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繰り返しのない繰り返し練習

先週のU19の女子チームの練習後に1人の選手から練習についてのフィードバックが送られてきました。そのフィードバックから反復練習について考えたことをここにまとめてみたいと思います。

1. 日本とイギリスでの反復練習の認識

日本では多くのチームが反復練習を採用していると思います。毎回の練習で同じメニューをこなすことで、その練習から得られるスキルや技術が上達していく利点があると思います。また練習の種類としてドリル系の練習が基礎練習として採用されることが多いのではないでしょうか。対人スキルを高めるには1vs1、パスやコントロールの練習では対面パスが主流なのかも知れません。

しかし、イギリス(ウェールズ)ではあまり反復練習は好まれないので、ドリル系の練習をやるチームが少ないですし、練習毎に練習メニューが変わることがほとんどです。

私が指導しているチームでは判断力やボールを失わない技術を継続的に向上させるために、3vs2や4vs2のロンドを一貫して毎回の練習に取り入れていました。しかし、先週の試合後に1人の選手から「ロンドは反復練習で少しつまらない」という意見が送られてきました。ロンドのコンディションをちょくちょく変えながら選手が飽きないように意識していたのですが、そういった意見があがったということは工夫が足りなかったのかもしれません。


反復練習のメリット、デメリット

このフィードバックから反復練習のメリット、デメリットを考えてみました。

メリット
・特定の技術やスキルに着目しやすい
・特定の技術やスキルの練度を高めることができる
・繰り返し練習をやることでスムーズに練習が進む
・上達具合を確認しやすい

反復練習のメリットとしてはやはり同じようなシチュエーションを繰り返し再現することができるので、特定の技術やスキルを向上させることができると思います。また中長期的に反復練習を行うことで選手がどれくらい技術やスキルが伸びたのかを確認しやすいことも大きなポイントだと思います。

デメリット
・選手が練習に飽きやすい
・練習のマンネリ化
・集中力の維持が難しい

反復練習は同じようなプレイが続くので選手の練習への集中力や意識付けが難しいのが大きなデメリットかなと思います。特に選手達が反復練習の意図を理解していない状態で練習を行っても何に対して意識すればいいのかわからずに、ただただ繰り返し練習しているだけの状態になってしまうので、選手が飽きてしまうということが考えられます。

学校の授業でも同じように生徒が興味のある内容の授業では能動的に生徒が学ぼうとするので習得が速い傾向にあると思います。一方で興味のない分野であったり、授業に飽きてしまうとどうしても集中力が削がれて授業内容が頭に入ってこないのではないでしょうか。

ですので、反復練習をする場合にはどうやって選手の集中力を維持しつつ練習を進めることができるかが大切になってくると思います。


3.繰り返しのない繰り返し練習

選手からのフィードバックを受け取って私の練習を見直していた時に小谷野監督(福山シティFC)の記事を思い出しました。

大変興味深い記事ですのでぜひご覧になってください。

この記事の中で「繰り返しのない繰り返し練習」というセクションがあります。個人的な解釈だと繰り返しのない繰り返し練習とは「練習メニューで引き出したい現象(練習の意図)は保ちつつ、練習のオーガナイズ、コンディション、アプローチを変化させていくこと練習のこと」だと思います。

繰り返しのない繰り返し練習を行うことで選手の頭が常にフレッシュな状態になり、集中力を維持しながら特定の技術やスキルにアプローチできると思います。


繰り返しのない繰り返し練習の方法

繰り返しのない繰り返し練習をする上で難しいことがどうやって練習を変化させながら同じ現象(練習の意図)を引き出すかということだと思います。今回は選手からロンドの指摘を受けたことからロンドを題材に考えていきたいと思います。

①練習のオーガナイズ
まず1番変化させやすいのは練習のオーガナイズだと思います。ロンドのエリアを広げたり、狭めたりするだけでも選手は練習に対して違った印象を受けるかもしれません。ロンドを行う際には大抵が四角形のエリアを作ると思いますが、五角形や六角形に帰るだけでも違ったテイストを加えることができます。またプレイヤーの数も変化させることができます。ディフェンダーを何人置くのか、オフェンスを何人置くのかでも練習の強度や難易度は変わってきます。

②コンディション
コンディションも練習を変化させる1つの要素だと思います。タッチ制限を導入してみたり、「○回パス成功で…」というような報酬を与えるコンディションもあります。更にはリターンパスは禁止、隣のプレイヤーにはパス禁止なども使えると思います。またエリアの外にミニゴールを設置して「6回連続でパスが成功したらシュート」、「ディフェンダーがボールを奪ったらシュート」など明確にゴールを決めるのもいいかもしれません。

③アプローチ
《コーチングアプローチ》
コーチが選手に対して意識してほしいポイントを強調するだけでも練習は変化します。例えばロンドでは大抵があまりダイナミックな動きをすることはないと思いますが、コーチが「パスしたら違う場所に動いてみよう」とアプローチをかけるだけでも、ロンドの中に選手の流動性が生まれるかもしれません。他にも「ファーストタッチは沢山の選択肢が持てるところにコントロールしよう」と働きかけるだけでも選手の意識はファーストタッチに向くのではないでしょうか。

《目的へのアプローチ》
基本的にロンドではパスを回しながらボールをキープすることが目的ですが、その目的を変えてみることも有効だと思います。例えば下の図のように「ロンド(4vs2など)から6本連続でパスを成功させたら前線へ展開して4v4」というメニューにすると、ロンドとファイナルサードの練習を組み合わせたことで選手の目的はゴールを決めることになります。

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練習の目的が変わることでより試合に近づいた練習にすることもできますし、これまでパスを成功させることがゴールだったのに対して、得点を奪うことがゴールになるので選手達が「ゴールを奪うためにはパスを成功させる必要がある」という認識に変わるので意識する方向が変わってきます。


最後に

ここまで長々とお話してきましたが、今回の選手からのフィードバックで私の練習を見つめ直す良い機会になりました。ロンド1つを取っても様々な変動性を加えることができますし、私の練習は工夫が足りなかったなと反省しました。小谷野監督の記事は練習をプランする上で重要なポイントが沢山書かれているのでぜひ皆さんも読むことをおすすめします。個人的には反復練習で得られるものは多いと思っているので、いかにコーチが工夫してトレーニングをデザインできるかがカギになってくると思います。1つ一つのメニューが質の高いものになればトレーニング全体がとても有益なものになると思うので、丁寧に興味深い練習メニューを作っていければいいなと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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