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真価が問われた一戦【Jリーグ】浦和レッズvsヴィッセル神戸

前節アウェイでガンバ大阪に3-0と素晴らしい結果で埼スタに戻ってきたレッズ。今シーズンここまで2敗のみと好調のヴィッセル神戸との対戦になりました。上位チーム相手になかなか勝てていないレッズは真価の問われる一戦でした。

現役ベルギー代表フェルマーレンなどタレントが揃う神戸はイニエスタが来日して以来、初めての埼スタでのプレーということもあり注目の一戦となりました。

スタメン

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ホームのレッズは前節のガンバ戦から2人変更。柴戸と小泉がベンチスタートとなり左SHに汰木、ボランチは伊藤(敦)が阿部とコンビを組んだ。

アウェイの神戸は先発を4人入れ替えた。GKには今シーズン初出場となる飯倉、イニエスタが怪我から復帰し初スタメン、1トップには新加入のリンコンが入った。


試合内容

前半は神戸ペースで試合が進む。山口、イニエスタ、郷家の中盤でボールを握りレッズのプレスを回避。神戸が徐々に押し込み始める。14分には神戸の右サイドからクロスが入り最後は古橋がシュートを打つもゴール左に外れる。前半30分過ぎたあたりからレッズも徐々にシュートを打てるようになり、32分に汰木、33分に明本が立て続けシュートを打つも得点にはならず0-0で前半を折り返す。

後半からレッズは阿部と武藤を下げて、柴戸と小泉を投入。後半開始早々の47分に汰木のクロスから田中のヘディングシュートが決まりレッズが先制する。選手を入れ替えたレッズが試合を支配する時間が続く。63分にイニエスタが狙いすましたシュートを放つも彩艶がセーブし神戸に得点を許さない。87分に西がゴール前に放り込んだボールがユンカーまで渡り、左足のボレーシュートがゴールに突き刺さりレッズに追加点が生まれる。その後、試合は終了となり2-0でレッズが勝利しリーグ戦3連勝となった。


・試合スタッツ

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・試合ハイライト動画



黒幕潰し

両チームともにポゼッション攻撃を志向するチームですのでこの試合の1番のポイントはどちらがボールを握るのか、そしてどうやって相手からボールを奪うのかという部分だったと思います。

レッズは前半プレスをかけるものの上手くハマらずに押し込まれてしまう時間帯が続きました。ヒートマップを見ても前半は後ろが濃くなり、神戸はレッズ陣内で濃くなっています。また後半のヒートマップでは逆にレッズが盛り返し神戸は神戸陣内が濃くなっています。

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このような結果の背景には前半と後半でプレスに変化を加えたことが影響していると感じました。

《前半》
神戸がのビルドアップに対してレッズはいつも通り中央へのパスコースを消しながらCBへプレスをかけてサイドへ誘導しサイドに追い込むという狙いが出ていました。特に菊池、山川サイドへ追い込もうという狙いを持ったプレスがかけていました。

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しかし、神戸の中盤には山口、郷家、イニエスタの3人がいるのでレッズのボランチがマークしきれない状況になりましたボランチは常に数的不利な状況なので中央から前進される場面が多くありました。特に阿部はイニエスタをマークしないといけないので山口まで前に飛び出してプレスをかけることができませんでした。

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また、山口が最終ラインに下り(サリー)最終ラインが3枚になった時にはレッズのプレスは簡単に剥がされてしまいました。山口が下りた時に田中がプレスに行きましたが、右サイドでは1人(田中)vs2人(山口、酒井)の状況なのでプレスを剥がされてしまいました。西は古橋のマークに付いていて縦にスライドすることができずレッズの右サイドから前進されるケースが多くなりました。

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《後半》
前半プレスがハマらなかったレッズはメンバー交代とともにプレスでどこを潰すかを変更しました。レッズは柴戸が積極的に前で山口を潰しに出てこれたことで後半は神戸に自由にビルドアップさせませんでした。

柴戸が山口まで飛び出して山口から前進させないようなプレスに変えました。この時にイニエスタはフリーになってしまいますが敢えてそこは放置してイニエスタへのパスの出し手を潰しにいきました。

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神戸は山口が柴戸のマークにあったことでなかなか上手くビルドアップできずにパスが繋がらない場面が後半は増えました。52:22のシーンでは山口に入った瞬間に柴戸猛プレスをかけて結果的に飯倉のミスを誘いました。レッズは後半から上手くプレスがハマったことで神戸陣内で押し込むことができました。

また、山口が最終ラインに加わった時には田中が前に出て柴戸と伊藤(敦)が横にスライドすることで対応しました。54:44のシーンでは最終ラインに下りた山口には田中がプレス。

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柴戸が酒井を捕まえることができていたので酒井のところで柴戸が奪うことができました。

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神戸が可変しても対応することができたのはハーフタイムでプレスが整理された証拠だと思いました。

この試合イニエスタが先発したこともあってイニエスタに注目が集まりましたが、神戸のビルドアップをコントロールしていた山口が潰さなくてはいけない黒幕だったと思います。どちらかと言うと前半のレッズはイニエスタを潰すことに集中していましたが、後半はイニエスタにボールを入れさせないことで結果的にイニエスタを潰すことができていました。

スタッツを見ても山口はパス成功率92%、ロングパスも6本中5本成功と安定したビルドアップの起点になっていたことがわかります。

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レッズは神戸のポゼッションを攻略する手段として山口に自由にプレーさせないことができたことが試合の流れを引き寄せた要因だと思いました。


縦スライドができる場所とできない場所

前半なかなかボール保持することができずにチャンスを作ることができなかったレッズですが、後半はボールを握ることができるようになりました。もちろんメンバーを入れ替えた影響はあると思いますが、ビルドアップ時の形を変えたことが大きな理由だと思います。

《前半》
レッズは前半3-2-5でビルドアップして前進を試みました。レッズのビルドアップに対して神戸は4-4-2でプレスをかけてきました。神戸は西にボールが入ったタイミングで古橋が縦にスライドしてプレス、それと同時に酒井も田中まで出てくることでハメにきました。

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0:38では槙野がパスコースがなくなったのでユンカーへロングボールを入れて菊池にカットされるシーンがありました。2:50のシーンでも西がしびれを切らして背後へのボールを蹴り回収されてしまいました。背後へのパスが悪いわけではありませんがボランチやシャドーから組み立てる攻撃が前半はできませんでした。

12:12に岩波からハーフスペースにいる汰木へ縦パスが入るシーンがありました。レッズとしてはボランチの脇のスペースを突いていきたかったですがあまり回数は多くありませんでした。


《後半》
後半レッズはビルドアップの形を3-1-5-1(2-2-5-1)に変更しました。西がワイドの高い位置を取り田中がインサイドに入る形にしたことで、古橋は西のマークがあるので最終ラインまでプレスをかけづらい状況を作りました。その結果、レッズはリンコンとイニエスタの脇から前進することができました。

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2トップの脇からボールを持ち上がった時にサイドで数的有利な状況ができます。古橋がプレスをかければ西が空くので神戸はラインを下げて撤退しなければいけなくなりました。

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・縦スライドの位置
前半と後半でビルドアップ時に異なる点は最終ラインの構成前線の人数です。神戸は最初は4-1-4-1からプレスをスタートさせ、イニエスタと山口が一つ前に出て4-4-2のプレスに変化させます。この縦スライドで対応していました。

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レッズのボランチが1つ下りて(サリー)最終ラインを3枚にした時にハメにいきたい場合は中盤がもう1人前に出て行く必要があります。下の図の場合は伊藤(敦)のマークしていたのは郷家でしたので郷家がそのまま1つ前に出ればスムーズなプレスになります。ですが、ボランチの選手が最終ラインまでプレスをかけるのはかなりリスクがあるので、基本的にボランチの選手が最終ラインまでプレスをかける縦スライドはできません。

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郷家が前に出てしまうと中盤の中央にスペースができてしまいますし、山口で小泉と柴戸をマークする必要が出てくるので数的不利になってしまうからです。

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1番のリスクが少ないのはサイドで縦スライドすることです。前半の神戸のように古橋が1つ前に縦スライドし対応することが好ましいです。ただ前半と後半で異なることが西のポジションです。後半から西が高い位置を取ったことでもともとマークしていた古橋が前に出れなくなりました

仮に下の図のように古橋が前に出てきた場合、酒井も同様に縦にスライドし西をマークする必要がありますが、酒井が西の位置まで前に出ることは距離が長いのでリスクがあります。中途半端に前に出ると酒井の背後を使われてしまいますし、酒井のマークしていた田中にもフェルマーレンがスライドして対応する必要があるので、全体でスライドが起こり難易度が高いディフェンスになってしまいます。

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最終ラインの構成と前線の人数を変更したことでプレスを回避したレッズはまさに作戦勝ちだったと思います。


レッズに欠かせない2人

今ではレッズの中心選手である小泉と柴戸ですが、この試合はベンチスタートでした。予想通り彼らがいない前半は厳しい戦いになりました。ですが、後半から小泉と柴戸が入ると一気に流れはレッズペースになりました。もちろん戦術的な修正を加えたことも大きいですが、レッズに欠かせない2人の投入はこの試合のキーポイントだったと思います。

まずスタッツから見てみると2人ともパスの成功率が高いことがわかります。レッズがビルドアップする上でパス精度は欠かせないポイントだと思います。そして前方パス数と成功率を見ると柴戸は後半だけで9本の前方パスを出していて成功率も77.8%と高い結果となりました。フルタイムで出場した伊藤(敦)が前方パス数9本で44.4%なので柴戸がいかに縦パスの意識が高く前線に効果的にパスを供給できていたかがわかります。

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次に敵陣パスとアタッキングサードでのパスのデータを見ると他のレッズの選手と比べると頭が1つ抜けていることがわかります。

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データ上からもわかる2人の効果と貢献度ですが、データで見えない部分でも大きな役割を果たしていると思います。

・小泉
この試合で印象的だったことが小泉の守備意識です。決して小泉は守備的な選手ではありませんが、守備意識や危機察知能力の高さはこの試合でかなり目立っていました。小泉のネガティブトランジション(守→攻の切り替え)はかなり貢献していましたし、レッズが神戸陣内に押し込める要因でした。

個人的に小泉のプレーで取り上げたいことがプレスバックです。プレスをかけることは多くの選手ができますが、プレスバックは運動量と危機察知能力が絡んでくるので意外に上手にこなせる選手は少ないです。

例えばCBへプレスをかけた後にボランチまでマークに戻ることを小泉は行っていました。プレスした後にボランチまでプレスバックができる選手はあまり多くありません。この場合では伊藤敦と柴戸は既にマークに付いているので2トップがプレスバックする以外にハメる方法がありません。小泉が山口にマークすることで完全にサイドでハメることができます。

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また押し込まれた時も同様に中盤までプレスバックすることができるのは小泉のストロングポイントです。押し込まれた展開だとボランチは1番危険なバイタルエリアを埋める必要があるので、なかなか相手の中盤をマークすることはできません。その時に前線の選手がプレスバックすることで1つパスコースを消すことができます。

この場合では小泉がイニエスタまでプレスバックすることで酒井はフェルマーレンまでバックパスせざるを得ない状況を作れます。CBまでボールが戻るとレッズはラインを押し上げることができるので、小泉のプレスバックはとても重要なプレーになります。

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地味なプレーですが小泉の献身性はレッズの守備を支えている1つだと思います。攻撃面では既に存在感を示していますが、守備でも欠かせない存在だなと感じました。


・柴戸

柴戸は小泉とは反対に守備面でこれまで存在感を発揮していましたが、ここ数試合ではレッズのボール回しの潤滑油となっています。47:55~のレッズビルドアップは柴戸が様々な所へ顔を出して前進していることがわかります。

最近、柴戸が成長した部分が空間と敵の認知力が上がったことだと思います。46:39の田中の得点したシーンでも柴戸が小泉をサポートできる最適な立ち位置を取り、汰木へダイレクトでパスが入りました。その結果汰木が余裕を持って縦に仕掛けることができました。また、58:20では中盤の空いているスペースにポジションを取り、フリック気味にダイレクトで田中へパスを送りました。柴戸が受けるときには郷家が寄せていたのでダイレクトじゃないと前方へパスが通らない場面でした。


最後に

前半は何とか神戸の攻撃を凌ぎ、勝負の後半へ持ち込めたレッズ。リカルド監督のゲームプランや試合中の修正が光る試合でもありました。やはり神戸は個々のクオリティーは高かったですし、ここ最近あまりなかった4-4-2のブロックを崩されるシーンがいくつかありました。そういった強敵にしっかりと勝利することができたことは非常に大きな意味がありますし、また1つ壁を乗り越えて成長を実感できる内容だったと思います。

記事の内容では取り上げませんでしたがユンカーはこの試合でたったの17タッチしかしていませんがしっかりと結果を出してくる所は素晴らしいですし、岩波は縦パスの質がかなり向上しているように感じました。(岩波がノールック縦パスをしているのでぜひ12:12と52:20を見返してみて下さい。)多くの選手が活躍する、成長する、課題を乗り越えることができているのでチームが結果を出せているのかなと感じました。

これから過密日程で試合は進みます。選手全員が力を合わせないと結果はついてきません。ぜひチーム一丸となって戦って欲しいです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


出典:



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Gyo Kimura
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