マガジンのカバー画像

カレー

8
三度の飯よりカレーライス好き!な筆者が、カレーについて語りたい用
運営しているクリエイター

#小説

【カレー小説】開演 ~阪神甲子園球場の名物カレー~

【カレー小説】開演 ~阪神甲子園球場の名物カレー~

 正午前に怪しいと思っていた雲は青色を見せる隙を作らず、この時間に来て一気に周辺の明度を下げたと思えば、大粒の雨を降らせた。
 雨は地面で勢いよく跳ね、窪みに集った水滴はたちまち大きな水たまりとなって更なるしぶきを上げている。視界もこの雨量で先ほどまで見えていた数十メートル先も滲み霞んで見える。
 広場で屯していた人々は皆一斉に雨を避ける場所を求め走る。その飛沫が誰かにかかるという事はお構いなし。

もっとみる
【カレー小説】ヱンブレイス・キティ

【カレー小説】ヱンブレイス・キティ

猫を拾った
 アパートの正面入口に差し掛かる塀の隅に、ひっそりと置かれた箱。そこにそいつは入って小さくなっていた。

 何かの間違いか、はたまたどっきりかと思い辺りを見回したが、人の気配はない。この時間だ、大抵の人は眠っている。
 昼間の暑さの名残りが地面から立ち昇り、湿気も手伝って俺の首筋に張り付く汗がじっとりと不快指数を上げる。
 声をかけてみたものの、猫は俯いたままだった。
 死んで

もっとみる
【カレー小説】さんじのあなた

【カレー小説】さんじのあなた

 クーラーを効かせても、汗はかくものなんだな。
 胸元に溜まる湿気を感じながら、俺はそう思った。
 同じように抱き合っている女も汗ばんではいるが、先程から両腕を離さないでいる。
 遮光カーテンの裾下から強い光が白く漏れていることから、今が昼間だと確認できた。
 俺の胸元に顔をうずめた女の髪から、ほのかにシャンプーの香りがする。普段、俺の使っているような安っぽいそれとはまったく違う匂いだ。
 女の名

もっとみる