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「生物に世界はどう見えるか」 生き物フロー編

<概要>

ユクスキュルのいう環世界(ウンヴェルト)に基づく動物主観の立場に立ち、動物にとって世界はどう見えるのか、ゾウリムシから植物→動物まで、あらゆる生き物の環世界を紹介した農林水産省元官僚による著作。

<コメント>

著者は元官僚の方ですが、だからこそなのかもしれませんが、細菌・植物からクジラなどの動物まで、あらゆるジャンルの生き物の環世界を体験することができます。

■生き物フロー

これら生き物には、インプットからアウトプットまでの共通の「フロー」があり、本書で紹介された図表がわかりやすかったので私なりに頭の整理のためにインプット情報について以下編集。

スクリーンショット 2022-03-05 9.23.41

全体の考え方としては

インプット(感覚器官)→処理(神経系)→アウトプット(運動器官)

という「生き物フロー」。

自者と他者の区別から始まり「自者の自己保存と自者の種の増幅という生物の性質」に則り、それぞれの生き物が、

①どんな情報を感覚器官によってインプットし
②どうやって神経系で処理し
③どうやって運動器官によってアウトプットするのか

その結果、生物の性質である自己保存=エネルギー獲得、または種の増幅=生殖に繋げていくのか、が見事に整理されています。生き物フローがその環境にマッチした状態が、その生物種の保存に繋がっていることになります。大腸菌の事例で表にすると以下の通り。

スクリーンショット 2022-03-05 9.29.48

この「生き物フロー」を、著者は主体性と呼び、それぞれの環境に適応した種のみが今この世界に繁栄している、というのが生物の世界。

こうやってみると、動物はあらゆる外界の信号を掴んで、生存と繁殖に活用している様子がよくわかります。

可視光線に限ってみると以下ユーチューブの動画が面白い。生き物ごとにその視覚の世界が大きく違うことがよくわかります。

■「生き物フロー」に基づくヒトの特性

生物は、今の地球環境におけるそれぞれの生存環境にマッチした「生き物フロー」によって生存・繁栄しています。

ヒトは主にインプット情報に可視光線を活用することでこの世界を生き抜いています。しかしそれよりも何よりもヒトが際立っているのは、その情報処理能力とアウトプット能力の高さ。

哺乳類の中では重量ベースでは全哺乳類の25%がヒト(残り70%以上は家畜で野生種は3%のみ)で、圧倒的に生存競争を勝ち抜いてきた種。

一般に生き物は、急激な地球環境の変化(例えば地球への隕石衝突による急激な寒冷化)に対しては恐竜のように対応できず、そのまま絶滅に向かいます。この場合、種の多様性の中で、急激な寒冷化にも耐えられる種(この場合は哺乳類など)だけが一部生存し、徐々にその環境に適応した形質をもつ子孫が、また新たな種として生存し続けます。

ところがヒトは、突発的な環境変化にもその知的・社会的能力の高さ(情報処理&アウトプットの高さ)によって、遺伝情報を変えずとも自ら環境を改変させ、生存していく能力があります。

現時点でも、ヒトは世界中のあらゆる自然環境の中で生息している、という点においても哺乳類の中で圧倒的ナンバーワンではないでしょうか?

なので自ら引き起こしたとはいえ、地球温暖化についても、この能力を最大限発揮させて、環境適応する可能性が高いのでは、と楽観的に思っています。

これは、再生可能エネルギー普及・省エネなどの「気温上昇と抑える」などの気温上昇を抑える能力はもちろん、仮に気温上昇してもこれに対応した食糧生産(高温に強い作物の開発)・災害対策(堤防の設置、治水対策など)・感染対策(蚊帳の普及)などが可能。

「人新世」は、ヒトの能力によって環境が改変されてしまう、という地質学的な時代分類。つまりそれは

「ヒトは自分たちが生き残っていくのか、絶滅するのか、自ら選択できる」

時代だということです。

*写真:北海道 ニセコ町(2022年3月)




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