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✴︎City Farming Wife✴︎気がつけばオーガニックライフ

嫁のお話は農家の衣食住から始めたいと思います。
第一号記事となる今日は《食》から。

今や巷に溢れる"オーガニック"
おしゃれでヘルシー、日々を大事に暮らしてる感じが"漂っている"!モデルさんのようなライフスタイル、意識高い私になれそう。だけど、「あら?お値段張るのね…うーん、じゃあ"普通"のでいいか。」有機野菜を扱う専門スーパーを後にし、お安い野菜を買いに行く。

結婚以前の私はこんなでした。
「”普通”って何なのよ?」裏を返して「オーガニックって何?」も分からず。
結婚後、そんな私が贅沢ながら夫の育てる"オーガニック"な野菜を食すように。
今日は無意識の内に始まったオーガニックライフについて、お話しします。

今日の夕飯何にしよう?

仕事を終えて、夕飯の買い出しに夫とスーパーへ。
私:「ラタトゥイユでも作ろっかぁ。沢山作ったら保存できるしね。じゃあトマト、ナス、ズッキーニ…と」
夫:「5月に出てるトマトなんてハウスだろ。綺麗すぎ、こりゃ農薬使ってるな。このナスも大きすぎるな。肥料たくさん入ってんだなぁ。ズッキーニ?どこ産?いやいや、まだ時期じゃない。」

最初はいいんです。なるほど、そうかぁと勉強になる。しかーし!!一緒に野菜コーナーを回っていると何も買えないじゃないの!もちろん夫が作ってる野菜は買いません。でも今日のおかずの材料は今畑にないの!スーパーにはあるの!
この頃、農法や有機食品についてかなり勉強していた夫は、肉や魚まで育て方や産地、鮮度など拘りが強く、ウンチク多め。レジに行く頃には疲弊し、イラつく私。
だって帰りの新幹線で考えた献立は全てナシになっちゃったんだもん…。
こうして鍛えられていく私。ラタトゥイユは夏に張り切って作るメニューに。

嫁的オーガニックの解釈

「そもそもオーガニックって?」
これは素人の私が回答するには大変に奥深く、難儀な問いです。広義には何となく理解するものの、実は細かい定義・解釈が沢山あります。
夫の作る野菜は農薬不使用、肥料は使わない事が多いけど、土壌や作物によって山や海のモノを使います。分類としてはオーガニック、有機栽培、自然栽培に入りますが、正式な国の認証(有機JAS)を受けている訳ではないので厳密には「オーガニック」ではないのです。
とすると、我が家の野菜に付ける枕詞は何になるの?
「農薬・化学肥料を使わずに育てた野菜」と説明することはできそう。もうこれだけでややこしや〜な世界な訳ですが、難しいことは抜きにして、「農薬・化学肥料を使わずに育てた野菜」の私の感想はとてもシンプル。
「結果的に一番美味しい」

繰り返しになりますが、オーガニック、有機野菜の専門的な定義については無知の私が語るのは誤解を生むので、ここでは避けますが、ナチュラルな印象とは裏腹に今やビジネスの匂いすらするその言葉の複雑さを実感したエピソードがあります。
数年前、サンフランシスコのFarmer's Marketを視察した農家ひよっこの私達。
いかにもベテラン農家なおばさまに彼女の野菜を指して"Is this organic?"と質問。
冷たく、迷惑そうな表情で放たれた答えは、 "NO SPRAY!"  
日本以上にオーガニックが生活にもビジネスにも根ざし、溢れるアメリカ。
オーガニックと言えど、大量の堆肥を施しているもの、認定された農薬を大量に使用しているものなども多いのでしょう。彼女はそんな"オーガニック"のカテゴリーに自分の野菜を入れて一緒にして欲しくなかったのでしょうね。「何も撒いてないわよ」ピシャリと一言返してきたのでした。

日本でも同様です。
有機認定された農薬の使用は認められているし、有機肥料なら使用量は定められていないし、ラベルの情報だけでは分からない野菜のバックグラウンドが山ほどあるのです。だけど、ひとまとめに「オーガニック」と呼んじゃう。肥料で使われる動物性堆肥のその動物が何を食べているかまで気にする方がいらっしゃいます。オーガニックと説明されたって、本当に気になる方からすれば、聞かないと真相は分からないじゃない?ということなんですね。
そんな複雑なオーガニックの世界があることを知りました。

さて、我が家の話に戻ります。
作った人は目の前にいる。どうやって作ったかも分かる。究極の安全保証のもと、野菜を戴けるありがたい毎日。夫は畑によっては肥料・堆肥も使いません。それが出来る一つの理由として、長きに亘って耕作放棄地だった畑を利用していることがあるのだそう。そこには長年農薬や肥料が散布されず、除草剤なども使用しないので草が自然に生い茂り、土が本来の循環で醸成されていた。つまり、微生物や土の中の栄養素が既にいい状態に出来上がっていて、肥料の力に頼ることなく、良い土壌の力で野菜が育つ、ということ。
手前味噌ですが、この畑で作った野菜は本当に美味しい!包丁を入れた時の感触、食感、味、香り、全てが違う。素人の私にも分かります。それに慣れた私の舌は慣行栽培による野菜は味が薄い、えぐみがあると感じるようになりました。無意識に始まったオーガニックライフにより、味覚が敏感になってきている?

最近気付いたのですが、私達が販売するFarmer's Marketには農法を気にされるお客様がいる一方、毎週必ずいらっしゃる常連のお客様が農法の話にはあまり執着されず、単に美味しいと思って選んで下さっている、というケースもあります。
私も同じです。難しいことは分からないけれど、化学肥料・農薬に頼らず、本来の旬の時期に作られた野菜が、結果的に一番美味しい、と感じます。

旬のある生活。野菜不足な農家?

夫の農法のもう一つの特徴は全て露地栽培という点。
野菜は土で太陽と雨の恵みを受けて育っています。肥料の力を借りず、人工的な温度管理等もしない為、その野菜本来の旬の時期に合わせて種を蒔き、収穫の時を見極めます。いつも旬の野菜が食卓あるなんて、贅沢!ですよね?

だけどトマト、ナス、ズッキーニは夏にしか出来ません。だからラタトゥイユも夏にしか作りません。冬も食べたくなるのに。この例は少し極端ですが、旬に合わせて生活するのは大変、というのが嫁の本音。収穫期間が短かい野菜は楽しみにしていても一瞬しか味わえず。同じ野菜が毎日大量に獲れる時期はレシピが追いつかず、保存に悩みます。季節の変わり目には品目数が少なく、農家なのに野菜不足気味!?なんてことも。

そうは言っても、これは皆さんお分かりの通り、旬の野菜の味はまた格別です。
例えばトマト。年中買うことはできますが、夏にいい具合に日差しを浴び、水分のバランスが良くなると、ちゃんと酸っぱく、ちゃんと甘い。
カブは夫の場合、春と冬に向けて栽培しますが、それぞれ違う気候に触れて瑞々しさや味に違いが出ます。春は生で食べたほうが軽さが楽しめ、冬は煮込んでホクホクの甘みを味わいます。同じカブでも季節で違う特徴があるということを知ると、旬の食材が体のサイクルの理に叶うとも言われるのも納得。体の調子も良くなります

新米農家の嫁としては、まだまだレシピ開発が必要ですが、知恵とグーグル先生をフル稼働させ、トマトソースを仕込んだり、季節ごとのポタージュに挑戦したり、旬を楽しむことを心掛けると毎年その時期の食の思い出ができます。
農家はそれぞれの季節に向けて時に1年かけて準備をして勝負することも。
旬を生活に取り入れることは、ぜひお薦めしたいことの一つです。

ゆるく楽しむオーガニック

先のスーパーでの話。
大量消費、食の安定供給を支えるためにはスーパーで慣行栽培の野菜が安価で販売されるのは致し方ないこと。ハウスや人工技術で栽培された野菜が必要な場所、必要な人は大勢いる訳で、私達もひとたび外食し、コンビニを利用すれば、この恩恵に預かっているので、これを否定してはいけないと思います。
自分達の農法にはポリシーやこだわりがありますが、私達夫婦はそれを正しいと押し付けるのは違うと考えています。オーガニックは環境問題、SDGsとも深くつながりがありますが、この一面だけに固執しては成り立たなくなっている消費社会を急にどうこうすることはできないし、するつもりもありません。買い物の全部を農薬不使用にしようとしたら、時間も家計も費やさなきゃ成立しない現実もあります。
私は農薬不使用・無肥料の野菜が美味しいと感じていますが、それも人それぞれ。
「おいしい」「安全」と思える自分の基準を見つけて、知っておくこと。
そして、可能な時はその基準で食材を選ぶこと。その位でいいと思います。
自分の食のスタイルに囚われすぎてストレスになっていそうな方を見かけるとこもありますが、本来食はリラックスして、心を満たすもの
現に我が家、相当こだわっている風に書きましたが、欲求に逆らわずポテチだってラーメンだって食べますからね…。
これからもゆる〜く楽しんでいこうと思います。

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