【引用文献】羽馬千恵(2019)「わたし、虐待サバイバー(ブックマン社)」。

※虐待の後遺症については、以下の書籍に詳しく書いています。精神科医の和田秀樹先生の監修・対談付きです。


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