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ぐん税ニュースレター vol.32 page01 -ご挨拶-

 皆さまいかがお過ごしでしょうか?

 先月の3月19日から5日間、シドニーに行ってきました。コロナ明けで初めての海外旅行で、短期間でしたが学びの多い旅行でした。
 まず、シドニーではマスクをしている人が皆無です。最初のうちはホテルの部屋から出るときに口元が寂しくて、マスクをしてない、と意識させられるのですが、すぐに慣れました。日本に帰ってきて山手線に乗ったら皆がマスクをしていて戸惑いました。
 次に、物価の高さです。自動販売機に入っているコーラが5ドルです(1豪ドル87円)。500mlではなく少し大きい600mlのペットボトルですが、コーラ430円は高いですね。日本では150円位と考えれば、3倍近いです。スーパーでも3ドル以上でしたので、2倍から3倍はします。レストランなども日本の2倍ぐらいはする感じです。マクドナルドのビッグマックセットは10ドルぐらいですので、マクドナルドは1.5倍ぐらいな感じですね。
 その分時給も日本の2倍ぐらい高いので(最低賃金が2,200円位)、生活するには日本より余裕がありそうです。また、祝日は法令で2倍に引き上げなければなりません。実際、ワーキングホリデイを使って日本人の若者が出稼ぎに来るのがブームになっているということです。

 オーストラリアは資源国で農業国というイメージがありますが、GDPに占める割合としては鉱業が10%、農業が2%とあまり多くはありません。金融・保険・不動産などのサービス産業が73%を占めており、日本(72%)と同レベルです。高賃金を嫌気して自動車産業は全て撤退しており、自動車は全て輸入です。機械類も輸入に頼っており製造業が少ないという経済です。
 天然ガス、石炭はたくさん採掘しているのですが、石油が取れません。そのためエネルギー価格高騰の影響でガソリン代は1リッター200円位です。

・2019年まで28年連続での経済成⾧!
☞ 単に「ラッキー」ではない。「資源国」と「先進国」型経済のハイブリッド国内需要がサービス産業を牽引(特に金融・保険、ヘルスケア、教育)

・国全体のGDP規模は日本の35%(人口は5分の1)
☞ 一人当たりのGDPは5万6,000米ドルで日本の1.4倍、最低賃金は21.38豪ドル/時給

移民・自然増により3年間で100万人(仙台市規模)の人口増
☞ 沿岸部大都市に集中し、都市開発のインフラ投資に積極的(西シドニー空港など)(インフラ投資額は過去10年で1.7倍) 

外国企業の投資に寛容(特に日本企業への信頼高い)
☞ オーストラリアのビール市場の89%は日本企業のビール

隠れた技術国
☞ Wi-Fi、グーグルマップ、ポリマー紙幣など

 国土面積は日本の20.3倍で、人口は日本の5分の1ということは、人口密度が日本の100分の1です。沿岸部の大都市に人口が集中し、内陸部は乾燥して土漠となって、誰も住んでいない土地が多くあるそうです。
 現在のオーストラリア国民のうち70%がオーストラリア出身で、30%が海外出身だとのこと。海外出身国の内訳は、イギリス3.8%、インド2.8%、中国2.3%、ニュージーランド2.2%で日本は0.1%とのことでした。シドニーを歩いていると中国人や韓国人がとても多く、日本人は少ないなと感じました。ただ、長期滞在者としては日本人は93,000人と多く、米国、中国、に次いで3位です。

 日本と多民族国家であるオーストラリアとでは経済の成り立ちも全く異なり、オーストラリアは順調に人口が増える(移民)ために経済は安定的に成長しています。人口が減って高齢化の進む日本とは好対照です。また、製造業が国外に流出してしまうリスクを負ってまで、最低賃金を上げることで国内消費を作り出すと同時に、高付加価値分野に労働力を振り向けるといった経済政策が機能していると思いました。
 日本では製造業を中心に日本では生産できなくなるから最低賃金引上げは反対だといった主張が失われた30年には主流でしたが、アベノミクス以降、適度なインフレおよび賃金上昇へと政策がシフトしてきました。しかし、低付加価値産業から高付加価値産業への労働者のシフトが起きるほどの賃金上昇でないために、なかなか産業構造の高度化は進みません。
 例えばウーバーがいい例です。日本はウーバーと言えばウーバーイーツですが、オーストラリアではタクシーです。ウーバーはもともとタクシー配車アプリで、誰でも自分の車とスマホがあれば個人タクシーができるということから、オーストラリアや米国ではタクシー会社はほとんど存在せず、ウーバーに置き換わってしまいました。暇な時間に好きなだけウーバーを使ってタクシー業で稼ぐといった個人が多く、決済もクレジットカードで行い、トラブルがあれば乗車後に低いレーティングをされてしまうので、ドライバーもサービス満点です。なので、タクシーの空車がズラーと駅前に並んで、ドライバーが暇を持て余してたばこを吸っているなんて光景は一切ありません。需要に合わせてウーバータクシーも増えるので需給が自動的に調整されます。タクシー車両もドライバーも必要ないので、その分、駐車場が空いたり、道路が空くといった効果もあるかと思います。シドニーで一度利用しましたが、とても便利でした。
 日本でなぜできないかというと、日本ではこのような営業は白タク行為として運送業違反になるからです。その裏には、タクシー業界からの行政への陳情や政治家への政治献金があるのは明らかです。既得権益を守ろうとする産業があり、既得権益を死守しようとする事業者が必死になって生産性向上を阻害しているいい例だと思います。
 オーストラリアではウーバーの利用はもっと進んでいて、自分が所有する車を貸し出す(シェア)するサービス(Uber Rents)まであります。これはタイムシェアのレンタカーに近いと思いますが、車庫に止まっている自動車を貸し出して現金にするなんて、僕もしてみたいと思います。その影響か、レンタカー業者もとても少ないように感じました。空港の前にレンタカー屋の看板と車両がズラリと並ぶ光景は見られませんでした。これも日本ではレンタカー業者の既得権益を守るためということで、実施されていません。また、自動車業界も自動車が売れなくなるので反対すると思いますが、Co2削減やSDGsなどと唱えるよりも自動車の生産台数を減らすことを考える方が効果あるんじゃないのって、思ったりします。結局、CO2削減やSDGsなんてビジネス目的のスローガンなんだということがよくわかります。
 羽田空港に帰ってきて、空港内の動く歩道で何気なく電子看板を見ていたら、三菱電機の社長がSDGsを一生懸命やって未来に貢献するといったイメージ写真がズラーっと並んでいました。「あ、SDGsなんてあったな、シドニーでは一度もあのマークを眼にしなかったけど。」と思い、外国人にはこのイメージ写真はどういうメッセージとして伝わるのかと考えてしまいました。三菱電機も広告代理店も全くダメですね。日本人だけに伝わるメッセージを羽田空港の国際便ターミナルに出す意味がわかりません。

 日本は先進国という認識でいた僕は、サービス面においては遅れているという現実を目の当たりにして、日本は既得権益を死守する圧力団体を打破できずに、このまま徳川時代みたいな中世に突入するのではと思いました。高齢化も一つの要因だとは思いますが、現状を改革しようとする人が圧倒的に少数となり、既得権益や現状を維持しようとする無能な人々(政治家を含む)に乗っ取られてしまっていると思いました。
 日本がさらに成長するためには、明治維新がもう一度必要なのかもしれません。

ぐんま税理士法人
代表社員 小林浩一

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