物語「GreatesT’rip Jum”V”oyage」15−1. okujyou jum'v'oyage 『破』(捌)ーい
前回 GTJVー14-3
「都倉さん、今少し時間もらっていいかな?」
お昼休みの始まり、わたしが教室を出ようとした時に、声をかけてきた人がいる。はっきりとした声。だけど、シキほど明るくむちゃくちゃではなく、コジカさんほどパワフルかつ自分勝手じゃない。振り向かなくても何となく誰かは分かった。
「予定があるけど、少しなら平気かな。もし時間がいるなら、放課後なら大丈夫だけど」
「いや、すぐ済ませる。悪いけど少しだけ」
目の前にいる、私より額ふたつ分長身でポニーテールで前髪上げてる彼女。男女問わず『ねーさん』と呼ばれる彼女が、アザラシAだった。普段はテキトーで誰とも分け隔てなく話すのに、いざという時だけはきりっと真剣になったりするから、何となく畏れられている。
そんな群れのリーダーが、わたしに気を遣いながら話しだしたから、自然とこっちも少し気を遣う感じになる。
「久しぶり、な感じがするな、都倉さん」
「そんなことないよ、みんなといるのが一番落ち着くもの」
「そうなんだ、よかった。でも」
思わせぶりに アザラシAが口ごもる。
「でも?」
話の流れが分からず、自然と先をせかすような感じになった。
「最近、自分たちのなかで都倉さんすごいなあ、って話題になるんだ」
「何で、全然前と変わんないって。みんなの思い過ごし」
「でも学園祭のリハーサルでもユーレイの役熱演してたし。コジ……小島さんたちもちょっと引くぐらいに。この間なんてメガネ外してみたり。結構なイメチェンだった。この間の数学の時も『勉強出来るかの違いはあるけれど、向上心がある人をバカニシテ、人を馬鹿にする人をヒイキスルのはおかしいですよ』なんて言ってたし」
全然興味なくて知らなかったけど、言われた先生はとりあえず生徒を馬鹿にするようなことは控えているみたい、だということ。他にも何だか色々、アザラシAはエピソードを挙げた。地理の時間に出てきた誰も分からないトリビア質問に一人答えたり、急に体調崩してフツーじゃ無くなった彼に最初に気づいて助けてあげたり(青春的なエピソードは全く始まらなかったけれど)。その他色々。
そんな話をいくつ上げてもらっても、自分の中のピントがずれていて、なんかそうなんだ、というきしかしない。いや、学校には行っているし、授業も受けているし、クラスの子たちとも、少なくともアザラシレベルとしては、普通に話しているんだよ。
それなのに、この何とも言えない違和感は何だろう。
自分じゃない、別の誰かのことを話しているように聞こえる。ほめられてイヤだ、とまでは言わない。言わないけれど何だかしっくりこない。新しい革靴を履いた時の小指の感覚。そんなことを考えながら、わたしは答える。
「あのさ。わたし自分で何も変わった気はしてないんだ。前と一緒だよ、変わってないって」
こういうとき、いつもは大丈夫、って付け足すのに、なぜかこの時は言わなかった。
Aはうん、と相づちを打ちつつも、顔は納得していないようだった。
「あのさ、都倉さん」
声のトーンが少し低く、真剣なものに変わる。
「最近お昼別々だろ。噂なんだけど、都倉さんが学校の外とか屋上とかに向かってるのを見た人がいるんだって。別にルール違反だとか、そんな説教くさいこと言う気はないんだ。でも」
「でも?」
またせかしてしまう。そしてその先に、何となくだけれど、わたしが聞きたくない何かが、待っているような気がした。
なのに、聞かずにいられなかった。
「屋上さ、出るんだって。都倉さんの嫌いなやつが。なんでも大昔に事故にあった人がいるらしくて、それ以来立入禁止って噂。別に昼に誰と一緒にいるかは個人の自由。でも万が一何かがあったらまずいって話が出てさ」
どきん、と何かが動くような音が耳の奥で聞こえた。
「大丈夫だよ知ってるでしょ高いところもキライなの。ユーレイも大嫌いなのにそんなとこに行ける訳がないじゃん! へーきへーき」
意識して明るい声で答えた、つもりだった。
けれど、急にアザラシAの視線が、弓を射る強さでわたしに向かってきた。
空気が変わった気がする、普段はホントーにテキトーなのに。だからアザラシたちのリーダーはA、なんだ。
「正直に言ってくれ、都倉さん。自分らといるのが嫌ならそれでいいんだ。怒る訳が無い。でも心配なんだ。外に誰が待ってる? 金とかせびられたりどこかのグループにいじめられてたり、してない?」
Aの心配は、全くの見当違いだった。都会にある割に、のんびりムードの学校で、そんなドラマチックな事態は起こらない。学校の外でも、特に争う相手もいない。むしろそれが、ユーウツの原因のひとつなんだけど。
でも、これはこれでありがとう、って思った。お母さんのウザさとあたたかさって、こんな感じなのだろうか。
「大丈夫だって、変なことはしてないしされてないよ。ただちょっと気分を変えたいんだ。みんなといるのが一番安心するのは本当。信じて」
そう言いながらも心で叫ぶように思っていた。
みんな、ごめん。今求めているのは、安心じゃない。
はやる気持ちを抑えながら、わたしは時計を見てすぐに走り出した。
「ごめん約束あるから! それじゃ」
「待って!」Aが廊下にぎりぎり響くくらいの声で呼んだ。もう少し大きければ、教室から誰かが様子を見にきそうな感じ。
「それじゃ一つだけ。言えるレベルでいい、会ってる人の名前を教えて」
本当なら誰とも会っていない、って言うはずだった。でもあせったわたしは思わずこう言い残した。
「シキっていう子。失礼で詳細不明だけど結構美人。じゃ!」
廊下を曲がり、階段を転がるようにわたしは走っていった。
アザラシAが深くため息をついた。
「ざんねーん」
教室の中、廊下との壁の近くからアザラシDの声が聞こえた。入口からのぞくように顔を出したのはアザラシBとCだ。
「ごめん、自分じゃ駄目だった」
Aが入口の方を向いて、苦笑いをしながら結果を伝えた。
「仕方ないよ、都倉さんだってなんだか大事な時なんだよ。よくわからないけどしばらくそっとしておいてあげよう、ね?」Bがやんわりした意見を言った。
「にしてもひでーよな。『外に出てるって誰かから聞いた』って、最初に気づいたのあんたじゃん。後追っかけたりしてストーカーかよ」CがAをからかう。
「うるさいな! 仕方ないだろう、気になったんだから」
Aが平手で軽くワンツーを放ち、Cがよけたところ、頭の上に、スリーのチョップが命中する。いてっ、というCの言葉を遠くに聞きながら、Aには気になることがあった。
「シキ、シキって、あの人なのかな……?」
こんなやり取りがあったのを知ったのは、後々になってからのこと。
屋上で、シキは、両手を上空に向かって広げていた。眼をつむり、大きな青色を抱きしめるように。
あまりにベタな光景だ。ベタなのに、シキがすると、何だか絵になる。やっぱりセイシュンもののポートレートに収録されるんだろう。
足音を忍ばせて近づいてみる。久々に忍者の気持ちになって、10m、7m、5m。
後少し、と思った時。
シキは足元にあった革製カバンを手に取り、素早いステップでわたしに襲いかかった。
「ハローガール、覚悟!」
ぶん、と振りかざした一撃を、なんとか安物の合成物質カバンで防いだ。ていうかモノが違う、ハンデあり過ぎだろ、なんて思った瞬間。
ぱちん。
シキのカバンの金具が解除され、ばらばらばら、と小物たちが灰色コンクリートに落ちた。
「あれ、なにやってんだか、ね」
わたしはまったくなあ、みたいな感じで笑おうとしたのに。
シキは今までに見たことの無い真剣な表情で、おもむろに小物たちを拾い始めた。マーカーの引かれた教科書、学校に置かないところは自分と同じだ。さらに使い古しでぼろぼろの参考書が数冊あったのは、ちょっと驚いたけれど。
ルーズリーフはノートが丁寧な字でびっしり。あえて減点するなら、詰め込み過ぎで要点が少し見づらい位。
黒のソフトケース、多分ペンが入ってる。ファスナーのところに、小さくさりげなくバットを持ったペンギンみたいなマスコット。私と同じ物持ってる、人のこといえないけれど変わった趣味だ。
『珈琲』と『バニラ』と書かれた紙パック飲料、多分また例のやつ、なんだろう。ミンティアとハリボー、今まで一度もくれたこと無いし。この間のコンタクトケースとウエットティッシュもあった、いつも持ってるんだ。
そして、定期入れ。SUICAでもPASMOでもない、いまどき珍しい磁気式のやつだ。これも赤色合皮で地味なもの。拾ってあげようとしたら。
「はい、ありがとう!」シキがひったくるようにしてわたしの手から取り、かばんの中に放り込んだ。おい。
もうひとつ、地面に落ちているものに気づいた。手のひらサイズのそれは、わたしも持っていて、人に言いづらいことが書いてあるあれだ。
しかも、わたしの無印とは違って、モレスキンってメーカーの、結構高いやつだ。ここまでの、予想外に庶民的だったシキの持ち物からはむしろ浮いている。ローマ字で「TOKYO」って書いてある。確か世界の有名な街ごとに、バージョンがあるんだっけ。なんでこんなこと知っているのかは忘れたけれど。
ちょっとうらやましい気持ちを込めつつ、また、拾ってみる、と。
「はい、これもどうも!」シキはリプレイ動画のように、メモノートをわたしから奪い取り、自分のカバンに放り込んだ。
「なんて態度だ。そんなに見られたくないの?」
「違うよ、大切なものだから」
シキの声も表情も、いつもの、落ち着いていて朗らかな感じに戻っていた。その流れで、話を続ける。
「あ、そうだ。拾ってくれたお礼にどうぞ。今日は特別にお好きな方をプレゼント」
シキがカバンから 、さっきのトーニューを取り出す。わたしは珈琲の方を取り、シキよりはぎこちない手つきで、ブラウンのパッケージにストローを刺した。苦くないし仄かな甘味とコーヒーの香り。これなら飲める。
「どうも。で、さっきのは何で大事なの?」
当たり前のことを最初に聞いてみた。シキがあわてるなんて、滅多に無いチャンスだ。
「だって、定期は貴重品だから。無くしたら困るでしょ。その他の物たちも程度は違うけど、全部大事」
シキがクリーム色のパッケージに、例の儀式をする、ちゅー。
「そういえば、カバンも結構いい感じのものだよね。ついでに言うと、さっきのちっちゃいノートも。もらったの?」
「うん、おじさんとおばさんが結構前に入学祝いに」
あれ、おかあさん、おとうさん、じゃないんだ。
一瞬思ったけれど、それを顔に出していいのかわからなかったから、何もないふりをした。
これはもしかして、聞いてはいけないこと、なのかもしれない。あまり話したい話題じゃないかも。
でも、シキのことを知るためだ。
「おじさんと、おばさんってなんか珍しい。フツー、それは両親の役目っぽいけれど」
「せっかくもらったものだから。なかなか自分じゃ買いづらいし」
わたしの頭にクエスチョンマークが浮かぶ、イメージとのズレが。
「シキって、いいところのお嬢さんじゃないの?」
「そんなことないよ。一般中流、正確には中の下家庭の一員。なぜそう思ったの?」
「こんなに世間ズレしてる感じな人、一般中流家庭にはあんまり居ないと思う。実は、やっぱり大富豪の娘とかでしょ。お父さんは大会社の社長、お母さんも別で複数の事業を持つ実業家とか」
シキが、わたしと目線を合わせた。いや、今までも会話できる位に見てきたんだけれど。バチッと音がするような、そんな感じ。
「父と母はいるよ。でもミノルの予想は外れ。二人とも」
そう言うと、両手をわたしの前に出した。白くて細い爪もくっきりとした、美少女の手。でも爪は短く切られていて、ところどころ細かく皮が剥がれている、家事とかをする人の手だ。報われない少女が、家の手伝いをさせられたりする物語を思い出した。少女は最後は高貴な人々に救われて、ハッピーになるんだけれど。
突然右手が空を指さし、左手の指はアスファルトの床の方に向いた。
「どっちにいったのか、よくわからないけど」
耳の奥の方で、ごうごう、と警告するような音が鳴った。風は吹いていない、のに。
(15-2に続きます)
「ジュークボックス・ブルース」
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Ms. Tokura, may I have a moment of your time now?"
At the beginning of lunch break, when I was about to leave the classroom, someone called out to me. Her voice is clear. But he wasn't as bright and mumbling as Shiki, nor as powerful and egotistical as Kojika-san. Even without turning around, I somehow knew who it was.
I have plans, but I don't mind if I have a little time. The most important thing to remember is that you can't just take a few minutes to do something you don't want to do. The actual "I'm sorry, but just a little bit. She, who is called 'neesan' by both men and women alike, was Seal A. The leader of the pack, who is usually a casual talker, is somehow revered because of his seriousness when the occasion calls for it.
The leader of the crowd was talking to me in a very considerate manner, so naturally I was a little concerned about her.
The actual a lot of people are going to be able to be able to get a lot more information on the web. But," she said, "but..." Seal A mouthed thoughtfully.
But?"
I was unsure of the flow of her conversation, so I naturally felt impatient to get ahead of her.
Koji...... Kojima-san and the others were also a bit taken aback. The other day, she took off her glasses. It was quite a makeover. The other day at the math class, he said, "There is a difference in whether you can study or not, but it's not right to make fun of those who have ambition and make fun of those who make fun of others. I'm not sure what to expect. The first thing to do is to make sure that you have a good understanding of what you're doing. He was the first one to answer trivia questions in geography class that no one could understand, and he was the first one to notice when he suddenly got sick and was no longer normal and helped him out (although he didn't start the coming-of-age episode at all). And many other things.
I was not interested at all and I didn't know about it, but the teacher who told me that seemed to refrain from making fun of the students for the time being. No, I go to school, I take classes, and I talk to the kids in my class normally, at least on the seal's level.
And yet, what is this indescribable sense of discomfort?
It sounds like you are talking about someone else, not yourself. I won't go so far as to say that I don't like being praised. I don't say it, but it just doesn't feel right. The feeling in my little finger when I put on my new leather shoes. Thinking about this, I responded.
You know what? I don't feel like I've changed at all.
A was nodding her head in agreement, but her face was not convinced.
The tone of his voice became a little lower and more serious.
I don't think I've changed at all. The most important thing to remember is that you can't just go to the store and ask for a discount. But - but what?
I'm impatient again. And beyond that, I somehow had a feeling that something was waiting for me that I didn't want to hear.
And yet, I couldn't help but ask.
I'm not going to say it's against the rules or anything preachy like that. But? - The one you don't like, Mr. Tokura. There was a rumor that someone had been in an accident there a long time ago, and it had been off-limits since then. It is up to each individual to decide who he or she will be with at lunchtime, but if something should happen to me, it would be a bad idea.
I said, "Don't worry, you know I don't like heights either. I'm not sure how you can go to a place like that when you hate Yurei too!
The air has changed.
That's why A is the leader of the seals.
I'm not sure I can go to that place. There is no reason to be angry. But I'm worried. Who's waiting for you out there? Are you being extorted for money or bullied by some group or something?"
A's concern was completely misplaced. For a school in the city, with its laid-back mood, such dramatic situations don't happen. I don't have anyone to fight with outside of school. That's rather one of the reasons for the euphoria.
But I thought, "Thank you for this. I wonder if this is what a mother's annoyance and warmth are like.
I'm fine," he said, "I haven't done anything strange, and no one's done anything to me. I just need a change of scenery. It is true that I feel most at ease when I am with everyone. Believe me," I thought as I said it, but my heart was screaming at me.
I'm sorry, guys. What I'm looking for now is not reassurance.
I looked at the clock and immediately started to run, suppressing my impatience.
I'm sorry, I have an appointment! Then" - "Wait!" A called out in a voice that just barely echoed in the hallway. If it were a little louder, someone might come from the classroom to check on me.
I had one more thing to tell you. I was supposed to say that I hadn't met anyone. But in my haste, I left it at that.
A called out in a voice that just barely echoed in the hallway, "This is Shiki. She's rude and unspecific, but she's quite pretty. Then one thing.
I turned down the hallway and rolled down the stairs as I ran.
Seal A sighed deeply.
Inside the classroom, I heard Seal D's voice coming from near the wall between the hallway and the classroom. Seals B and C peeked out from the entrance.
A turned toward the entrance and with a wry smile, informed me of the outcome.
I couldn't help it," I said, "even Mr. Tokura is going through a very important time. I don't know about you, but let's leave him alone for a while, okay?" B gave a soft comment.
'That's awful, though, isn't it? I'm sorry, I shouldn't have done it myself," A said, turning to the entrance and bitterly informing him of the outcome.
I don't understand it, but let's leave him alone for a while, okay? A lightly slapped him with a one-two, and when C dodged, he was hit over the head with a chop from the three. A heard C's words, "Ouch," in the distance, but something was bothering A. "Shiki, shiki, shiki," he said, "you're a stalker.
Siki, Siki, is that him? ......?"
It was not until later that I learned of this exchange.
On the rooftop, Shiki held his hands out toward the sky.
A's eyes were closed, as if hugging a big blue one.
It's a very goofy scene. It's goofy, but when Siki does it, it's kind of picturesque. I knew it would be included in a portrait of Seishun stuff.
I sneak up on the sound of his footsteps. It had been a long time since I felt like a ninja. 10 meters, 7 meters, 5 meters. Just when I thought I was almost there, I saw a leather cover on my foot.
Shiki picked up the leather bag at his feet and pounced on me with quick steps.
Hello girl, get ready! I managed to block the blow with my cheap synthetic material bag. I thought, "I'm too much of a handicap.
Then, "snap!
The clasps on Shiki's bag were released, and the small items fell in pieces onto the gray concrete.
The first thing you need to do is to make sure that you have a good idea of what you are looking for. I had the same textbooks with markers on them, and the fact that I didn't put them in school was the same as mine. I was a little surprised to find a few more worn and tattered reference books.
Loose leaf notebooks were filled with carefully written notes. I would give them points if I had to, but I think they're so crammed in there that it's hard to see the main points.
A black soft case, probably containing a pen. A small mascot on the zipper that looked like a penguin with a bat. I can't speak for others who have the same things I do, but I can say that I have an unusual taste.
Packaged drinks labeled "Coffee" and "Vanilla," probably the same ones again. Mintia and Haribo, they've never given them to me before. There was also a contact case and wet wipes, which I always carry with me.
And a commuter pass holder, neither SUICA nor PASMO, but a magnetic type, which is rare nowadays. This one is also red-colored synthetic leather and plain. I tried to pick them up.
Thank you! Shiki snatched them from my hands and threw them into my bag. Hey.
I noticed another one on the ground. I was about to pick it up when I saw that it was a palm-sized book that I also had and that contained things that were difficult to say to others.
And unlike my Muji, it was a rather expensive one made by Moleskine. It was rather out of place among Shiki's belongings, which had been unexpectedly commonplace up to this point. It has "TOKYO" written in romaji. I think there is a version for each famous city in the world. I don't remember how I know all this.
With a little envy, I picked it up again and said, "Here you go!
Yes, thanks for this one too!" Shiki snatched the notebook from me and threw it into his bag as if it were a replay movie.
What an attitude. Do you want me to see it so badly?"
Shiki's voice and expression had returned to their usual calm and cheerful tone. I continued the conversation in that vein.
Oh, yes," he said, "thank you for picking it up. Please come in and thank me for picking you up. I'll give you a special gift today," he said, pulling out the towelette from his bag. I took the coffee and, with a hand less awkward than Shiki's, put the straw through the brown package. It's not bitter, has a hint of sweetness and a coffee aroma. I can drink this.
Thanks. What's so important about the one you just got?
I asked the obvious question first. It's a rare chance for Siki to be flustered.
Because the subscription is very valuable. You wouldn't want to lose it, would you? Siki performed the ritual on the cream-colored package.
I asked him about his bag, which was also quite nice. Did you get it?
Maybe this is something I'm not supposed to ask. I don't think it's a topic I want to talk about too much.
But it was to get to know Siki.
Uncles and aunts are a rarity.
Isn't Siki a nice girl from a nice place?
I don't think so. They are members of an ordinary middle class family, or to be more precise, a lower middle class family. What makes you think that?
I'm not sure how many middle class families have someone this out of touch with the rest of the world. Actually, she's the daughter of a millionaire, after all. The father is the president of a large company and the mother is a businesswoman who owns several businesses. No, I've seen enough of them to have a conversation with them. It was like a bang.
'Father and mother are there. But Minoru's prediction was wrong. Both of them," she said and put her hands in front of me. The hands of a beautiful girl, white and thin, with well-defined nails. But the nails were cut short and the skin was peeled off finely in places. It reminded me of a story about a girl who is not rewarded and is forced to help out at home. The girl is saved by noble people in the end and becomes happy.
Suddenly her right hand pointed to the sky and her left pointed to the asphalt floor.
I'm not sure which way they went," I heard a rumbling in my ears, a warning sound. The wind wasn't blowing, though.
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(Writter:No.4 ヤヤツカ Photo:No.5 ハルナツ Auful translation:Deep L & No.0)
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