処世術の書、「菜根譚」からぶれないマインドを学ぶ
たまには菜根譚の話でもしようかと思い、投稿してみました。菜根譚は今から400年前くらい、日本で言えば江戸幕府が成立した頃の書籍です。中国は明の時代に洪自誠という学者によって書かれた前集、後集から成る処世術、人生訓です。
日本人にも人気があり、有名な方だと元首相の田中角栄、元巨人軍監督の川上哲治などが愛読していたと知られています。
菜根譚は、儒教、道教、仏教のハイブリッド思想と言われています。読んでみるとここは儒教的な観点だな、仏教的な考察だなとよくわかります。
儒教/自らを厳しく律して学ぶことを説く教え
道教/自由にのんびりと生きることを勧める教え
仏教/宇宙の真理を語り、悟りの境地を説く教え
ひとつの教えにも弱点や矛盾、非現実的という側面がありますから、それぞれの思想のいいとこどりをし、現実生活との折り合いを上手につける処世術として人気がある書籍です。
さて、菜根譚の伝えたいことは何かということなのですが、私の感じ方で大きく分けるとつぎのような構成になっていると言えます。
・不動心(レジリエンス)
・仁と義の心(コミュニケーション)
・穏やかな心(セルフマネジメント)
逆境と順境における心構えを説いたものなのですが、逆境にある時は自分と向き合うことができ、むしろ成長の機会となるとし、順境にある時は慢心し、足元をすくわれることも少なくないという話です。
菜根譚には逆境の時をいかに乗り越えるかといった心構えの話が他にも多く出てくるのですが、これは昨今一般的になったレジリエンスの考え方です。
一方で、順境の時にこそ好事魔多しと気を引き締めないといけないというのも多くの方々が言う話です。
逆境にめげず、順境でも慢心しない。人間の行うことは昔から同じことの繰り返しでしかないとつくづく感じます。
菜根譚では「人に譲る」という話が数多く説かれています。自分だけが利益を得たり、他人と争うことばかりしていると恨みを買いやすく、心が休まることがなくなり、ふとした時に足元をすくわれることになりやすいものです。
狭い道でも自分が引けば、道は広くなる。含蓄のある言葉ですね。
どんな場面でもいいのですが、利己的な振る舞いは敵を作ります。それよりも利益を分配し、恩には報いるという気持ちでいれば、自分だけではなく他人も幸せにすることもできるということです。
会社経営なら社員を不当に搾取しない、事業であれば関係当事者の利益を考える、個人なら機会や情報を出し惜しみしない、お互いさまの精神、そんなところでしょうか。
お互いさまと思える人の元には人やチャンスも集まってきます。気持ちが通じ合う仲間がいると自分の可能性すら広がります。他人を思いやり、正しいと思うことを自然体で行うことが他人との信頼関係を築くうえで欠かせないと思います。
心の持ち方ひとつで景色も違って見えるという話なのですが、そう感じることはありませんか?
いつも心穏やかに過ごしていれば、物事が客観的に見えて、不必要な心の乱れがなくなりますし、次に何をしたら良いのかを冷静に考えることができます。
また、いま自分がいる環境が恵まれていることにも気がつくことにもなり、不遇を嘆くよりも感謝の気持ちが芽生えると思います。まあこんなところだなと満足している方が、際限のない自分の欲望に悩むこともなくなります。
菜根譚の教えは、決して競争社会からドロップアウトしてのんびり過ごしましょうということではありません。
時として理不尽な目に遭っても腐らずにいるためにはどうしたらよいのか、自分の欲とどう付き合っていくか、自分らしい豊かな人生を過ごすためにはどうしたらよいのかの問いに対する現実的なアドバイスです。
一言で言うと、どんな状況でも自分の心の在り方次第ということです。駆け足でしたが、菜根譚の概要をお伝えしました。言葉にし難いモヤモヤする気持ちを日々抱えている方に菜根譚をお勧めします。
最後までお読みいただきありがとうございます。