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定義のしにくい支援活動が、それでも意外と積み上げてきたもの。

現在の社会にはなじみにくい特性を持った方々に向け、私たちは「ギルドケア」という支援活動をつづけています。「保護を与えるのではなく、機会を与える」姿勢を大切に、一人ひとりの状況に合わせて調整しながら支援しています。
ギルドケアについてはコチラの記事で紹介しています。

たとえば「境界域知能」の方など、今の社会に生きづらさを感じる方々の実態を私たち自身もさらに深く理解したい。また多くの方にもこの状況を知っていただきたい。そしていつか一緒に彼らの支援に取り組む仲間になっていただけたら。
そんな想いのもと、noteでの記事更新をつづけています。


「教育制度って、どうなってるんですか?」

先日受けたある質問があります。

「ギルドケアは、さまざまな支援対象者の状況に合わせて柔軟に支援活動ができていますが、その支援メンバーはどうやって知識やスキル、判断の基準を得ているんですか?何か教育制度のようなものがあるのでしょうか?」

支援活動に関して、明確な教育制度や研修のようなものはこれまでつくってきませんでした。
というのも実は、明確なものがつくれなかったからです。

教育に関係がありそうな決まり事と言えば、入社時に業務の一環として提示する指針書の内容くらいのものです。
ちなみに指針書の中には「支援を大切にしている組織です、一緒にやりますか?」といった内容が書かれています。

それでも「ギルドケア」を通してこれまでに1000名以上の方を支援できましたし、行政などの協力機関の方々からは私たちを信頼していただき、今でも毎月20件以上の相談が寄せられています。

私たちのように支援を提供する組織の評価方法としては、協力機関の担当者による評価だけではなく、支援対象者からの満足度調査なども含まれるそうです。
協力機関から定期的に支援相談が来ることを考えると、私たちの支援活動は一般的な基準では計りづらいものの、支援の質自体は決して低くはないように思えます。

では、どうやって支援活動の方向性や質を保てているのか、今回の記事ではそこを考えてみようと思います。

 

頭で理解するのではない、身体を環境に適応させていく

支援活動に関わるメンバーたちが、どう支援に関する知見を得ているのか、3つの観点からシンプルにまとめてみます。

①支援対象者と直接触れ合い、理解する

各メンバーが入社時点に備えている支援に関する知見は、ほぼゼロに近い状態と言っていいかと思います。
支援対象者に対する理解も、その背景への洞察もありません。
ケアに関わっていた経験者もほぼいません。
この時点で持っているものがあるとすると、入社時に確認した指示書の内容に抵抗感を持たず「人が好き」だからおせっかいをするという支援への志向あたりでしょうか。

そして入社後は、日々の仕事や支援団体の方との会話を通して支援対象者のことを知っていきます。
最初は戸惑うこともあります。
ですがその度に一緒に動くメンバー同士で相談し、経験や考え方の共有をすることで、徐々に彼らの特性や背景などを知るようになっていきます。
もちろん一人ひとりの特性は異なるので、そういうものだと認識した言動が生まれるようになってきます。

具体的に言えば、相手の意見や状況に対して一般論を元に先読みしたり決めつけたりせず、コミュニケーションを通して明らかにしていく、という進め方をするようになっていきます。

②協力機関と直接やり取りし、理解する

また、行政などの協力機関とのやり取りも経験していきます。最初は私たちの会社の社長と同行することが多いかと思います。
その場でのやり取りを間近で見ながら、福祉の姿勢を学んでいきます。

たとえばすでに何度もやり取りをしている行政の担当者からは、福祉の姿勢と支援の実態を見て、福祉的な支援活動なのか、利益を重視した人集めなのかを見極められた上で、「ギルドケアに任せておけば大丈夫」と活動を評価いただいています。
さらに「なくなられては困る。こんな企業は見たことがない」とまで言っていただけることもあり、次第に会社としての社会的意義を肌で感じはじめます。

③自身が必要だと信じる支援を積み重ね、理解する

支援現場に関わるメンバーは、支援内容について会社から指示を受けたり、自身で考えた支援を否定されることはほとんどありません。
非効率であっても目的ある行動(共助)であれば止められることもありません。
支援対象と会話し必要なことをお世話する「おせっかい」が認められています。

指示があるとすると、「言いなりになることが支援ではない」や、「自分が嫌になって続けられなくなってしまうような活動はしないように」という支援者を配慮する言葉くらいです。

支援対象者と話し合い、相手の状況を理解した中で必要だと思える支援を提供できる。
言い換えれば、毎回支援に関する企画と判断が各メンバーにゆだねられている環境です。
支援の経験を積むごとに、相手が何を求めているのかを察知するアンテナが磨かれていきます。

ここまでお伝えしてきたように、研修や制度など、支援活動に関する体系化した知識をインプットする場やタイミングは用意していないのです。
もしかするとメンバーそれぞれで認識している言葉や定義も異なっているかもしれません。

「ギルドケアの支援とは何か?」

と言った問いに対する答えも、各メンバーによってバリエーションがありそうです。

それでも、一人ひとりが各現場で支援対象者に向き合い、心の底から必要だと思える支援を形にし、その結果を自分で受け止められる環境をつくってきたのは確かです。

支援についての試行錯誤・PDCAをそれぞれが積んできたとも言えるのかもしれません。

…とは言え、やはりシンプルに「教育制度はこうなっています!」とお伝えしにくい環境ではありますね。


伝わりにくい活動を通して、積み上げてきた真実

貧困ビジネと呼ばれる活動やNPO、行政、委託事業者など、これまで支援に関係するさまざまな機関を見てきました。また、それぞれの特性・熱量・立場・目的・かかわり方などと比較すると、私たちの「ギルドケア」は独自の発展を遂げてきたように思います。
自分たちのことながら、客観的に伝えることの難しい活動だと思います。
よく聞かれる質問に対して、たとえば私たちはこう答えています。

Q1.どんな活動をしているんですか?
A1.身分の復活。本人が望む生活水準への復活支援。
 
Q2.誰のための支援ですか?
A2.定義はしていません、支援を求める意欲があればどなたでも。
社会的弱者と言われてしまう方々は特に多いかもしれせん。
 
Q3.どんな支援をしているんですか?
A3.支援対象者が生活する上で不足してる支援を提供しています。
 
Q4.支援に継続性を持たせる仕組みは?
A4. 営業利益の余力を原資としているので、結果として継続できているのかもしれません。
 
Q5.支援するメンバーの教育体制は?
A5.教育制度はありませんが、「おせっかい」という理念、「機会を与える」というスローガンがあります。

いかがでしょう。

おそらく、なかなか実態をつかんでいただきにくい答えかと思います。
あまりにも形を見せにくく、自分たちでさえ活動の本質を見失う可能性もあります(※前回の記事でお伝えした「イエローリボン憲章」はその対策とも言えます)。

素直に伝えると、「ギルドケア」という活動は、結果的にこういう活動になった、とも言えそうです。
日々さまざまな支援対象者と触れ合う中で自然と沸き起こる支援の気持ちにブレーキをかけなかった結果、時代ごとに代わるニーズを見失うことなく20年つづく活動になり、1000名以上を支援することができました。

また、活動の中で支援対象者それぞれが抱える背景への理解も深まり、段々と提供できる手立ても増えてきたように思います。
そんな流れの中で生まれてきた支援の幅と実績を信頼され、毎月20件以上の支援相談が寄せられるようになりました。

私たちと同じように支援に携わる組織の方々とお話していると、こんな話を聞くことがあります。

支援対象と支援内容を定めるからこそ、手にできる活動資金がある。
でもそれが足かせとなって、有効だと思える支援に踏み切れないことがある。

これはあくまでも、社会の中にある支援の一面を嘆いた言葉だと思います。自分たちを明確に定義するからこそ受け取れる資金もあり、制度も生まれる。
セーフティネットの網目はそうやって徐々に細かくなり、多くの方を救ってきました。

それは十分に理解した上で、今回振り返って改めて自分たちのことで理解したことがあります。

自分たちの活動を言葉で定義しないからこそ、目の前の現場に合わせた支援ができる。変化する時代に合わせた支援をつづけられる。


そんなことも言えるのかもしれません。

今回もお読みいただき、ありがとうございました!


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