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【2023年のSaaSの価格戦略についてのレポートのシェア】

SaaSの価格戦略についての記事・レポートを見つけたので、自分なりにインプットをまとめていた結果、いつの間にか超大作に。もったいないからシェアをさせていただきます。

参照「The state of B2B SaaS pricing in 2023」


2023年のSaaSの収益状況はどのようになっているのか?

下記のデータを見ると、成長性という観点で2022年から陰りが見えていることが分かる。これらは解約率の影響が大きく、厳しい市況感になっている。

B2B SaaS企業のMRR CAGRの集計。
各データポイントは、各月のMRR指数の成長率を年率換算したもの
B2B SaaS企業のサブスクリプション解約率。
各データポイントは、季節性を排除した7日間の成長率。

SLG企業とPLG企業の収益指標の重視度合いの違いはあるのか?

SGL企業の方がARPUやARRを重要視する傾向が強いが、PLG企業はユニットエコノミクス(LTV/CAC)を重視する傾向が強いことが分かる。
これは、PLG企業はセールスを挟まない効率的な販売活動をし、ターゲットも中堅中小規模であるため、マーケティングの発想で指標を見ているが、SLG企業はより大手を狙っていき1社あたりからいかに単価を上げるかを気にするためこのようになっていると推察できる。

B2B販売モデル別の主な成功指標

適切なプライシング変更の頻度は?

レポートによると、プライシング・リーダーの94%以上が、少なくとも年に1回はプライシングとパッケージングを更新しており、40%近くが四半期に1回という頻度で更新している。厳しい経済状況にもかかわらず、SaaS リーダーは価格設定とパッケージング戦略を継続的に調整しています。2022年9月以降、調査対象者の98%が価格設定やパッケージの更新を行っている。そのうち43.8%は両方の更新を行っている。

左:プライシングの変更頻度
右:2022年の9月からの更新内容

価格設定のリサーチ手法としてよく使われるものは何か?

プライシングリサーチのインプットとして最も一般的なのは競合分析(42.5%)で、次いで現在の顧客からのフィードバック(33.7%)となっている。とはいえ、顧客からのFBについては、バイアスがかかっているためWTPが低く設定されている可能性が高いため、現在の顧客だけでなく、顧客ではないバイヤーのデータも含めた市場調査が、最も客観的で、価格戦略に役立つ。※コスト面や時間的観点で後回しにしている企業が多い。

価格調査プロセスで一般的な調査手法

価格感応度分析など、少し専門的な分析手法などを用いるとユーザーの感覚値としての支払い意向が客観的にわかる。

価格戦略の3つの方向性とは?

一般的な調査方法に見られるように、競合他社を参考にした価格設定が一般的であり、次に価値ベースのプライシング、コストプラス法がそれに続く。

用いられる価格戦略について

価格設定の方法は、いずれかの機会でまとめたいが、一般的に知られているものだと「コストプラス法」「損益分岐点を用いた価格設定」「コンジョイント分析による価格設定」「価格感応度による価格設定」などがある。

Go-to-Marketモデル別に価格戦略は異なるのか?

これはかなり面白いデータ。PLGによるほど、価値ベースのプライシングになり、SLGによるほど競合を参考にした価格設定が多くなる。

Go-to-Marketモデル別に最も一般的な価格戦略

これはおそらくセールスが重要となるような商材・価格のものは必ず比較をされ、その中で購入意思決定が進むからではないかと思われる。

事業規模によってプライシング戦略の違いがあるのか?

年間売上高別に最も一般的な価格戦略を見ると、成熟した企業ほどバリューベースの価格設定と製品主導の戦術の両方にシフトしていることがわかる。
大企業になるほど価値ベースのプライシングになっているが、それは価値を見極めるために適切な調査をするためのリソースを持っているからである。

企業規模別の価格戦略

それぞれの価格戦略はどのような違いがあるのか?

<競合価格>

競合価格を参考にした価格設定方法であり、特に市場に参入するタイミングであれば浸透しやすい価格であると考えられる。ただし、競合を気にしすぎることで、適切な本来支払ってもらえる価値・価格よりも少なすぎる額を提示してしまうかもしれない。またこの手法では顧客のことを全く見ていないことも問題である。
これらが起きると、製品の差別化の欠如につながりうる。自社と競合他社は互換性があり、製品をコモディティ化してしまう危険性がある。自社製品のユニークな価値を明確にし、特定のユーザー・セグメントに対してより良いポジショニングをとることができる代わりに、自社製品が競合他社とどのように価格が違うかを明確にすることしかできない。

<コストプラス法>

自社のかかっているコストに対してマージンを乗っける一般的な手法ではあるが、これも競合価格を参考にしたプライシングと同様、顧客の意見がなく、結果として全く売れないか売れたとして本来得うる利益より少なくなることが多い。

<価値ベースプライシング>

顧客の適切なWTPをベースに、世の中での適切な価格を測ることができるため非常に有効であるが、適切に実施するには時間とコストがかかる。
また、価格感応度測定や特徴分析では、製品の適切な価格設定、パッケージング、ポジショニングの概算しか得られない。

上記も踏まえると、基本的には価値ベースでのプライシングをする方が賢明である。私も過去PJでベンチャー企業で、競合・自社(製造原価)・市場(顧客・価格感応度等)のプライシングを分析し、最適な利益を上げることができた。

導入価格の戦略:フリーミアム・フリートライアル・リバーストライアル、とは?

それぞれの違いは何か?

  • フリーミアム:基本的な製品やサービスの機能については期間無制限で無料版を提供し、ユーザーが一定の利用限度額に達した時点で追加機能を課金する。

  • フリートライアル:期間限定で自社製品のバージョンへのアクセスを提供し、その後、顧客は製品の支払いを開始するか、またはキャンセルする。

  • リバーストライアル:新規ユーザーは、まず有料機能の期間限定トライアルを行い、その後、そのティアを購入するか、フリーミアムプランにダウングレードすることができます。簡単に言えば、フリーミアムと無料トライアルの組み合わせだ。

それぞれがどの程度一般的に用いられているのか?

現状では、多くはフリーミアムモデルが用いられている。

最も用いられている導入価格

PLG・SLGなどによって異なるのか?

各セグメント別での違いは一定数存在する。PLG、SLGの両極がリバーストライアルを導入している点は面白い。

市場参入モデル別で一般的な無料モデル

また、セールスアシスト(営業担当者が収益の大部分を牽引するが、セルフサービスによる製品によって牽引される部分もある)が主流の企業は無料版から、何かしらのシグナルを見出して有料版へ提案する流れをとっているようである。

パッケージング戦略はどのようになっているのか?

一般的なパッケージング戦略は?

一般的なパッケージング戦略は下記の通り、松竹梅、という形式をとっている企業が多い。過去10年にわたって調査をしているらしいが、B2Bリーダーが使用するパッケージング戦略は、グッド・ベター・ベストのパッケージングモデルが主流であり続けているとのことである。

一般的なパッケージ戦略

おそらくは購入側の認知や理解としてもわかりやすく、事業者としても整理をしやすいことから用いられているのではないかと思われる。

契約プラン数はどのようになっているのか?

3つ~4つのプランを持っている企業が一般的に多い。

契約プラン数

契約プラン数は大規模な事業者になるほど多くなる

事業規模別の契約プラン数

ARRが1000万ドルを超えたらた商品化を進める必要があるが、1億ドルを超えるとさらに重要度が高くなる。


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