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日の当たらない人間に刺さる言葉たち。

人生において、誰もが日の当たる場所に憧れをもっているのではないでしょうか。
周りからの期待や注目を浴びるということは、それだけ存在を認められていると実感できます。

私は新聞のコラムを読むのが好きです。
どこの新聞も朝刊一面に毎日掲載されていますね。うちでは取っていないので毎日は読めませんが、実家に帰ればいつも読んでしまいます。

あのコラムには時事ネタを盛り込みながら、執筆者の視点や想いが書き綴られており、見事なオチも用意されています。

以前、読売新聞のコラム『編集手帳』を長く担当されていた、竹内政明さんという方がいらっしゃいます。(今は一線を退いている。)
竹内さんの本を読んでからその文章に魅了され、過去の記事も読み漁りました。

竹内さんのコラムには「日の当たらない人」が題材となることが多いのです。
意図してそうしていたのでなく、振り返るとそのような傾向があるとご自身はおっしゃっています。ひねくれ者と呼ばれることもあるそうです。笑

例えば、バンクーバー五輪のコラムでは、フィギュアスケートで日本人男子初のメダルを獲得した高橋大輔選手でなく、演技中にスケート靴の紐が切れてしまった織田信成選手を取り上げています。

ソチ五輪では羽生結弦選手など輝かしい成績を収めた選手でなく、メダル確実と言われながら惜しくも逃した浅田真央選手と高梨沙羅選手を。

相撲界では、世間が注目した高見盛の引退と同じ日に、ひっそりと引退した武州山を。

幸せな人より、不幸せな人に。
勝者より、敗者に。

日の当たらなかった人たちに、多くの言葉をかけてくれています。
そんな文章ってとても胸に刺さるんですね。
誰しもが、日陰を経験したことがあるからだと思います。

日の当たっている人でも、人知れず努力を積み重ねてきた結果今の場所がある。期待という名のプレッシャーがその人を苦しめることもあるでしょう。
そう考えると、誰が読んでも心のどこかが共鳴する文章です。

新聞のコラムには字数が制限されているため、わずか460字程しかありません。(編集手帳の場合)
淡々と事実を述べているような文面で、なぜこんなに心に沁みるのか。。といつも感銘を受けています。

日の目を見なかったもう一つの物語。
知られることのなかった誰かの痛み。

そんな視点を、私も持ち合わせていたいと思うのです。


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