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部屋の掃除をしただけで、胸骨を骨折してしまったブルース

なぜこんなにも俺の身体は貧弱なのだろうか。

3歳のころ、勢いをつけて思いっきり横向きに寝たら、左腕を骨折をした。

小学校2年生、自宅の廊下から玄関にジャンプした勢いで靴を履こうとしたら、左足首の靭帯を断裂した。

高校1年生、ジャンプしたのち空中で上半身と下半身をねじらせてみたら 左足のつけ根を剥離骨折した。

何を思ってその行為に及んだのか、今となっては検討もつかない。


だが今日の俺には明確な理由があった。

部屋の掃除だ。

ただ部屋のお片付けをしたかった。

本棚の裏にたまったレシートの山を始末したいだけだった。


だから俺は、

呪文を唱えるハリー・ポッターのように、

右手を目一杯伸ばした。

その瞬間、「ポッキ」という音が胸あたりから聞こえた。

胸骨の一部が逝った。

無詠唱だったが、効果は絶大だ。


俺はもう三十代半ばだ。

去年の9月には昼飯を食べると発熱するという特異体質に変化し、

大雨が降ると街中を駆け回りたい衝動に駆られる。実際、駆け回るのだが。

小さなころは、こんな大人になるとは思っていなかった。


さっきもティッシュでこよりをつくって、鼻をかすかに刺激している。

くしゃみが出ると、胸全体に激痛が走るからだ。

「くるかくるか」と期待していると、徐々に気道がチャージをはじめる。限界点に達する直前、こみあげる恐怖をぐっとこらえる。

一瞬の後、破裂のいななき。

そして痛みに顔が歪む。


そうさ、わかっている。

数十年後、俺は思い返すことだろう。

あのとき自分は、なぜあんなことをやっていたのだろう、と。



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