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コロナウイルス連作短編

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2020年12月の記事一覧

コロナウイルス連作短編その57「返事してよ」

 12月31日、朝8時からルクサンドラ・オルテアヌは仲間とともに酒を鯨飲している。1月1日の暁…

コロナウイルス連作短編その56「若い男」

 コロナビールを飲みながら、真菅大地はTinderを眺めていた。左に右にスワイプする中で、東京…

コロナウイルス連作短編その55「埋める」

 僕は臀部を襲う壮絶な痛みに苦しんでいた。皮膚の下には膿が溜まっており、それが排泄をする…

コロナウイルス連作短編その54「12月23日」

 ただぼくは新橋を歩いていただけなんだよ、陣目条は芳我鋼機にそう話す、ただ新橋を歩いてい…

コロナウイルス連作短編その53「コロナのバカ」

 栗栖波留がショッピングモールの食品売り場を歩いていると、不安げに辺りを見渡す女性を見つ…

コロナウイルス連作短編その52「2年と5ヶ月後」

「おい、ちょっと待てって!」  坂崎大和は息子である坂崎日かりにそうさけぶのだけど、かれ…

コロナウイルス連作短編その51「健康で文化的な最低限度の生活」

“こんなにも露骨に差別的な暴言を、しかも社長が吐けるなんて思いもしなかった。もうこの会社の製品は絶対に買わない” “昔は良質の海外文学の翻訳とか出して、いい会社だったんだけどなあ” “ちょっとこの反応の大きさに驚いてしまう。以前からこんなテレビ局を作って差別的な番組を垂れ流していたじゃないですか。皆、危機感が足りてないのでは?” “最低、吐き気催す”  Twitterを流れるDHCへの批判を読みながら、東岳三城は昼食のラーメンを食べる。彼は鍋でインスタントラーメンを茹でてか

コロナウイルス連作短編その50「僕たちの絆」

 僕は一人の男を部屋に招いた。彼は大学時代からの友人で、しかしここ数年話したことはなかっ…