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逃げ恥の沼田に学ぶ「相手を動かす」技術

「逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!」が昨日放送された。みくりとひらまさの子育てを中心に話は展開されていくが、内容は大人の教育ドラマそのものだった。

・子育ては夫婦でするものであり、どちらか一方が主で他方はサポートなどという構造はNGである。父親に父親らしさを求める層は存在するが、大黒柱というものは存在しない(これは母親に対する論も同じだろう)。
・子供の名前を考える際には、その子が将来どちらの性別として生きていくかは不明なため、男女どちらでも通用する名前を検討する
・子育てにおいてはゴールは存在しないのだから、理想のXXなどというものを掲げずにプロセスを楽しんだ方がよい


など他にも多数のエピソードで現代の子育てや生き方に触れられているので、ご覧になっていない方はTverで観てみていただきたい。

今回、タイトルに記載した沼田のエピソードに触れたい。
内容としては、社の制度として男性の育休は認められており、ひらまさが2ヶ月育休をとろうとするも、プロジェクトリーダー(灰原)がそれに難色を示すのだが、そこで発揮した沼田のふるまいが非常にいいなと思った。

沼田「ねぇ灰原さんはなんで怒ってるの?」
灰原「いや怒ってないですよ」
沼田「じゃあもやもやしてる?もやりてぃ?」
灰原「まぁ…」
沼田「そのもやりてぃの原因は?1)長く休みをとるから2)男が育休を取るから…」
灰原「3)男が長く育休をとるから」
沼田「それさ…育休だから嫌なの?他の理由だったら?」
灰原「他?」
沼田「例えば、突然の事故、家族の病気介護、自分自身の体調が崩れる場合もあるよね?育休でも他の理由でも同じ。いつ誰が長い休みをとるかなんて分からない。働いているのは人間なんだからそういうことでしょ?その時何が大事かっていったら、誰が休んでも仕事は回る、帰ってこられる環境を普段からつくっておくこと、それが職場におけるリスク管理」
日野「リスク管理って誰の仕事?」
風見「プロジェクトリーダーじゃないですか?」
日野「あっ灰原さんか」
沼田「日野くん、灰原さんはね、それができると見込まれているからプロジェクトリーダーなのだよ。だよね~?」(沼田にふる)
(プロジェクト関係者に見つめられる灰原)
灰原「もちろんです!」
沼田「じゃあこの話は解決」(間髪入れず)

仕事をしていると何者かが難色を示して、実行上障壁となるというケースはよくあるだろう。ここでの沼田の凄さは5つある。これは通常の実務においても割と有効な手であるので紹介したい。

1)不満そうな人物に対して極端にふって、怒っているのか?と聞き、相手に怒っていないとまず言わせる。
通常怒ってるの?と聞いて怒ってると答える社会人はまずいない。怒るということが幼稚なことであるということは大体の人であれば知っている。この問いで怒りモードへ移行させることを序盤で挫いている。怒りモードへ移行させるとそれだけで非生産的な時間に移行するのは語るに及ばないだろう。

2)不満をもやもやしていると表現して相手の本音を引き出しやすい状況を作る。その上で選択肢を提示して回答を更に引き出す。
これは1)と逆の技術で、明確に相手が言いづらいことは最初の問いかけはオブラートな問いかけではじめ、クローズドクエスチョンにしていくことで本音に近い部分をとりにいっている。

3)その回答は別ケースでも同様の判断となるか?と問いかけながら相手の目線でも納得しうるケースや大きな枠を提示し、自己の判断を内省させる
ここのやり方は非常に重要で、相手も思わず納得してしまうようなケースを持ち出して説明を行うこと。育児休暇が当然の権利であるということを主張してもこの灰原というプロジェクトリーダーは現状独身であり経験も想像もできておらず、まったく刺さっていない。であれば、灰原自身も陥る可能性がある交通事故や体調不良などで説明を行っていくという流れである。否定できまい。

※ちなみに2)を飛ばして3)に移行するのはおすすめしない。それでは相手にただ反対!と表するに近く、相手の考えを受け取る瞬間がないからだ。

4)XXさんはそれができると見込まれているのだと相手のプライドをへし折らずに相手を自分の動かしたい方向に動かす
ここに沼田の凄さが一番現れている。通常、灰原へはできない奴/嫌な奴という烙印を押したくなるところではある。実際、他多くの同僚が徒党を組んで灰原のいないところでダメ出しを開始する画があった。しかしこの沼田という男は、「灰原はできるやつだからこのポジションを担っているのだ。(できませんなんてまさか言わないよね?)」と灰原に迫っているのだ。しかもプロジェクトメンバーが多くいる場所でだ。こうなると灰原は、もうできません、育休認めません発言などできるわけがない。それは自分が無能であると言ってしまう行為と等しいからだ。
※沼田がどうか不明だが、日野と風見も、誰の仕事だっけ?それ灰原の仕事やん、灰原ちゃんと仕事してる?できないってこと?と言外に迫っているのだが、これが沼田の差し金というケースはたまに見かける光景である。

5)問題が解決したと明確に言い切り、次の話題へ即座に移る
4)で終わった風にせず、完了しているということを全員の前でクリアに言い切り、証人としている。また、灰原がもう蒸し返せないように即座に話題を切り替えている。ここで灰原に「でも…」「とはいえ…」「そもそも…」などという反意を言う時間を与えていないのだ。
ここでゆっくりしてしまうと結論がほぼ出かけていたのに、再度時間が巻き戻ってまた同じ議論を繰り返すという光景は一度は見たことないだろうか。だが、それを沼田は許さない。

こうした沼田のような交渉上手というか一枚上手おじさんはたまに出くわすが、もし社内外で沼田を見つけた際は一挙手一投足を見逃さずどう振る舞っているかを観察すると面白いと思われるので、おすすめしたい。

全然本論とは関係ないですが、沼田と灰原って旧知の知人とはいえ、発注側と業務委託の関係でしたよね?笑 たまにこういう灰原のようなメンバーをコーチングしてくれる業務委託の方いらっしゃるが本当に頭があがらない。ありがとうございます。

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