短編小説:広島の朝 1945年8月6日 午前7時
誠一はその朝、普段より早めに家を出た。朝一番にどうしても済ませなければならない書類仕事がある。自宅近くの停留所に着くと、はやる気持ちで七時のトラムを待った。到着したトラムはすでに少し込み合い始めていた。誠一はトラムに飛び乗り、職場の近くの停留所へ着くのを待った。道は行きかう人々で込み合っており、雑踏には朝の忙しさが感じられた。
トラムが停留所へ着くと、誠一は急ぎ足で職場の産業奨励館へ向かった。産業奨励館ではその日も当直が早くから玄関を開けてくれていた。正面玄関を入ってイオニ