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NO.2の育て方 vol.51 ナンバー2の役割の変化ー創業と守成

創業間もないベンチャー企業の黎明期というのは社長一人のリーダーシップや優れた能力で著しい成長を遂げる場合がありますが、会社が規模拡大し、守りを固める安定期に差し掛かると頭打ちになってしまうことがあります。

理由は事業の規模や範囲が社長の能力を超えてしまい、会社の成長が止まってしまうからです。ワンマン経営の限界と言われるものです。

創業と守成というと貞観政要のエピソードが浮かびます。「創業は易く守成は難し」という故事成語を聞いたことがある方も多いかもしれません。

七世紀、唐王朝が創建されて間もない頃、第二代皇帝太宗が、家臣たちを集めて、「創業と守成はどちらが難しいか)」と尋ねました。

古くから太宗に付き従い、唐王朝の創業に携わった者たちは「創業です」と答え、最近になって家臣に加わった者は、「守成です」と答えます。

すると、太宗は、「創業の困難はもう終わったから、これからはみんなで守成の困難に当たっていこう」と述べた、ということです。

※皇帝である太宗の意図としては、創業と守成の難しさは、比べようがないと述べているに過ぎないと解釈されていますが、故事成語としては、守成の難しさを戒める場合に用いられる言葉になっています。

「貞観政要」

創業と守成の課題というのは昔から論じられている組織課題のひとつだとよくわかりますね。

■創業から守成への転換期に考えること
創業から右肩上がりの成長を遂げている時はひたすら売上作りとそれに伴う規模拡大をしているので、ある種の高揚感があり、多少のことは目をつむってイケイケの状態を過ごしているものではないでしょうか。

ナンバー2としても、社長が決めたことをひたすら実行し、成果を上げてきたことは立派な貢献だと思います。

ただ、守成の時期に差し掛かると、それまでの組織運営が通じなくなり、対応次第で事業がシュリンクするか、さらに発展するかという岐路に立たされます。

理想としては創業から守成の転換に際し、社長もナンバー2自身も求められる役割の変化に気づき、打ち手も変えていく必要があることを認識できていればよいのですが、危機感を頂くのは社長だけで、ナンバー2は相変わらず従来通りの働きぶりというのが多いです。

それまでは社長が優秀であればあるほど、ナンバー2はじめそれ以外の役員や社員はそんな社長に盲目的に従ってさえいればよかったかもしれません。

ただ、そう過ごしているうちに、ナンバー2が自ら考えることをやめてしまっているのであれば、厳しい言い方をすればこの守成のステージにおいては物足りない人材となっていると思います。

■ナンバー2に求められる守成での役割
では、守成の時期にナンバー2にどんな役割が求められるのでしょうか。
社長の指示を待ち、従うばかりだけでなく、自主的に組織の維持・発展に神経を注ぐという行動が必要となります。

具体的にはつぎのようなことが求められます。

・成長戦略の策定
・運営課題の解決
・人材の採用、育成
・経営資源の最適化

■成長戦略の策定
自分たちが成長してきた市場には多くの競合がいますから、これまでの自分たちの強みも陳腐化してしまっているかもしれません。

会社にとって今後どのような成長戦略を取るべきかを社長とじっくり議論し、競合分析や市場調査などを行い、新しいビジネスモデルや事業領域の開拓などを考えていく必要があります。

とはいえども、仮にそれまで社長が取ってきた仕事をただこなす役割だったとしたら、マーケティングの重要性やビジネスモデル作りの難しさをはじめて感じ、仕事を創っていくという未知の領域に尻込みしてしまうかもしれません。

■組織運営課題の解決
事業規模の拡大に伴って、社員が増えただけ課題も増えたに違いありません。ただただ売上を作って、案件をこなす仕事とは質と量が異なり、いわゆる本格的な組織作りに着手しなければなりません。

命令指示ひとつとっても少人数の時はすぐに行動に移せたことも社員が増えれば思うように社員を動かすことができない、管理もできない、そんな焦りを感じるでしょう。

業務の設計や人事労務の制度も抜本的に見直さないといけないでしょうし、増えた部門間の調整を図る機会も増えるでしょう。

課題を発見する力、仮説を立てる力、計画し実行する力、リーダーシップやマネジメントと課題解決全般における総合力が問われますので、学びと実践が大量に求められる時です。

■人材の採用、育成
業績の好不調に関わらず、採用活動も活発になるでしょう。離職が続くこともあるでしょうし、増員が追い付かない場合もあります。

それまではなんとなくハローワークなどに漠然と求人を出せばよかったかもしれませんが、できれば自社に合う優れた人材を採用したいと本気で思い始めれば検討することももちろん増えます。

ただ単に業務をこなすための採用であればその道の経験者を採用していけばこと足りたかもしれませんが、社風に合わない人材を安易に採用してしまうと組織のそこかしこで歪みを生んでしまうことに気づいているでしょうから、採用も慎重にならざるを得ない一方で現場からは一日でも早く人の補充を求める声が日増しに強まる葛藤の中で採用活動をしないといけないので大変です。

未経験者を採用することになっていけばそれまでのOJTだけでは足りず教育やトレーニングという研修制度などもあらためて作り上げていく必要があります。

そして中小企業でも従業員数50人を超えていれば労務周りの法律の適用が増え、教育に加え、本格的な人事労務制度を構築していかないといけなくなります。

■経営資源の最適化
そしてこれらの課題に対して経営資源をいかに最適化するかを検討する必要があります。

特に中小企業だと限られた予算と人材の中で、新たな市場開拓や事業の立案、人材の戦力化、業務の効率化、リスクマネジメントと考えるべきことはかなり増えます。

経営課題は多岐に渡りますから、頭を悩ませる課題に溢れています。

日本企業の経営課題2020 一般社団法人日本能率協会より引用

■ナンバー2が守成に対応できないとどうなるか
経営戦略全般を考えながら、実行レベルまで社長一人が担っていると、どう頑張ってもなかなか成果は出しづらいでしょう。

ですから社長もナンバー2に期待を寄せたいところですが、ナンバー2が守成の時期に機能していないとどうなってしまうかというと、こんな状態になってしまいます。

・組織運営の失敗
・組織風土の低下
・組織内の摩擦
・業績低下

仕事は属人化が進み、誰が何をやっているかも把握できず、部下である社員も自分の役割や責任も理解できず、組織力のない会社になります。

社内には不平や不満が蔓延し、部下が指示を理解できず、業務の進行が滞ることで社長とナンバー2との間にも不協和音が生じるかもしれません。

社長の指示をナンバー2自身も正確に理解できずに、業務の効率化が低下することで利益や生産性が低下し、業績が低下するかもしれません。

外部からはあの会社は勢いが止まらずすごいと思われていても、蓋を開けてみると実は内部崩壊している会社は本当に多いと感じます。

離職と採用を繰り返し、トラブルやクレームが多発し、目標は未達、士気は下がりっぱなし。

こういう状態の時に働く場の環境を改善することや課題解決をすることなく、声高に経営理念を説いたところで右から左に聞き流されるだけで何も良くなることはありません。

創業時と守成ではナンバー2の役割は全く異なります。

ナンバー2に自主的に変わることを期待するだけでなく、ナンバー2にはどんな役割があり、具体的にどう成長させるかを真剣に考えてみることが守成を乗り越えるために必要なことです。

参考になりましたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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