見出し画像

なきじんゲストハウス結家

沖縄の絶景と「結ねえ」の笑顔に会いにいく


沖縄本島の北部、今帰仁と書いてなきじんと読む地域にある海まで1分!のゲストハウス、それが結家(むすびや)だ。開業は2003年の老舗のゲストハウスで、オーナーの日置結子さんが切り盛りしている。みんな、親しみをこめて結ねえ(ゆいねえ)と呼んでいる。

わたしが初めて結家に行ったのは、オープンしてわりとすぐのことだったと思う。当時の宿は、今の場所よりもう少し離れた集落にあって、でもやっぱり海のそばの絶景ロケーション。ドミトリーがあって安くて清潔で、そこで毎晩みんなで一緒にご飯を作って食べる「おかず交換会」の仕組みが、ひとりで来てもいろんな人と仲良くなれて最高だなと思った。

今の場所に移ってからもまったくその特徴は変わりなく、目の前にある海はシュノーケリングもできるほど美しく、「おかず交換会」も毎晩ずーっと続いていた。(ゲストの参加は任意で外に食べにいっても全く問題ない)

いつまで見ていても飽きない絶景と楽しい夕食タイム。それだけでもいいゲストハウスなんだけれども、何といってもここは結ねえのキャラクターがつくりあげる明るい雰囲気が魅力だ。もともと有名サーカス団で司会やアクロバット芸の演者の経歴もある彼女。その能力が遺憾なく発揮されている。

設備の整った現代風ホステルではなく、ここはあくまで古典的といえばよいのか、みんなで仲良くなれるゲストハウスだ。けれど、彼女のアーティスティックなセンスと、たくさんある靴やスリッパがいつでもぴしっと揃えられているような、見えない心遣いと行き届いた清潔感があるからこそ、馴れ合いの雰囲気にならず、誰もが居心地良くいられるのだと思う。

何度来てもゲストにフレッシュな風を感じてもらいたいからと、毎月新しいヘルパーさんに来てもらっているのも特徴のひとつ。長年営業するなかで、きっと困難なことがたくさんあるに違いないのだけれど、みんなこの景色と結ねえの笑顔に会いに「ただいま」と帰ってくる。

その昔、わたしはよく会社の長期休暇を使ってなんとなくの行き先だけ決めて流れてふらふらと旅をしていた。行き先はタイが多く、そこには家族経営のようなゲストハウスがたくさんあった。当時(1990年代後半)「こういうゲストハウスみたいなの日本でやればいいんじゃないか」と言うアイデアを考えつき、さっそく田舎の古民家情報誌の間取り図を見てニヤニヤ想像したりしていた。

ただ、本気で考えるには至らなかった。なぜなら宿屋をやってしまったら自分が旅に出られないんじゃないかという、至極当然の結論。

でも、初めて結家で彼女に会ったとき「あ、私の夢、この人が叶えてくれてる」とふと感じたのだ。わたしも彼女も大阪出身、年齢も近くて。キャラクターは違うけど、勝手に自分の夢を他人に拡大して反映させたみたいなとても不思議な気分になった。この人がわたしの夢をやってくれてるから大丈夫だ、と。何が大丈夫か今考えたらよくわからないのだけれども。

結家には取材も含めて三度訪れている。偶然にもそのタイミングは何かしら彼女に大きな変化が訪れている時期だった。詳しいことは何も知らないけれど、長く宿を続けることは、すなわち自分の人生がどう動いていても常に笑顔でゲストと接し続けるということで、その隠れた努力はいかばかりか、と想像する。

ここで出会ってカップルが出来たとか、結婚したって人たちは何組いるかもうわからないくらい。結家をリスペクトして屋号に「家」をつけたという支部のようなゲストハウスもあると聞いた。

結ねえは自分が「ねえねえ」(沖縄方言でおねえちゃんのこと)から「おばあ」なってもずっとここでおかえりと言い続けたいと話してくれた。これからもずっと続く宿、それをわたしも心から願っている。

……  現在クラウドファンディング実施中 ご支援ください!  ……

ゲストハウスの魅力を全力で伝える!フリーペーパーから書籍へ
旅のあたらしい魅力を伝えるゲストハウスプレス出版プロジェクト

noteで連載しているゲストハウスは、すべて書籍にも掲載!
インタビュー取材やおすすめスポットなどをご紹介しています。

フリペとWEBをつくる人。ゲストハウスと旅にまつわるお話を書いています。ただいま書籍出版に向けて準備中!少額でもサポートしてくださると全わたしが泣いて喜びます。ニシムラへのお仕事依頼(執筆・企画・編集など)はinfo@guesthousepress.jpまでお願いします。