「結婚のきっかけ」・・・それは意外なところから。

『目撃者』

人に言えない相手と隠れてデートしてたら、
妹に見つかってしまった。

「内緒だよ」

と言うと妹は、

「うん。分かった。誰にも喋っちゃだめって、みんなに言っとく」

と言いのこして走り去っていった。

　　　　　　　　　　
・・・・・・・・・・

この話を友人に話すと、

「同じような話が、俺にもある」

と言い出した。

彼は３００年以上続くという旧家の御曹司で、
家柄も作法やしきたりに厳しいらしく、
大概の見合い相手は、見合いの席でそれに気づき、
数日後にはお断りを入れてくるという。

でも彼の方は、そんなことで、見目麗しい女性を見逃すわけはなく、
親の目を盗んでは、見合い相手の女性と
しばらくお付き合いを続けるらしい。

「結婚する可能性が無いから気楽に付き合える」

と本人は言っているが、、
それは、ただ遊ばれているだけじゃないのか？
と聞いたら、彼は少し怒りながら

「結婚を前提としなければ、俺はモテる男なんだ」

と言うなり黙りこくってしまった。
本音ではきっとと寂しいのだろう。

そんな彼が、結婚を決めたのは、
上記のような事件があったからなのだ。

この事件によって秘密のお付き合いが発覚した数日後。
彼のアパートを、両家の親がそろって訪れた。

しきたりに厳しい旧家の父である、
二人は、こっぴどく叱られ、
当然のように引き離されることになると思っていたのだが
そうはならなかった。

彼が開き直って「結婚する」と言ったのかと思ったら
実際は、彼女の方が、前向きだったという。

後に聞いたところでは、
烈火のごとく怒られ、辛辣な言葉にじっと耐えている姿を見て、
彼の事が、ちょっと可哀そうに思えて、

「彼は私が引き受けます」

と言ってしまったそうだ。

自分が側にいないとこの男はダメだな、と
彼女の母性本能が発揮されたという訳だ。

結局彼がモテたかどうかは分からないが、
結婚を前提とせずに、結婚にたどり着いた男であることは、確かなようだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわり

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