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人間の「ネガティブ思考」は進化の過程で必要だった?

今日、精神科病院で公認心理師のカウンセリングを受けました。その中で、人間の「認知」の話題になったのです。私自身、「認知の歪み」や「メタ認知(客観的に自分を見れる力)」には関心が高く、虐待の後遺症(複雑性PTSD)の人は、認知の歪みが激しかったり、メタ認知が低いために病気がいつまでも治らない傾向があるなと感じていたため、心理師さんに「認知」についての質問をしたわけです。

心理師さんは、「認知行動療法」の話をされました。「認知行動療法」は有名なので名前くらいは私も知ってはいたのですが、具体的にどういうものなのかは詳しくは知らなかったので、どういう手法か?を質問したところ、「認知行動療法」を非常に簡単に言えば、例えば、コップに半分の水が入っている状態を見たとき、ある人は、「半分しか入っていない」と認知するけど、別の人は「まだ半分も入っている」と認知するように人が同じ物事を見ても、人によって認知が大きく変わるというもので、悩み苦しんでいる人がより楽になるような「認知」に変えるという説明を受けました。

別の言い方をすれば、「ポジティブ思考」か「ネガティブ思考」かの違いが人によってあるということです。
基本的には、「ポジティブ思考」の人間の方が、チャンスをつかめたり、人生が上手くいくということは、これまで数多くの啓発本で書かれてあることですが、常に「ポジティブ思考」が良いかといえば、コップの水の話の場合、砂漠だったら、「半分しか入っていない」と認知する方が正しい認知で、「まだ半分も入っている」と認知する人は砂漠で死ぬ確率が上がるでしょう。
つまり、「ポジティブ思考」か「ネガティブ思考」は、状況によって、どちらが良い認知かが変わってくるという話をされました。

そこで、私は病院からの帰宅途中に、こういうことを考えました。もし、人間が、縄文人くらいの原始的な生活をしていた時代であったら、「ネガティブ思考」の人間の方が、生存に有利に働いたのでは?ということです。ものすごく「ポジティブ思考」の縄文人は、おそらく、死亡率が高かったでしょう。

周りの人に森に入る時は、ヒグマに気を付けて!と注意されても、「ポジティブ思考」の縄文人は、大丈夫!と楽観的に森に入り、注意も怠り、ヒグマに喰われて死亡した可能性が高い。
食べ物も貯蓄もせず、楽観的に大丈夫!と思っていれば、食糧が得られない時期に餓死したでしょう。

つまり、縄文人くらいの原始的な生活をしていた頃の人類は、「ネガティブ思考」が生存に有利に働いていたのでは?という仮説です。「ポジティブ思考」が有利とされている現代でも、進化の過程で、人類には「ネガティブ思考」が淘汰されずに残っているのは、「ネガティブ思考」が人類の生存に有利に働いた時代があり(縄文時代は1万年も続きました)、かつ、今でも「ネガティブ思考」が人類の生存に有利に働く場合があるからだろうと。
そう考えると、現在、社会問題になっている「ひきこもり」の問題や、うつ病などの精神疾患者が増えていることも、社会的な要因も大きいですが、「ネガティブ思考」が生存に有利に働いているという見方をすれば、「社会問題」ではないという見方もできます。うつ病などで長期、「ひきこもり」の方が今の日本では生存に有利に働いている可能性がある。「ポジティブ思考」と「ネガティブ思考」は、どちらの性格が生存に有利に働くかは、その時代の環境次第であり、どちらが良いというものでもないのだなと思うのです。

野生動物を観ていても、近縁種であっても臆病さには、大きな違いがあることが多々あります。例えば、ゼニガタアザラシは非常に憶病な性格です。岩礁に上陸している多くのゼニガタアザラシを人間が観察しているときに、少しの物音を人間が立てれば一気に何十頭と海へ降海してしまうのですが、その中で同じ岩礁に上陸していた近縁種のゴマフアザラシは、キョロキョロと辺りを見渡すだけで、またすぐに寝るという場面は何度か目撃したことがあります。多くのゼニガタアザラシが危険と察知し海へ逃げたのに、近縁種であるゴマフアザラシは緊急性を感じていないわけです。アザラシの天敵のシャチが近くに来ていたとしたら、このゴマフアザラシはシャチに喰われて死亡していたでしょう。

また、マガンという野鳥も非常に憶病で、少しの物音を観察している人間が立てただけで、一斉に群れで飛び立って逃げてしまいますが、その中、近縁種のハクチョウは、1羽も飛び立たないという場面も多く観察してきました。そして、ハクチョウは人間に簡単に餌付けされてしまいます。マガンは臆病なので、人間に餌付けされることはありません。

これはどっちもどっちで、餌不足の冬であれば、ハクチョウの方が人間から餌をもらえて生き残れる可能性が高いけど、おそらくハクチョウの方がキツネなどに捕食される確率がマガンより高いでしょう。一方でマガンはキツネなどの天敵に捕食される確率が低いけど、餌がない冬は、人間から餌をもらえなくて餓死に至るなど、どちらの性格が生存に有利に働くかは、環境次第でどっちもどっちということなのだと思います。

人間も動物と考えると、非常に面白いです。社会問題をテーマに活動している人も、進化論とか、生物学を学ぶと意外と別の視点がでてきそうだなといつも思うことがあります。

※虐待の後遺症(複雑性PTSDなど)については、以下の書籍に詳しく描いています。精神科医の和田秀樹先生の監修・対談付き。


虐待の被害当事者として、社会に虐待問題がなぜ起きるのか?また、大人になって虐待の後遺症(複雑性PTSD、解離性同一性障害、愛着障害など多数の精神障害)に苦しむ当事者が多い実態を世の中に啓発していきます!活動資金として、サポートして頂ければありがたいです!!