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エジプトでの忘れ物(第一話)

Noteで自己紹介というものを行っていない為、私が何者かという事をあまりお伝え出来ていないが、希望としては、断片的に私のエピソードをお伝えしながら、皆さんの私像を作って頂き、楽しんでもらえればと思っている。

今回話をするのは、なぜか今朝起きて久々に思い出したエジプト旅行の際の話である。

実は私は19~20歳の間、イギリスのロンドンに住んでいた事がある。
欧州近辺のエリアでは、LCCが当時から盛んで、私が発見した限りでは、ロンドン⇒ドイツ(都市は忘れた)までの運賃がゼロ円というチケットが存在する程、国境を超える為のコストが低く抑えられていた。

いつも通りの曇り空のある日、突然ふと思い立った様にピラミットが見たくなった。
衝動を抑えようとする努力を試みる事もなく、慣れた手つきでLCCの予約サイトに行き、その中でも格安の日・航空会社をすぐさまチェックし、予約を行った。

19時頃にエジプト カイロに到着した私がまず驚いたのは、同性愛者の方々のオープンさだ。
特に男性同士、街中で手を繋いで歩いているカップルの多さに驚いた。
当時私が住んでいたロンドンは、「世界一同性愛者に住みやすい街」にも選出される程であった為、当時の私の日常の中にも、同性愛者の方々は溶け込んでいたのであるが、それ以上にカイロはオープンであった。
そんな光景に目を奪われながら、カイロで一番のマーケットにハン・ハリーリに足を向けた。

想像以上の人。想像以上の呼び込みの声。店内には所狭しと並べられたエジプト土産の数々。
そんな中私は、お尻を触られたり、青年に腕を引っ張られ、キスを迫られたりしながらも、辛うじて笑顔を保ちながらハン・ハリーリを楽しむ事が出来た。

翌日、目的のピラミットやらスフィンクスやらを見終え、一定の満足感を得た後、その他の観光に向かった。
まずはお金を降ろそうと考え、日本ではあまり見慣れないが、以下の様な路上ATMに向かい、3万円程度のお金を降ろした。

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周りへの注意を怠る事なく、サッと紙幣を財布に忍ばせ、足早にその場を去り、お目当ての街ブラを始めた。
何店舗か周り、そろそろ何か買おうかと思い、改めて手持ちのお金を確認した時、異変に気付いた。

クレジットカードがない

間違いなくあのATMに忘れてきた

初めての国、通じぬ言語、何よりも私のカードが路上のATMにぶら下がっている姿を想像すると、嫌な予想しか思い浮かばなかった。
すぐさま路上ATMに向かったが、遠目からでもわかる。
路上ATMには何も刺さっていない、という想像通りの現実が。

何度もATMでお金を引き出した以降の足取りを考え、落としている可能性のある場所を考えたが、間違いなくATMから抜き忘れている。
すぐさま最寄りの駅に向かい、駅員さんに近くに交番は無いかと聞いたが、伝わらない。ただ幸いな事にエジプト人は心の綺麗な方が多かった。

私が必死に駅員さんに英語とボディランゲージを使い、クレジットカードを落とした事を伝え、交番の場所を聞いていると、周りにいたエジプト人が続々と私に集まり始め、お世辞にも流暢とは言えない英語で、「俺がお前を助ける(I can help you)」的な事を口々に発した。
私は強い味方を得たと思った。
片手では数えきれない程のエジプト人が私を助けると名乗りをあげている。
駅員さんに伝わりはしない英語で、「有難う。この人達に聞いてみます」と伝え、心の綺麗なエジプト人達に聞こえる大きさで、
「近くの交番の場所を教えて欲しい」
と伝えた。
返事はすぐに返ってきた。
「I can help you」
改めてなんて心強いのかと、感じた。
現地民が異国の地から来た、肌の違う私に対し、助けの手を差し伸べてくれている。さらにその数は片手で数えられない。
普段発さない程のボリュームで「Thank you」と伝えた後、改めて「交番の場所を教えて欲しい」と声をあげた。
それ以後、「I can help you」以外の言葉を私が聞く事はなかった。

埒が明かない事を悟った私は、I can help you の群衆を掻き分け、なんとか抜け出した。
だが一人のエジプト人だけは、私を助ける事を諦めなかった。
引き続き私の耳にぶつける様に語り掛ける I can help youが、一周回って耳障りが良くなってきた頃、私は足を止めた。

「申し訳ないが、全然伝わらないでしょ。自分で探すからついてくるな。」

おそらく少し高圧的に言ってしまったのだろう。このHELPおじさんは少し悲しそうな顔をして、私から離れていった。
よし。一人で探すぞ。と自分を奮い立たせ、歩を数歩進めた先に交番はあった。
HELPおじさん達とのやりとりがなければ、どれほど早く到着出来ただろうと思うと、少し苛立ってしまっている自分を抑え、交番のドアを開けた。

警察官らしき人に事の事情を話し、どうしたら良いかを一気に話あげたところで気付いた。

伝わっていない。

なんとか伝われと思い、何度も説明を試みたが、警察官はI can help youすらも発言せず
ただただ首を横に振るのみであった。
いよいよ終わった。手持ちのお金だけでなんとかしないと、と考え始めた時、新たな展開が生まれた。
「May I help you?」
さっきまでと違い、流暢な英語でこの言葉が飛び込んできた。
声の方向に目を向けると、白髪の白人がいた。
話を聞くと、エジプトに移住しているイギリス人という事であり、私の話を聞いていた。という事だった。

まずエジプト人は英語が喋れないから諦めろ。という事と、エジプト人はカードの使い方が分かっていないから、不正利用される可能性は低いから安心しろ。という話を聞かせてくれた。
少し安心した私は、「何をすれば良いだろうか」と伺ったところ、大きい警察署が徒歩10分程度のところにあるから、そこへ向かえと。おそらくそこに届いているだろう。という事だった。

なんと本当に届けられていた。

歓喜に満ち溢れていた私は、交番にいたイギリス人を思い出した。
あの人のお蔭だ。一人ではここまでたどり着けなかっただろうと。心からのTHANK YOUを心の中で唱えた。
イギリス人への感謝を心の中で十分唱えた頃、もう一人の人物を思い出した。
最後まで話かけてくれたHELPおじさんであった。
この人に冷たくしてしまった事を謝りたい。

どうしても謝りたいという感情を抑えきれなくなり、私は駅に戻り、HELPおじさんを探し始めた。

【第一話 終了】

この話、過去はよく友人に話していたのですが、最近は全くであり、何かに書き留めておきたい。と思っていたので、noteは丁度良かったです。

早めに完結出来る様に努めます。


第二話を書きましたので、リンクを貼っておきます。



以上

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