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コロナウイルス連作短編

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#小説

コロナウイルス連作短編その223「反復横飛びの時代」

 洲崎二色は家族の朝食を用意したあと,洗面所へと向かい,再び顔を洗う.  最近,秋という…

コロナウイルス連作短編その222「だけど、生きていかなくちゃいけない」

 玄関の扉を閉めた瞬間,眞殿和凜はそのまま床へと倒れこんだ.  だが頬の皮膚に刺さった床…

コロナウイルス連作短編その221「さぞ鮮やかな血潮」

 実久塁がショッピングモールを歩いていた時,ある人間を視覚的に認識した.  見てくれが雑…

コロナウイルス連作短編その220「Bucharest Decadence」

 梅時マダリナは“Tokyo Decandence”という本を読んでいる.表紙には猫耳のついた仮面に,黒…

コロナウイルス連作短編その219「誰なんだよ」

「ご飯できたよ!」  王木美鈴がそう言ってから、娘の王木めぐが自身の部屋から出てきたのは…

コロナウイルス連作短編その218「素朴な疑問」

「“黒人”って言葉を使ってるとき、そいつ自分のことを“黄人”とか言ってないでしょ。日本人…

コロナウイルス連作短編その217「広背筋、大円筋や僧帽筋など」

 西東薫は,今バガンド・ガジイェフという男に自分の首筋が荒々しく貪られている状況が夢のように思えた.こんなにも筋骨隆々で,オーバーヒートする巨大な精密機械さながらに息遣いも野太く激しく,輪郭を取りまく髭も爆ぜているかのごとく鬱蒼たるこの同性愛者の男に求められているという事実は,自分が男であることを何よりも雄弁に証明してくれているように思えたからだ.  細胞を1つ抹殺するかのような注射の鮮烈な痛み.  背中にできた大量のニキビへとセナキュアを噴塗した時の触感.  骨伝導によって

コロナウイルス連作短編その216「どこか、より安心できる場所」

とうとうですよ 湖東優 とうとう 妻の湖東釈 妹の騎子 彼女のパートナー富士見野わかば 彼らに…

コロナウイルス連作短編その215「Uatași ua Cristian desu」

 そうして梅時クリスがボールをシュートしようとする瞬間,やはり現れるのは松崎セイドゥだっ…

コロナウイルス連作短編その214「彼女は男が好きだから」

 それから三島新後は母である三島安乃から新しくできた恋人を紹介されるのだが、それが男性で…

コロナウイルス連作短編その213「きみはひとり」

改札で きみは彼の右手を握る その指は意外なまでにほそいんだけども 力はとにかくえげつなく…

コロナウイルス連作短編その212「狐の嫁入り」

 晴れたのだが,雨は未だに降り続けている.  狐の嫁入りだな,政銅一木はこう思う.今年,8…

コロナウイルス連作短編その211「Solarisの由来」

 舞花あさぎはLINEで友人の芳山笹と話している。外からは豪雨の音が聞こえてくる、鼓膜を無数…

コロナウイルス連作短編その210「明日もまた生きていく」

 真南茶織は自宅のトイレに籠り、ただ壁を見つめている。  数年この部屋に住んでいるが、この黄ばんだ壁を真剣に見据えるたび、シミでできた不気味な顔面が新しく見つかる。今日は両目と口を構成する3つの茶色いシミが、過剰なまでに縦に伸びている。  気味が悪い。そして誰かに似ている。だが分からない。  今日は厭な1日だ。あのLGBT法案が国会で可決されてしまった。修正前の法案ならまだしも現法案が通ってしまった今、予想通りLGBT当事者がこの流れに怒り、より密接な団結が行われようとしてい