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究極の謎かけ。

「伝える」ことと「伝わる」ことは違う。
これは常々感じるところです。

仕事であっても、家庭であっても、伝えることに一生懸命になりすぎると、相手との温度差が生まれてしまいますよね。。

職場でもこの「伝わること」に重きを置いている人は、顧客や仲間からの信頼は絶大です。相手の求めるものを察して、伝わるようにボールを投げることができる人には心底憧れます。。

野球でいうバッテリーのような関係性ができていたら、どんな球でも受けれるんでしょうが…
自分の投げたボールがどこかへ行っちゃったり、相手からのボールが豪速球すぎて避けたくなったり。。(あるー) 

私の好きな韓流ドラマで『チャングムの誓い』という作品があります。
このチャングムという主人公は、聡明で驚くほど知恵の働く女性です。
ひとつエピソードをご紹介。

チャングムは宮廷の医女として働いていて、チャングムの師匠(シン医務官)は大妃(王の母)を担当していました。

ところが、ある一派の差し金により、大妃が病気の治療を拒否する事態になってしまいます。(大妃がシン医務官に不信感を持ってしまう)

体調は悪くなる一方。
王もこの状況を聞きつけ、何とか治療を受けて下さいと頼むも、大妃は首を縦には振りません。
王は母上が治療を受けるまでは自分も絶食すると言い出します。(人騒がせな親子やで。。)

予断を許さない病状に付け入り、一派は王に揺さぶりをかけます。
王は余裕を失い、ついにシン医務官の罷免を言い渡してしまうのです。。 (この時代、むやみに担当医を変えることはできません。)

その陰謀に気付いたチャングムは、大妃にある賭け(謎かけ)を持ちかけます。

「大妃様は大切なお二方のおからだを顧みず、無謀な賭けをしておいでです。そこには、多くの人の命がかかっています。それなら私と賭けをして下さい。私が負けても卑しい命一つですみます。」 

チャングムは自分の命はとても大切なものだ。しかし、師匠の命は私の命でもある。と力強く訴えるのです。

この勝負では、自分が勝てば治療を受けてもらう、負ければ自分の命を差し出す。という思い切った提案をします。

しかし、チャングムはこの謎かけを出すとき、大妃様は必ず治療を受けることになる、と断言します。(なぜか自信たっぷり…)


チャングム:「人を言い当てる問題です。誰なのかお答えください。」

※皆さまも一緒にお考え下さい。

「その人は古くからの食医でありました。明国皇帝の食医は、その人に由来すると言われています。またその人は一家の僕(しもべ)で、あらゆる辛い仕事をしましたが、同時に、家族全員の師匠でもありました。その人が生きている間は、この世は山でありましたが、亡くなると、この世が水に沈んだという伝説があります。」

考える猶予は一日。
宮廷内では、答えは何だとこの話題で持ちきりです。

そして翌日。
大妃は、答えを側近の女官から事前に知らされていました。

ところが、大妃は謎かけの答えを言うことなく、治療を受けることをチャングムに伝えます。 
あんなにかたくなに拒否していた治療をなぜあっさりと受け入れたのでしょうか?

大妃:「答えはワタシなのです。」

一同:「…?」

チャングム:「はい、大妃様。答えは”母”です。」

「この人の主な仕事は食医だと言いました。母は、子の体調、食事、着物、睡眠のすべてに気を遣います。食医とは、王が召し上がってはならぬものや、どんなものがお体に良いかを考え、昼夜を問わず王のご健康を考える仕事です。それゆえ、古代明国皇帝の食医の起源は”母”です。ですので、大妃様は王の母であり、食医なのです。」

母は子に服を着せ、食べさせ、自分が辛くとも子には楽をさせる。子のために奴婢より辛い思いをするが、母の慈しみが無ければ子は何一つ得ることができない。ゆえに一家の最も辛い奴婢であり、誰よりも立派な師匠なのだ、と続けます。

大妃:「私が生きている間は王を支える山となり、私が死ねば、王の涙が海となる。。」

チャングムの謎かけによって、王を苦しめているのはこの自分だと、大妃は否が応でも気づかされるのです。
それと同時に母としてのあり方を再認識するんですね。

答えれなければ負ける。しかし、答えが分かれば、自分の愚かさに気づいてしまう。。チャングムはこうなることが、初めから分かっていたんですね。(勝負は決まっていた)

チャングムは大胆な試みをしましたが、誰も傷つけることなく、このピンチを見事乗り切り、師匠を救うことができたのです。

母と子の関係性はともかく。。
この、相手に気づきを与えるという手法が素晴らしいですね。
チャングムの聡明さが際立つエピソードです。 

目の前で正論を言われたところで、大妃の心は動いたでしょうか。
周りの人間は、説得する方法ばかりを考えていました。
大妃はこの謎かけのおかげで、俯瞰して今の状況を捉えることができたのだと思います。
本質を見失うことなく、伝え方を工夫して相手を動かしたチャングムに、とても感心したのを覚えています。

自分のために。
誰かのために。
知恵を絞って、時に大胆に。
伝えることの本質を忘れず。

私自身、仕事やnoteを通して、いろんなボールの投げ方や受け取り方を学んでいければと思います。。

読んでいただき、ありがとうございます。

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