「女神とワタリガラスの伝説」・・・ 北米に伝わる伝説より
誰かのために命を削るとき、人は熱く燃え上がる。
北米に伝わる命の始まりに関する伝説をアレンジ。
『女神とワタリガラスの伝説』by 夢乃玉堂
天地開闢から間もない頃、女神は後悔していました。
「ああ。魂を忘れていたなんて」
女神は、何も無い大地に森や川を作り、
土くれから人間を作ったのですが、
その中にある魂が、どうしても目覚めなかったのです。
「あの明るい太陽のほんのひとかけらでもあれば・・・」
女神は、輝く太陽の光と力を借りれば、
魂が目覚め、命を持って動き出すと考えました。
そのつぶやきを聞いたのでしょう、
一羽のワタリガラスが女神の前に進み出ました。
「女神様。私が太陽のかけらを取ってきます」
そう言うと、ワタリガラスは翼をひるがえし、
空高く飛び上がって行きました。
金星も水星も越えて、
ワタリガラスはひたすら太陽に向かって飛び続けました。
赤々と燃える太陽に近づくにつれ、
黒い羽がじりじりと焦げ始めました。
しかし、ワタリガラスは決してあきらめずに飛び続けました。
「あと少し、あと少しだ・・・」
ワタリガラスの風きり羽が、ボッと燃え上がった瞬間、
ついに、くちばしが太陽に届きました。
「やった。やったぞ!」
ワタリガラスは、太陽のかけらを咥えたまま、
元の大地にすと~んと落ちてきました。
女神は、ワタリガラスを優しく受け止め、
愛おしく抱きしめました。
「ワタリガラスさん。ありがとう」
そして女神は、ワタリガラスが持ち帰った太陽のかけらを、
土くれから作った全ての人間に与えました。
すぐに人間の魂は目を覚まし、元気に動き出したのです。
命を賭けた努力があるから魂は目覚める。
おわり
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