見出し画像

親の間違った”サポート”が選手を萎縮させる

先日、ある選手の親御さんから「うちの子はFWだ、何で前で使わないだ!」と言われ、私は「ああ、またか」と。

きっとその子の親御さんは気付いてないと思うが、その言動が自分の子どもの評価を下げることに繋がるかもしれないということを理解した方がいい。

サッカー界のモンスターペアレント

どの界隈にも"モンスターペアレント"と呼ばれる厄介な親御さんがいる。サッカー界も例外ではない。冒頭でお話した自分の子どものポジションを指定してくる親、試合中に自分の子ども以外の選手にも平気であれこれ言ってしまう親、クラブ運営やチームの活動に文句を言ったり非協力的な親。

はっきり言って、こういった親御さんはチームやクラブにとって邪魔な存在である。

サッカーとはチームスポーツで最低でも11人の選手がいないと試合ができない。ということは11人の子どもがいて、それぞれに親御さんがいるということだ。それだけ人数がいれば、ある意味で小さなコミュニティであり、そのコミュニティの反乱分子になり得る存在はクラブやチームからしたら排除したい存在になる。

いくらそんなモンスターペアレントの子どもが良い選手だとしても、その子の親がチームの輪を乱したり、クラブ全体の悪影響を及ぼしているのであれば、残念ながらその選手にはクラブを去ってもらうことになりかねない。だから、冒頭で話したように、親の振る舞いが選手の評価に繋がることもありえる訳だ。いくら子どもが同じクラブでサッカーを続けたくても、親の振る舞いが変わらない限りはクラブに残ることは難しい。

こういったモンスターペアレントのタチの悪さは自分たちがモンスターペアレントであると自覚しておらず、「チームのためクラブのために"やってあげている"」と思い込んでいる点である。

私が前に指導をしていたクラブにいたモンスターペアレントの例を上げよう。ある選手の親は毎回自分の子どもの試合を観戦しにきては応援ゾーンの最前線で自分の子どもに指示を出し続ける。その選手はDFを担当していたが親が攻撃時には「上がれ!」指示を出す。コーチ視点ではカウンターのケアをするために「上がらないで最初ラインに残って」と指示を出していた。当然、その子どもは自分の親からもコーチからも指示を受けたので、どっちの言うことを聞けばいいかわからなくなる。その選手は最終的に試合中に泣き出してしまった。

その出来事があり、クラブからその子の親に対して、試合中は指示を出さないようにお願いをしたが、その親は「チームのためにやっているのに何が悪いんだ」と反論。あくまでチームのために"やってあげている"というスタンスが恐ろしい。結局、その子の親(旦那さん)は出禁となり、奥さんのみ試合に来ることが許された。

一旦、自分の身を一歩下げたところから他の親御さんがどういった振る舞いをしているか考えてみて欲しい。「自分は悪い意味で目立っていないか?」、「自分の振る舞いはチームに悪影響を及ぼしていないか?」、「本当に自分の行動は間違っていないか?」。今一度、自分自身に問いかけてみてほしい。

自己満足な親

自分の子どもがプロサッカー選手になって世界で活躍することを親は夢見るかもしれない。しかし、自分の子どもがプロのサッカー選手になる確率はほぼ0に等しい。イギリスではその割合は約0.012%と言われている。

だからと言って子どもにサッカーをやらせるなとか、子どもがサッカーすることを応援するなということではない。ただ、なぜ子どもがサッカーをやっているのかを理解して、親は適切なサポートをする必要がある。

あなたの”サポート”は自己満足ではありませんか?

私の親

私の親は私にサッカーの素晴らしさを教えてくれた存在であり、小学1年生から今までサッカーを続けてこれたのは紛れもなく親の存在があったからである。小学生の頃は地元の少年団でサッカーをしていたが月会費を払ってくれていたし、マッチデイでの配車、練習会場の予約、練習や試合でのコーチの方々へのお茶出しや応急処置係など、私がサッカーができる環境を作ってくれていた。

中高では街クラブに所属していたので、月会費も上がったにも関わらず、練習着、ユニフォームやスパイクを買ってくれていた。また春、夏、冬休みの遠征費なども高額な出費だったはずだ。

大学生になった現在でもサッカーの指導者留学にかかる学費、家賃、生活費などを親から出してもらっている状況で、私の親には感謝しかない。私のサッカーが好きという理由だけではサッカーは続けらず、親のサポートがなければここまでサッカー一筋でやってこれていないと思う。サッカーの指導者として一人前になって美味しいレストランに連れていきたいと思っている。

「親のサポートとは何か?」

私の話が長くなったが、自分の子どもがサッカーが好きで自分の子供がサッカーをしたいのであれば、親はその気持ちを尊重してサポートしてあげるべきだと思っている。そして、この話の本質は「親のサポートとは何か?」である。

自己満足な親はこのサポートのことをよく誤解している。自己満足な親がよくやりがちなのが、『自主練』である。クラブの練習だけではどうしても練習時間が少なく、自主練自体は非常に大切であることは間違えない。だが、親が主導で自分の子どものために無理やり自主練をさせるのは良いサポートとは言えない。子どもが自主練の相手として親がそれをサポートするのは素晴らしいとは思うが、親が無理やり子どもを引っ張り出して自主練を行うのは、ただ親の自己満足に過ぎない。

サッカースクールに無理やり通わせるなども同様な例である。先程も言ったように自分の子どもがそのスクールでサッカーがしたいのであれば全く問題ない。ただし、無理矢理自分の子どもをサッカースクールに入れたことで、子どもがいやいやサッカーをしても、全くサッカーは上達しない上に下手をすれば子どもがサッカーを嫌いになる可能性すら出てくる。そうなればいくら自分の子どもを上手くさせようとスクールに通わせても、サッカーが嫌いになって辞めてしまったら本末転倒である。

最近ではSNSに自分の子どものドリブルやリフティングなどを自慢げに投稿する親をよく見かける。自分の子どもをSNSに投稿することに関しては様々な考え方があるので、節度を保っていれば良いと思うが、それが親の自己満足のためならばやめるべきであると思う。

子どもがSNSに自分のパフォーマンスを投稿して欲しくてやっていたり、SNSに投稿して反響を得ることでサッカーをするモチベーションにも繋がっているというのであれば、良い活用方法なのかもしれない。しかしながら、親がただただ承認欲求のために自分の子どもを使ってSNSに投稿するのはいかがなものか。親として喜ぶべきは子どもがコーチやクラブなど現場から評価されることであり、名前も顔もわからない匿名の誰かからの『いいね』ではない。

もう一つ自己満足な親の例を上げよう。これもあるあるだが、試合後や練習の休憩中などに自分の子どもに説教をする親だ。「何でもっとちゃんとやらないんだ」、「何でもっと自分で仕掛けないんだ」、「お前が集中しないから負けたんだ」などなど。そんな説教を受けた子どもはどういう心理状態になるかは誰でも予想がつく。その説教を受けた子どもは自分のプレイに自信を無くしたり、そもそもサッカーのやる気を無くしてしまったりと悪い影響ばかりが残る。

そんな説教よりも子どもが欲しいのは自分の良いプレイに対する褒め言葉であったり、頑張りを称える言葉である。たとえ、自分の子どものパフォーマンスが良くなくても「ドンマイ、切り替えて次頑張りな!」などポジティブな声掛けの方が説教よりも効果的である。

サッカーをやっていればコーチから怒られることは必ずある。パフォーマンスが悪ければコーチから指導をされる。その時に自分の親にまで説教を喰らった日にはサッカーから離れたくなってもおかしくはない。

親は子どもがサッカーをする環境をサポートするのであって、親が自分の自己満足のために自分の子どもにサッカーをさせるのではない。側から見れば自己満足な親は"熱心"な親に見えるが、本当にその"サポート"は自分の子どものためなのか考えるべきだ

親は親、コーチはコーチ

試合中よく見かけるのがベンチの反対側で熱血指導を行っている親御さん。そして、そう言った親御さんに多いのが「もっと寄せろ!サボるな!」、「何でドリブルで仕掛けないんだ!」、「シュート打てただろ!」といったネガティブなコーチング。指導者からするとこういったコーチングは本当に迷惑。

こういった親御さんは気付いた方が良い。自分の子どもがコーチに指示をされ、また自分の親にも指示をされて混乱していることを。

親御さんがコーチの指導を理解していて、自分の子どもにコーチングする分にはまだマシだが、こういった親御さんのほとんどはコーチの指導には気にもせずに見切り発車で自分のコーチングを繰り広げる。そうなれば、選手からするとコーチと親のどっちの言うことを聞けばいいのか分からなくなり、プレイが萎縮していく。

もし、この記事を読んでくださっている親御さんがいるのであれば、親は自分の子どもがサッカーを楽しくプレイできる環境をサポートするのであって、自分勝手なコーチングや選手のパフォーマンスを制限するような声掛けをすることではないことを理解して欲しい。親は親としての役割があり、コーチはコーチとしての役割がある

もし仮にコーチの指導が気に入らず、自分の指導が正しいと思うのであれば、自分の子どもを自分で指導してプロの世界へ送り出してあげれば良い。自分の子どもをクラブに入れている以上はコーチの指導を信用、信頼して自分の子どもをクラブに託してもらいたい。

もちろん、全てのコーチは預かった選手たちを必ず成長させなければいけないし、上手くなるために最善の方法を尽くすことは前提であるが。

最後に

今回は私の実体験なども含めて、選手と親の関わり方について話してきた。今回、紹介した例はごく一部であり、大半の親御さんはこういった事例に含まれないだろう。しかし、大体各チームに1人くらいは良くない関わり方をしている親御さんがいることも事実である。もしこの記事を読んで当てはまっている節があれば、自分の振る舞いを振り返るキッカケにしていただければと思う。

私は指導者という立場なので選手がいなければ仕事がなくなる。選手を自分のチームに入れてくださったことには大変感謝をしており、親御さんのサポートがなければサッカーを指導することもできない。選手の送り迎えや会費の支払いなど選手への日頃のサポートは本当にクラブとしても1指導者としても本当にありがたい。そういったサポートに対して応えるためにも、私は指導という面で最善を尽くさなければいけない。

指導者と親御さんの関係性や選手と親御さんの関係性は良好であるに越したことはないので、お互いにリスペクトして良い関係を築き上げれれば、きっとチームにも良い影響が表れるだろう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

この記事が参加している募集

もし宜しければサポートをよろしくお願いします! サポートしていただいたお金はサッカーの知識の向上及び、今後の指導者活動を行うために使わせていただきます。