コロナウイルス連作短編その217「広背筋、大円筋や僧帽筋など」
西東薫は,今バガンド・ガジイェフという男に自分の首筋が荒々しく貪られている状況が夢のように思えた.こんなにも筋骨隆々で,オーバーヒートする巨大な精密機械さながらに息遣いも野太く激しく,輪郭を取りまく髭も爆ぜているかのごとく鬱蒼たるこの同性愛者の男に求められているという事実は,自分が男であることを何よりも雄弁に証明してくれているように思えたからだ.
細胞を1つ抹殺するかのような注射の鮮烈な痛み.
背中にできた大量のニキビへとセナキュアを噴塗した時の触感.
骨伝導によって