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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

小学生に「キリスト教って何?」と聞かれて

今、小中学生を対象にした放課後教育みたいなもののボランティアをやってます。 学童保育みたいな感じで、学校が終わった後、ある場所に来てもらってボランティアがマンツーマンで小中学生の宿題や学力ごとの特定の教科書みたいなものを活用した勉強をサポートしつつ、一緒に夕飯のお弁当を食べて過ごす、という取り組みです。 その活動中、直接私に対してではないのですが、とあるボランティアに小学生が「キリスト教って何?」と聞かれて「はて困った」という状況に。たぶんその小学生のキリスト教徒の知り合

ユダヤの風土:『旧約聖書』中沢洽樹訳 読了

<概要> 全訳ではないが、重要な箇所について旧約聖書を現代人にもわかりやすく解説書付きで意訳に近い形で訳された著作。 <コメント> 旧約聖書を読むにあたって、最初のとっかかりとして本書を選択。旧約聖書自体が目茶苦茶長いので、まずは、おおよそのイメージをとらえるためにはよかったかな、と思います。 いずれにしても旧約聖書を忠実に守ったら現代ユダヤ教徒・キリスト教徒は生きられないでしょうから、当然イスラーム教のコーラン同様、現代宗教指導者等による現代的な解釈が必要だと改めて実感

ユダヤ社会とはどんな社会なのか?『ユダヤ人とユダヤ教』市川裕著 読了

<概要>ユダヤ人とユダヤ教について「歴史」「信仰」「学問」「社会」の四つの切り口からその概要を紹介したユダヤ思想の専門家による新書。 <コメント>本書を読むと、ユダヤに関する基礎知識が網羅的に把握できるので、ユダヤ入門としては中々の好著ではないかと思います。 歴史に関しては、以前ここで紹介した『物語ユダヤ人の歴史』とほぼ相違なかったので、ある程度、ユダヤ人の歴史は、専門家に共有されているように思います。 以下、いつも通り印象的内容を整理。 ⒈生活と密接不可分のユダヤ教

ユダヤ人とユダヤ教の関係とは?

以下著作『物語ユダヤ人の歴史』のほか、 『ユダヤ人の起源(シュロモー・サンド著)』『ローマ人の物語(塩野七生著』も読むと「ユダヤ人=ユダヤ教ではない」ということがどんどん明らかになってきます(そうは言っても、もちろんユダヤ教徒の大半はユダヤ人ですが、ユダヤ教徒でないユダヤ人は多数)。 それでは「ユダヤ人とは誰か」と問えば『物語ユダヤ人の物語』著者レイモンド・シェイドリンによれば、それは厳密に規定できるはずもなく「ユダヤの歴史を共有する人たち」という程度でいいのではないか、

『学校ってなんだ!』日本の教育はなぜ息苦しいのか 読了

<概要>「自ら考え行動できる自律型の人間を育てること」が教育の目的だ、と称する工藤勇一に対して、鴻上氏が対談というよりもインタビュー形式っぽく、その教育の真髄を紐解く著作。 <コメント>クーリエ・ジャポン「今月の本棚」で平原依文という方が推薦していて、わたし的には鴻上尚史が絡んだ著作だったので、アフリカ勉強の合間の気休めの一環で読んでみました。 本書を読んでの「素朴な疑問」は、子供の成績がそこそこ良い場合は「名の知れた有名大学に行かせたい」という親子が今でも多いように感じ

[経済的自立マニュアル:2】自由な私たちの「自由の行き先」

経済的自立をするにあたっての最初の問い 「自分が本当にやりたいことって何だろう」 については、4年前に哲学的観点から考えてみたことがありますので、その焼き直しとして以下、紹介します(以下4年前のnote)。 私たち日本や欧米などの先進国の国民は、国際政治でよく使用される概念「普遍的価値(※)」を共通の価値観として共有しています。 はてさて自由な私たち個人の「自由の行き先」について、哲学者竹田青嗣の「人間の未来ーヘーゲル哲学と現代資本主義」をベースに考えてみました。

「京都の風土」天龍寺・苔寺の禅僧:夢窓疎石の思想

夢窓疎石著『夢中問答』の解説本『夢中問答入門』を手掛かりに夢窓疎石の思想を探ります。 <『夢中問答入門』の概要>京都の天龍寺や西芳寺(苔寺)などの庭を作庭した禅の名僧「夢窓疎石(1275-1351)」の『夢中問答』の神髄について、分かりやすく解説した臨済宗の住職にして宗教学者「西村恵信」の講演録。 <コメント>『夢中問答』とは、京都嵐山にある臨済宗の禅寺「天龍寺」にて臨済宗の禅僧、夢想疎石(以下、著者表現の夢窓国師)が、室町幕府の初代将軍足利尊氏(1305-1358)の弟

『西国巡礼の寺』五来重著  読了

<概要>西国三十三所巡礼の主要な霊場を紹介しつつ、著者五来重の宗教民俗学的視点からの霊場への独自かつ新たな解釈を見出した著作。 <コメント>10月に京都府をフィールドワークするにあたり、お寺に関する情報を深掘りするため、敬愛する宗教民俗学者、五来重による本書『西国三十三所の寺」を通読。  ▪️西国三十三所巡礼とは上のホームページによれば、718年、奈良にある長谷寺の開山徳道上人が仮死状態の時に、閻魔大王が現れて世の中の悩み苦しむ人々を救うために三十三の観音霊場を開き、観音

『コーラン』を読む:井筒俊彦著   読了

<概要>イスラム教の聖典『コーラン』を読むことで「イスラーム教の本質」と「言語の本質」の双方を私たちに知らしめようとした言語哲学者「井筒俊彦」の講演録。 <コメント>アラビア哲学専門家にして早稲田大学准教授小村優太先生の「イスラーム思想入門」の講義で紹介されていたので、さっそく読んでみました。小村先生によると本書は『コーラン』を題材にした井筒思想、ということだそう。 以下長くなりますができるだけ、今の私たちのコトバに翻訳して紹介したいと思います。 ⒈『コーラン』の成立

『コーランには本当は何が書かれていたか?』 書評

<概要>フェミニストで啓蒙主義の価値観をもつアメリカ人のジャーナリスト、カーラ・パワーと、インド出身の保守的イスラム学者アクラムの交流を通じて、イスラム教の本質について迫った感動せざるを得ない著作。 <コメント>本書を読むと、アッラー(神)とアッラーの預言者だったムハンマドの意図するところを、恐れ多くも本質的な形で理解できたような感じもします。 というのも本書に登場するインド出身のイギリス在住イスラム学者、モハンマド・アクラム・ナドウィー師は、本来の意味でのイスラム原理

コーランをそのまま実践するとISになる?『イスラム2.0』飯山陽著 私評

<概要>ネットやSNSが普及したことで、イスラム教の啓典が直接信徒が触れるようになったことでイスラム原理主義が増大していることを「イスラム2.0」と表現。 この結果「コーランをそのまま読めばISになる」とした、イスラム教過激論を紹介。 著者の一貫した主張には原理主義的な、きな臭いニオイを感じますが、インドネシア、エジプトなど各国の宗教事情の解説や最後の「イスラム教と共存するために」などは興味深い内容となっています。 <コメント>これまでずっとイスラム関連の著作、コーラ

「アリストテレス」ゆかりの地を巡る

アリストテレスは現ギリシア領スタゲイア出身の人ですが、アテネのアカデメイアを出て以降、彼がアレクサンダー大王の家庭教師になるまで(BC347年−343年)、エーゲ海沿岸の古代都市アッソス→レスボス島ミュティリネに滞在していました。 アッソスで彼は『政治学』『ニコマコス倫理学』を構想し、ミュティリネで『自然学』を著したと言われています。 ▪️聖地「アッソス」聖地「アッソス」は、レンタカーでないといけない場所にありますが、別途紹介した哲学発祥の地「ミレトス」とは違って、地元向

哲学発祥の地「ミレトス」に行ってきました

今回のトルコ・ギリシア訪問の目的の一つは、トルコ、イオニア地方の古代都市ミレトス。 哲学はどうやって生まれたのか?その生まれた、まさにその場所に行ってみたかったのです。その場所はトルコ、西アナトリア地方の古代都市「ミレトス」。 ミレトスは、そこそこ遺跡も残っているものの、観光ツアーで行くような場所ではないし、 バスなど公共交通機関もないような辺鄙な場所なので、空港でレンタカー(フィアット クロス)借りて行ってきたのです。 ▪️なぜ哲学は誕生したのか?古代ギリシアでは、