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厳しい中でも上積みを【Jリーグ】湘南ベルマーレvs浦和レッズ

前節広島に勝利し3連勝としたレッズはアウェイで湘南ベルマーレと対戦しました。

湘南はここまで残留争いに巻き込まれていますが、前節のセレッソ大阪との試合では5-1と快勝しています。また湘南との前回対戦では2-3(公式記録では0-3)で逆転負けを喫している相手だけにリベンジといきたいとところです。


スタメン

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湘南は前節のセレッソ戦からメンバーを2人変更。左WBに高橋が入り、シャドーは古巣対戦となる山田が茨田とコンビを組みました。

一方のレッズは前節の広島戦からメンバーを3人変更。岩波、明本、江坂に代わり左SBに宇賀神が入り、ショルツが右CBで槙野とコンビを組みました。ボランチは変わりなく、右SHに関根、左SHに大久保、小泉が復帰後初先発でトップ下に入り、ユンカーの1トップでした。


試合内容

前半は両チーム中盤で激しい奪い合いが続く。7分に湘南が中盤でボールを奪うと大橋がドリブルで持ち込み左足でシュートを放つもショルツが足でコースを変えて防ぐ。31分に湘南はCKから大橋が頭で合わせるも西川が弾く。34分にレッズはユンカーのグラウンダーのクロスに小泉がスルーして最後は大久保が合わせるもボールは枠の外。38分に槙野のゴール前に放り込み、酒井が競り合いながら後方へ折り返し最後は関根がボレーシュートを放つも大きく外れる。39分に湘南は古林のクロスにタリクが体を投げ出しながら足で合わせるも上手くミートできずに外れる。両チームともに要所で潰し合い、あまり決定機を作らせずに前半を0-0で折り返す。

ハーフタイムに両チームメンバー交代を行う。湘南は茨田を下げて池田を投入。レッズは小泉と関根を下げて江坂と明本を投入。後半の序盤はレッズが優位に試合を進める。49分に宇賀神がミドルシュートを打つも湘南のディフェンダーにディフレクトして枠外へ。55分には江坂からユンカーにスルーパス、ユンカーがヒールで大久保へ落とすと大久保がクロス、最後は江坂が右足で合わせるもシュートはゴールの外へ。59分に湘南はウェリントンと畑を投入し前線に高さを加えてくる。65分に池田のクロスにウェリントンが頭で合わせるが西川がしっかりキャッチ。92分に湘南がカウンターから数的優位を作るもクロスが合わずにシュートまで行けず。結局、両チーム決め手に欠き0-0のスコアレスドローで試合は終了した。

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・試合ハイライト動画


・試合スタッツ

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巧妙な罠

ここ数試合は3バックを採用する相手と戦う機会が多かったレッズはこの試合でも対3バック用の面白い戦術を披露しました。湘南は3-1-4-2のような形で3バック独特のWBを置いてくるチームです。それに対してレッズは4-3-3でボールを奪いに行きました。

ここでのレッズの狙いはWBに蓋をするということです。WBまではボールを入れさせてWBに入って瞬間にSBがボールホルダーへアプローチをかけます。WBのところで奪うかWBがIHにボールを預けたところを潰す構造でした。

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15:09では関根が杉岡にプレスをかけて左WBへ誘導。酒井がスライドして高橋までプレスをかけて小泉が高橋のパスをインターセプトすることができました。WBの対応に手を焼いていたレッズですが逆にWBのところにパスを入れさせてボールの奪い所にする巧妙な罠を仕掛けていました。

・罠外し
湘南はWBにパスを入れるとハメられてしまうことを徐々に察知し中盤を省略し始めます。湘南は2トップなので最終ラインはレッズと同数になっています(2トップvs2CBs)。そこを上手く利用して湘南の最初ラインからレッズのSBの背後へのボールを多用してきました。レッズのSBはWBまでスライドする準備をしているので立ち位置がやや前気味になっているので背後にスペースができていました。

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ヒートマップでもレッズのSBの背後のところがやや濃くなっています。

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・重心を後ろに
レッズは前半の途中から4-4-1-1の守備陣形に変更しました。湘南がロングボールで中盤を省略してくるのでセカンドボールを拾いやすくすることと、SBの背後のスペースを消す狙いがあったと思います。

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この変更でやや重心が後ろに下がり押し込まれる展開になりました。レッズとしては奪ったところからロングカウンターに行きたいところでしたが、この試合ではユンカーがなかなか起点に慣れず、後ろからもサポートが遅れることが多い状況だったのでただ後ろに重たくなってしまう状況でした。

・押し上げ
前半の終盤は後ろ重心でなかなか押し上げられない状況だったのでレッズは後半から明本と江坂を投入し2トップにしました。

2トップが湘南の3バックの左右に牽制をかけてボールを蹴らせて、最終ラインが回収するという良い守備ができていました。どうしても前線では2vs3の状況ですので杉岡にドリブルで運ばれるシーンもありましたが、2トップが献身的にチェイスしていたので比較的抑えることができていました。SBの背後もスペースが狭い状態を作れていたので後半からレッズが再び持ち直しました。

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・試合終盤
試合終盤は湘南もウェリントンを投入し前線に高さを加え、クロス攻勢をしてきたのでレッズも最終的には3バックにして対応しました。最後まで集中した守備を継続して湘南に決定機を作らせませんでしたし、守備陣の奮闘ぶりは見事でした。


『深さ』も忘れずに

前半の方がボール保持率は高い結果となりましたが上手く攻めることができていたのは後半だったと思います。前半は最初ラインからなかなか縦パスを入れられずに停滞するような場面がありました。

・コンパクトな湘南の守備
レッズのビルドアップの狙いは湘南がプレスをかける時にIHが飛び出してくるので、その背後のスペースを取るというところだったと思います。湘南は5-3-2で守備陣形を作りIHが1列前に出て5-2-3でボールホルダーにアプローチをかけてきます。レッズとしては小泉と伊藤がIHの背後で受けようとしていましたが、なかなかパスが来ない状況でした。特に右サイドで上手くIHに寄せられて酒井の所で詰まってしまう場面が多かったです。

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左サイドでは宇賀神が右利きなので右足でハーフスペースにボールを送り込む場面が多かったです。15:44や27:23のように宇賀神からハーフスペースに流れてきたユンカーや小泉へのパスは多くなりました。ですが、ユンカーは常に背負った状態でのプレーになりましたし、湘南の田中が上手く挟み込むようにスペースを潰していたのでなかなかハーフスペースを起点にすることができませんでした。

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・スペース作り
後半はハーフタイムに投入された江坂が上手くIHの背後で受けるシーンが増えました。もちろん江坂の立ち位置も良かったのですが他の選手の働きが噛み合った結果、江坂のところが空いたというふうに捉えるべきだと思います。

後半からレッズが湘南のWBの背後、3バックの脇のスペースに出て行くことが増えました。主に明本と大久保が背後を取りに行き深さを出します。すると湘南の最初ラインは背後をケアするためにラインが下がります。すると中盤とディフェンスラインの間にスペースができました。特に明本が右サイド深い位置まで動いて起点を作ったことで全体を押し上げることができました。

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深さを作れると湘南の選手同士の距離感が広がりプレスをかける距離が長くなります。55:25では山田がショルツにプレスをかけようとしますが、プレスのに行く距離が遠くショルツにはプレッシャーがかからない状況でした。江坂も上手く顔を出してパスコースを確保し、ショルツから江坂に鋭い縦パスが入ります。そして江坂からユンカーへ高精度のスルーパスが渡り、最終的に江坂の決定機を作りました。

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スペースがないのであればスペースを作る作業が必要になり、それを大久保や途中出場の明本がしっかりと行った結果、江坂のところがフリーになりました。

広島戦ではちょうどチーム全体の連動が噛み合った時に得点が取れたので良かったですが、この試合では決定機を外す形となりゴールを奪うことはできませんでした。今のレッズは数多くチャンスを作るチームではなく、チャンス濃度の高いシーンを数回作るチームなのでしっかり決めたい場面でした。とは言え、チームとして狙いを持ってボールを前進させてチャンスを作れたという意味では1つポジティブな要素だと思います。


1番の敵

試合を観た方は分かったとは思いますが気温が高く、雨も降っていて湿度が高い状態でした。そしてレッズは中断明けから連戦が続いている状況でコンディション的にとても厳しい試合となりました。

この厳しいコンディションはこの試合の1番の敵だったのではないかなと思います。ユンカーのパフォーマンスは明らかに疲労が感じられましたし、関根も前節の広島戦でタフなタスクをこなしていたので半分で交代となりました。

データでも顕著にレッズの選手達の疲労度が現れていました。総走行距離とスプリント数を見ても湘南に圧倒される結果となりました。

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この日の気温が高く、雨で湿度が高いというコンディションは同じですが両チームのこれまでの平均のデータを見てみると湘南は総走行距離の平均が114,862kmで総スプリント回数の平均が178.1です。総走行距離は湘南はやや落ちていますがスプリント数では平均よりもこの試合は上回っています。

一方でレッズは今シーズンの平均総走行距離が114,055kmで平均スプリント数が163.4です。この試合と比較すると総走行距離は10km以上少ない数値となっていますし、スプリント数でも20回以上も少ないです。

これだけ両チームで差がある状態で勝利を手にすることは容易ではありません。しかし、リカルド監督は上手くマネジメントしながら選手を入れ替えここまで戦っています。この試合でも何とか負けなくて済んだというよりは勝てる可能性も十分にあった試合でした。今シーズンは選手の競争が激しくチーム全体で底上げができているので、選手を入れ替えながらでもクオリティーを落とさずに戦えています。リカルド監督は上手くこの試合でも試合の流れと選手のコンディションをコントロールしていたと思います。


最後に

この試合でも守備では安定感があり、京都戦も含めると4試合連続でのクリーンシートでした。最初ラインの構成が変わりながらも継続して0で抑えているということは守備の構造が上手くいっている証拠だと思います。ベースは4-4-2ですがそこから対戦相手や試合の流れによって上手く可変させながら守れているのは選手の成長を感じる部分です。

攻撃面では1試合の中でいくつか意図したボール運びができるようになってきました。その回数を徐々に増やしていくと同時に連携面での細かい部分を擦り合わせていければより良い内容になっていくのではないかなと思います。連戦が続きチーム練習が十分に行えない中でチームとして上積みがあることは非常に素晴らしいことだと思いますし、選手やコーチ陣の努力が伺えます。

リーグ戦は代表ウィークが入るのでひとまず9/11の横浜FC戦まで空きますが、中断期間にもルヴァン杯の川崎戦が2試合あります。厳しい日程が続いていくのでリカルド監督のマネジメント力が問われる期間になりそうです。リーグ前半に戦った時には力の差を見せつけられる結果となりましたが、そこからどれだけ差を縮められているのか期待したいです。チームは総力戦での戦いとなっているだけに、チームを後押しするサポートで力を与えましょう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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