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インサイド・アウト(長編小説)

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2020年3月の記事一覧

インサイド・アウト 第20話 夢と現実の狭間で(4)

 車は国道を進んでいき、田園風景の中に突如現れた巨大な建物の駐車場に入っていった。そこは…

インサイド・アウト 第20話 夢と現実の狭間で(5)

 ベッドの横には床頭台があり、その上には木製の小箱が置かれていた。小箱の蓋には大きさの異…

インサイド・アウト 第20話 夢と現実の狭間で(6)

「麻衣さん、あなたならきっと、おじさんを元に戻すことができるんじゃないかって、私は思うん…

インサイド・アウト 第21話 inside-out(1)

 冷たい夜の底にいた。砂ぼこりで黄ばんでいる窓からは、月の光がスポットライトのように注ぎ…

インサイド・アウト 第21話 inside-out(2)

「自分で飛べそう?」と女の人は僕に訊いた。  僕は強く首を横に振った。「そんな、まさか飛…

インサイド・アウト 第21話 inside-out(3)

 僕たちは手を繋いだまま、塔の入り口の前で夜空を眺めていた。 「きれい……」と彼女は息を…

インサイド・アウト 第21話 inside-out(4)

 水槽を眺めながら、僕は考えた。等々力の手によって脳を取り出され、この液体の中に入れられた僕は、まだこの中で永遠に宇宙の創造と破壊を繰り返しているのだろうか。それとも、水槽の中にある僕の脳はもはや物質的な意味を持たなくなっていて、精神だけが分離してこの肉体の中に在る状態なのだろうか。だとしたら、今僕が持っているこの肉体はどこから来たのだろう? この肉体までも僕自身が創造したものだとすれば、もしかすると僕の精神は永遠に不滅なのかもしれない。肉体は、精神の入れ物として代用可能な消

インサイド・アウト 第21話 inside-out(5)

 今すぐ、止めなければ。  僕は頭の中で、自分の体が動いている姿をイメージした。今すぐ、…

インサイド・アウト 第21話 inside-out(6)

 どれくらい時間が経ったのだろう?  無であるはずの空間の中に、光がわずかに残っている。…

インサイド・アウト 第21話 inside-out(7)

 闇の中。  地上に向かって、僕たちの体は落下していく。重力は容赦なく体の加速度を増して…

インサイド・アウト 第21話 inside-out(8)

 一時間ほど飛び続けた頃、見覚えのある小さな建物が目の前に現れた。  砂漠という場所には…

インサイド・アウト 第22話 旅立ち(1)

 気がついたときには、わたしは実家のソファの上に横たわっていた。体のだるさから察するに、…

インサイド・アウト 第22話 旅立ち(2)

 実際に事務員の仕事をしてみて、予想していた通り、嫌なことは何度かあった。失敗して注意を…

インサイド・アウト 第23話 始まりのない物語(1)

「もうこの世に十分満足されたのではないですか?」  二名掛けのテーブル席の向かい側に座ってきた女は、何の前置きもなく突然僕に話しかけてきた……ような気がした。  また、気のせいか。  店内には聞き慣れたジャズの旋律が流れているが、今日はいつも以上に混雑していて、細かく音を聞き分けることはできない。時々、周囲の客の話し声が空耳となって僕に語りかけてくる。結局、すべて気のせいなのであるが、聞き慣れた単語に似た言葉が聞こえてくると、脳が無条件に反応してしまうようだ。  聞き