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「平成」をいつまでたっても手放せずにいる。



春だ。断捨離をしようと思っている。過去にも何度かしたことがある。けれど何度試みても、かつて使っていたガラケーを捨てることができない。充電器がないので、電源もつかないのに。手に持ったときの重みや開く感触が、なんだか思い出したいことも思い出したくないこともよみがえらせてくる。

電源を入れればおそらく、元彼とのメールとか、切ない着うたとか、夫と友達だったころのメールとか、無駄にポエミーな日記とか、今よりアーチ型の眉毛でキラキラ笑うわたしのプリクラとか、その程度のものが出てくると思う。その程度のものをずっと捨てられずにいる。


令和も気づけばもう5年か。そのほとんどがコロナだった気もするけれど、テレワークをはじめ働き方の多様化が進んだり、いろんなものをサブスクでたのしめるようになったり、どんどん進化していく世の中はきらいじゃない。大学時代に「将来フリーライターになりたい」と言ったら周りの人たちに変わったものを見る目で見られたけど、今じゃちっともめずらしくなくなった。これから世界がどんな風に変わっていくんだろうと、狭いリビングのはしっこでひとり、今日もいろんな想像をしている。



だけどわたしは、やっぱり平成を手放せない。ときどき思い出しては浸りたい。平成。


集めまくったプロフィール帳に、すき間なく貼ったプリ帳。ドキドキしながら押したセンター問合せ。他社のケータイに送れない絵文字〓〓〓〓。「Re:Re:Re:Re:Re:Re……」消す派だったなあ。上海ハニー、以心電信。自分のホームページに書きつづった十代のもどかしさ。キリ番。待ち受けにしたら幸せになれるらしい画像。エイトフォーとシーブリーズが入り乱れる部室。ストローをさして飲んだ紙パックのリプトン。フードコートのポテト大盛り。友達がカラオケで気持ちよさそうに歌っていた「GLAMOROUS SKY」。セシルマクビーのショップバック。蛍光ペンだらけの参考書、マドンナ古文、シス単。メアドに付き合いだした記念日を入れてしまい、別れて速攻変えた日。人によって変えていた着メロ・着うた。好きな人の元カノのミクシィをのぞきに行っては足跡を即削除。好きな人からの足跡がついているかは細かくチェック。失恋して眠れない日は、HYの「NAO」と「366日」に一晩中つきあってもらったっけ。いけない。平成の思い出を書き連ねるつもりが、徐々に粘着質な女になってきたのでこのあたりにしておこうと思う。

ここまで書いて思う。もしかしたらわたしは、平成を手放せないんじゃなくて、青春の思い出を手放せないだけかもしれない。わるくない気がする。



ああ、ひさびさに「桜色舞うころ」でも聴くか。春だ。


おわり

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