マガジンのカバー画像

思想(哲学と宗教)

182
価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
運営しているクリエイター

#プラトン

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

『形而上学』アリストテレス著 書評

<概要>世界の原理とそのありようをどのような形で理解すればよいか、アリストテレスがプラトン含めた過去の説とその課題も紹介した上で自説を展開。 【上巻】世界の構成要素(質料&形相)とその動的姿(生成と消滅&可能態→現実態)について解説。 【下巻】「神学論(第十二巻)」が主要課題。これに加え「天体の運行」「数」「イデア」などの諸概念に関する、アリストテレスの存在論(目的論に基づく存在論)との関係性などの関しての解説。 <コメント>アリストテレスのもっとも重要な著作と言われて

「政治学」 アリストテレス著 読了

<概要>古代ギリシア時代のあらゆる国制(外国含む)を調査し、分類し、強みと弱みを明確にしたうえで、現実的な「善い国制とは何か」を探ったアリストテレスの代表的古典。 <コメント>いくつかある翻訳書のうち「本書が一番読みやすい」とどこかで聞きつつ残念ながら図書館にもないし電子版もないので、紀伊國屋ウェブストアで4,620円払って購入→読了。 読み終わった最初の感想は、先に読んだ『二コマコス倫理学』同様、アリストテレスの律義な性格がよく出ていて面白いなということ。芸術家肌の師匠

「哲学の誕生ーソクラテスとは何者か」納富信留著 書評

<概要> ソクラテスの生きた時代は、ソクラテス・プラトンだけが突出していたのではなく、同時代に生きる思想家たちの大きな潮流の一環としての位置付けとして再認識すべきとして紹介しつつ、後代における主にソクラテス思想の受容の仕方を紹介した著作。 <コメント> 中盤は考証学みたいで「史実的・文言的に何が正しくて何が誤っているかの検証」は、専門家に任せておけばいい内容で、我々のような素人にとっては正直言ってあまり面白くないのではと思いますが、「無知の知」など、終盤の日本における誤った

プラトン解釈の類型 西研著「哲学は対話する」

プラトン勉強にあたって、西研最新の大作「哲学は対話する」通読中。 西研哲学は、竹田青嗣哲学と近いので「哲学的思考」はじめ、何冊か過去に読んでいます。本書は2019年に出版された最新作で結構なボリュームの大作です。いずれ全体も展開したいと思いますが、まずはプラトン関連について。 本書の第1部で、哲学対話の先例としてソクラテス・プラトンを紹介。プラトン著作は、対話による著作がメインなので、ルーツオブ哲学対話たるプラトンの思想「魂の世話」について扱っています。 その前に著者の

「国家(下)」プラトン著 ー民主制が独裁を生むー

<民主制が僭主独裁制を生むという政治思想> 「国家」は、やはり政治思想が中心テーマ。第八巻で論じられています。 最も理想的な政治体制は、本質を見極める力を持つ卓越者=哲人による独裁政治(最善者支配制)。そして民主制は、もう一つの独裁=僭主独裁制を生む土壌になる、と評価は高くありません。プラトンいわく僭主独裁制は「国家の病として最たるもの」。 独裁者が生まれるときはいつも、そういう民衆指導者を根として芽生えてくるのであって、ほかのところからではないのだ 「そういう民衆指導

「プラトン入門」竹田青嗣著 イデア論について

今回は、イデア論についてです。イデア論はわかりにくいのですが、以下整理してみました。 ■著者によるイデアの定義 イデアとは「本質」のこと。「言葉の本質」を事例にフッサールを引用し ある言葉の本質とは、その概念を定義するような何らかの「実体的」な意味内容ではなくて、むしろ、その言葉によって人々が世界を呼び分けて秩序を作り出している、その仕方だと考えるのがいい(157頁)。 そして、 プラトンが「善のイデア」という概念で差し当たり示しているのは「何が事物の根本原因か」とい

「プラトン入門」竹田青嗣著 ープラトニズムー

<概要> 著者の考えるプラトン思想の本質を、アリストテレス、カント、ヘーゲル、ニーチェ、ハイデガーから現代思想に至る、あらゆる哲学を引用しつつ著者独自の解釈を展開した著作。 <コメント> だいぶ前に読んでいたのですが、プラトン主要著作の通読に至り、改めて著者竹田青嗣によるプラトン解説読みましたが、やはり、その理解の「深さ」と時代をクロスオーバーしつつ引用される哲学者や古今東西の作家(ドストエフスキーなど)の引用と解釈に基づく理解の「広さ」は、驚嘆せざるを得ません。 「単純

「プラトン 理想国の現在」納富信留著 書評

<概要> プラトン著「国家(ポリティア)」というタイトルは正確には「理想国」の意だとし、プラトンの唱える理想国家論が歴史上、内外でどのように受容されてきたのか、そしてその本意は何か、現代に生きる我々にとって、どのように受容すれば良いのか解説・紹介した著作。 <コメント> プラトン専門家の著者、納富信留さんの翻訳したプラトン著作を数冊読んでいたのに加えて、納富さんが1965年生まれで私と同世代なので感性的にも近いのではないかと思い、今回3,080円出して購入して読んでみました

「国家(下)」プラトン著 ー芸術編ー

<芸術について> 第10巻にて「詩人追放論」という位置付けのもと、芸術に対する哲学の優位性が、これでもかとばかりに語られていますが、翻訳者の藤沢命夫氏は、プラトンは芸術を第7巻の「線分の比喩(※)」の「直接的知覚」として位置づけられているのでは、と本書で解説しています。 ※【線分の比喩】 イデアに至る認識のフローを「太陽」を材料に「線」で表現した喩え。 太陽(イデアのこと)に至る認識のフローは、 ①知覚によって(可視界) ⅰ)影をみることからスタートし(間接的知覚) ⅱ)影

「国家(下)」プラトン著 ー善のイデア編ー

<概要> (ポピュリズムが僭主独裁を生むみたいな)現代にも通用する政治思想のエッセンスに加え、価値の原理のルーツともいえる「善のイデア」や「芸術」「教育」に関して解説した壮大なる古典。これが2400年前に書かれたというのですから驚愕するしかない名著。 <コメント> 学習院大学で哲学を専攻していた作家の塩野七生さんが「哲学は古代ギリシア哲学を勉強すればそれで十分」と言っていましたが、本書を読むとその意味がよくわかります。 やっぱり解説書・入門書も大切ですが、原典にもちゃんと

「国家(上)」プラトン著 書評

<概要> 国家に必要なリーダーとリーダーが保持すべき魂とその詳細について対話形式で解説した著作。 <コメント> ■哲人政治について プラトンの政治論で有名なのは、いわゆる「哲人政治」ですが、実際に「国家」を読んでみると、哲人は我々がイメージしている哲学者のことではありません。 当時の哲人(哲学者)の概念は、 どんな学問でも選り好みせずに味わい知ろうとするもの、喜んで学習に赴いて開くことを知らないものは、これこそまさに、我々が哲学者(愛知者)であると主張して然るべきもので

「ゴルギアス」プラトン著 書評

<概要> ソフィスト(ゴルギアス&ポロス)とアテネの政治家(カルリクレス)とソクラテスの対話を通じ、「善」を目的とした生き方であってこその人生であり、「善」を押し進めることによってこその政治であるとのプラトンの理想を伝えた対話編。 <コメント> プラトンの創作ではあるものの、ソクラテスがソフィストの大家と言われたゴルギアスやその弟子のポロスを追い詰めていく姿は見事。 ◼️善く生きる 結局、プラトンがソクラテスを通じて言いたかったことは、何においても「善く生きる」ことが前提

鏡のなかのギリシア哲学 小坂国継著 書評

<概要> ギリシア哲学をタレスなどのソクラテス以前の哲学から、プラトン、アリストテレスを経て、ストア派から新プラトン主義のプロティノスに至るギリシア哲学を西田幾太郎的・東洋的視点から俯瞰した著作。 <コメント> 西田幾太郎研究の第一人者、小坂国継先生によるギリシア哲学概観。オープンカレッジでも小坂先生の講義を受講しているのでギリシア哲学勉強の一環として読んでみました。 ギリシア哲学といえば、ソクラテス・プラトン・アリストテレスになりますが、ソクラテス除く2名に加え、ストア