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コロナウイルス連作短編

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#コロナウイルス連作短編

コロナウイルス連作短編その219「誰なんだよ」

「ご飯できたよ!」  王木美鈴がそう言ってから、娘の王木めぐが自身の部屋から出てきたのは…

コロナウイルス連作短編その217「広背筋、大円筋や僧帽筋など」

 西東薫は,今バガンド・ガジイェフという男に自分の首筋が荒々しく貪られている状況が夢のよ…

コロナウイルス連作短編その218「素朴な疑問」

「“黒人”って言葉を使ってるとき、そいつ自分のことを“黄人”とか言ってないでしょ。日本人…

コロナウイルス連作短編その216「どこか、より安心できる場所」

とうとうですよ 湖東優 とうとう 妻の湖東釈 妹の騎子 彼女のパートナー富士見野わかば 彼らに…

コロナウイルス連作短編その215「Uatași ua Cristian desu」

 そうして梅時クリスがボールをシュートしようとする瞬間,やはり現れるのは松崎セイドゥだっ…

コロナウイルス連作短編その213「きみはひとり」

改札で きみは彼の右手を握る その指は意外なまでにほそいんだけども 力はとにかくえげつなく…

コロナウイルス連作短編その214「彼女は男が好きだから」

 それから三島新後は母である三島安乃から新しくできた恋人を紹介されるのだが、それが男性であったことに凄まじく驚かされた。  新後は安乃と鈴酒おもという2人の母親に育てられてきた。彼女たちは関係性の破綻の後、新後が中学2年生であったおととしに別れたのだが、新後の誕生以前も含めるなら20年連れ添っていた。新後はその様を最も近くで見てきたが、ゆえに自然と安乃はレズビアンであると思ってきた。だが飯島秀男という男性を恋人として連れてきたということは、その認識に修正を加える必要があると思

コロナウイルス連作短編その212「狐の嫁入り」

 晴れたのだが,雨は未だに降り続けている.  狐の嫁入りだな,政銅一木はこう思う.今年,8…

コロナウイルス連作短編その211「Solarisの由来」

 舞花あさぎはLINEで友人の芳山笹と話している。外からは豪雨の音が聞こえてくる、鼓膜を無数…

コロナウイルス連作短編その210「明日もまた生きていく」

 真南茶織は自宅のトイレに籠り、ただ壁を見つめている。  数年この部屋に住んでいるが、こ…

コロナウイルス連作短編その208「無償の愛」

 植木口津は居酒屋で会ったばかりの男に自分の考えを話し続けていた. 「僕の恋人が選挙行け…

コロナウイルス連作短編その207「桃色、黒色、黄色」

「今日もまっピンクの服着てんな!」  待ち合わせ場所にやってきた川田神牙公のド派手に過ぎ…

コロナウイルス連作短編その206「寛容 読み方:かんよう」

 犬束尾高は息子の竜興,そして彼の同性の恋人である青井幹生と出前の寿司を食している.尾高…

コロナウイルス連作短編その204「日本人離れしてる」

 箱柳彩果は駅で友人を待っていた.地上階の改札,その傍らに立ちながらSpotifyで音楽を聴いている.Skyというロックバンドの曲だ.60-70年代に活動していた短命なバンドで,アルバムは2枚しか残していない.だが実際に聞いてみると,当時の夢見がちな若者たちの地に足ついてなさをそのまま反映したかのような爽やかな響きはすこぶる印象に残る.  特に1stアルバム“Don't Hold Back”収録の“Make it in Time”という曲が彼女のお気に入りだった.朝の海岸線に