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「我が名はコロッサス」・・・『チャットGPTの時代に(その4・前編)』。繰り返されるいたちごっこの時代を生き延びる。


コロッサス(仮)、という名の通話監視アプリが大ヒットした。

当初は、詐欺電話に対して警告を出すアプリだった。

「警告。警告」

詐欺電話だと判断した場合、こんな警告音声が流れる。
続いて、「この電話は録音されます」と自動音声が流れる。

多くの詐欺電話はこれで撃退できた。

ところが、
詐欺集団は手軽になったAIを活用し巧妙化していく。
コロッサスの通話管理機能を詐欺を行うようにプログラミングし、
自動電話で詐欺を行うアプリを自分たちの為に作り出したのだ。

『悪のコロッサス』は対話形式にも対応し、録音も自動音声もl効果がない。


やり方はこうだ。

電話営業を装って、何度か電話を掛ける。
その際電話に出た人(老父母)の声を、『悪のコロッサス』がサンプリングし、その音声データから計算で割り出した子供の声を合成する。

そこからは、通常のオレオレ詐欺と同じだ。
合成した声は印象が似ている上、営業電話で手に入れた情報も加味しているので破綻も少なく、多くの人が被害に遭った。
しかも、電話の応対も全て『悪のコロッサス』が行うので、
詐欺集団の方は、掛け子も受け子もいらない。
口座に振り込んでくれる『上客』に出会うまで、
パソコンが勝手に電話をかけ続けてくれるのだ。


ある時、詐欺電話を受けた人が、戯れでこんな事を聞いてみた。

「コロッサス答えよ。
お前に電話を掛けろと指示した犯人は誰で、どこにいるのか」

『悪のコロッサス』は簡単に「白状」した。

犯人の名前と住みか、経歴から現在進行中の犯罪まで事細かに答えたのだ。

最初に「白状」した犯人は、小学4年生の姉弟だった。
自宅にある父のパソコンで『悪のコロッサス』を一度だけ操作し、
後は、ずっと忘れていたのだという。

だが、それをきっかけに、本物の詐欺集団にもたどり着き、犯人たちは一網打尽。オレオレ詐欺は撲滅されたように見えた・・・ほんのしばらくの間だけ。


あっという間に、『悪のコロッサス』が嘘をつくようになり、
詐欺集団は無くならなかった。
正確に言うと、詐欺集団は無くなったが、
集団ではなく、『個人詐欺』として事を起こす者だけになり、
全てはパソコンがあれば、誰でも出来るようになったために、
事件は何十倍、いや何百倍に増えた。

しかも、犯人をいくら捕まえても、『悪のコロッサス』はインターネット上に存在し続け、自動で犯罪を重ねていく。
万一刑務所に入っている間も、押収されなかった別の『悪のコロッサス』が自動で詐欺を続け、出所した時には億万長者になっているという違法状態を無くすために、政府も重い腰を上げた。

「誰から掛かってきた電話でも、まず嘘や詐欺を疑いましょう。
声がどんなにそっくりでも、話がどれほど噛み合っても、
信じてはいけません。電話口の向こうが人間とは限らないのですから」

もはや対面以外のコミュニケーションは、
この世の中で意味を持たなくなってしまった。

古き良き人々は餌食にされ、働かされ、戦わされる、
そんな「サレ国民」が世界規模で増えていった。

        おわり


*これはSFでフィクションの物語です。現時点では。

ちょっと長くなりそうなので、
『チャットGPTの時代に(その4・完結編・後編)』に続きます。
(少し先になります)











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