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バカ=無知ではない:書籍『バカと無知』が明らかにする残酷な真実

まずは理解せよ

正義のウラに潜む快感、善意の名を借りた他人へのマウンティング、差別、偏見、記憶……人間というのは、ものすごくやっかいな存在だ。

しかし、希望がないわけではない。
一人でも多くの人が人間の本性、すなわち自分の内なる「バカと無知」に気づき、多少なりとも言動に注意を払うようになれば、もう少し生きやすい世の中になるはずだ。

科学的知見から、「きれいごと社会」の残酷すぎる真実を解き明かす最新作。

「きれいごと」だけでは生きていけない

『言ってはいけない』から6年、「人間について、知りたくないけれど、知っておくべきこと」

「芸能人と正義に関するニュース」がどうして人気コンテンツになるのか?

キャンセルカルチャーが心地よさをもたらすのはなぜか?

バカと利口がじっくり向き合うことで生まれる悲劇とは?

「きれいごと」ばかりがはびこる現代社会の「残酷な真実」に光を当てる決定版。

amazon商品ページより抜粋


本記事は橘玲さんの書籍『バカと無知』を要約したものとなっています。

僕が実際に読んで「気づきを得た部分」や「役に立ちそうだな」と思ったところを、出来るだけシンプルに、僕なりにまとめさせてもらっています。

この記事を読んで、興味を持たれたら、ぜひ実際に手に取って読んでみてほしい。

皆さんの書籍購入の手助けになれたら幸いです。



人間の認知と社会


①無知と現代の複雑さ

バカと無知は違う。

現代社会は非常に複雑で、誰もが世の中の多くのことを知らない。

スマホの仕組み、ネットの仕組み、面倒な事務手続きなどなど、知らないけど普通に生活しています。

人々はそのような知らないことは、他者にアウトソースして生きている。

これは無知だが、自分は「知らないことを知っている」と自覚していることが大切。

逆に「知らないことを知らない」=「バカ」という状態、これが非常に厄介である。


②悪いニュースへの反応

そもそも世の中の人間は、なぜこんなにみんな「怒っている」のか?

良いニュースよりも、悪いニュースに反応し、たまに起きる異様な事件に注目が集まる。

赤の他人のスキャンダルなんか、どうでもいいではないか。

生物の脳はトレードオフの関係、生存と生殖を最適化するように進化してきました。

脳にはリスクを知らせる警報器のような機能が備わっており、私たちがネガティブな話題に過剰に反応するのは、この警報器が強力に働くからである。


③進化と脳の設計

なぜこんな機能が備わっているのか?

これは進化の過程で、集団生活からの排除=死に直結していため、リスク回避が重要だった背景があるからだと考えられています。

ただ、現代では集団から排除されたとしても、このようなことはほとんど起こらない。


集団と個人


①集団と社会的地位

人間社会はアリのような昆虫社会に似ている。

人間は過去、同族集団内で婚姻を行い、生殖を行なってきました。

自らの序列を上げないと、性愛を獲得できず子孫を残せなくなってしまう。

そんな中で、噂や権謀というのは、集団の中で生き延びるための極めて強力なツールだったのです。

人の脳が極端に発達したのは、この集団内の権謀に適応するためではないかと言われている。


②報酬と損失

人間の脳は、「劣った者を報酬」、「優れた者を損失」と捉える傾向があります。

ルール違反を犯したものを罰することで、脳の報酬を司る部位が活性化し、快感を覚える。

自分の行為は正当化され、正義を最大の娯楽としてしまうのです。


公正な世界と認知


①認知的不協和

認知的不協和とは、自分の信念や考えと行動が矛盾するときに感じる不快感のこと。

人は、基本的に自分が正しいという前提で生きている。

例えば、「タバコを吸う」という認知と「喫煙は肺ガンのリスクを高める」という認知は、両立しません。

そこで、「愛煙家でも長生きしている人はいる」などと、認知を変えて自分の喫煙行為を正当化する。


②犠牲者非難

何らかの事件や事故が起こった場合、被害者と加害者がはっきりしていればいい。

人間の脳は加害者を攻撃するだけだ。

しかし、加害者を特定できなかった場合、「犠牲者非難」という非常に厄介な認知が発動します。

加害者がいなく、誰も罰せられないのは非常に不快なので、「実は被害者にも非があったのだ」などと認知を変え、因果応報の物語に書き換えようとする。


キャンセルカルチャー


①キャンセルカルチャーの疑問

キャンセルカルチャーとは、「過去の行いがネット等で炎上し、現在の地位や立場、出演媒体から撤退させられる」こと。

「過去の過ちは永遠に許されないのか?」

こんな、何十年も昔のことをいつまでも批判されるような社会で、いったい誰が暮らしたいと思うのか。

こんなものは被害者中心主義と全く同じである。


②叩かれるのはキャンセル可能な地位にいるものだけ

キャンセルの対象者は、有名人ばかり。

そして、有名人を袋叩きにしたところで、「別に問題は解決しないし、社会が良くなるわけでもない」

ではなぜ、キャンセルカルチャーが巻き起こるのか?

それは「気持ちいい」から。

社会的な動物である人間は、不正を行ったと「感じる」相手に制裁を加えることで、脳が快感を覚えるように進化の過程で設計されている。




自己評価


①人は誰しも自らを過大評価する

「あなたは平均と比べてどうですか?」と質問をすると、大多数の人が「自分は平均以上だ」と答える。

恋愛や仕事、車の運転技術や我が子の才能であれ、例外はない。

これは「人並み以上効果」と言われている。


②楽観主義

心理学者がある実験を行った。

まず学生たちにテストを行ってもらい、点数が下位と上位のグループに分け、それぞれの学生に「自分は何点取れていると思う?」と質問する。

すると、下位のグループは実際の平均が「12点」だったにもかかわらず「68点」だと答え、過大評価していた。

逆に上位のグループは実際の平均が「86点」に対し「74」点と答えて過小評価しており、自己評価はほとんど同じになってしまった。


③能力が低い者は自分の能力を認知できていない

なぜこのようなことが起こるのか?

上位の学生は、自分の能力を客観的に把握できており「自分でもこれくらい分かるんだから、他の学生はもっとできるだろう」と、思える。

だが、他の学生の回答をこの上位グループに見せてみると、他の学生が思ったより正解できていないことが分かり、自己評価を上方修正した。

逆に下位の学生に同じことをすると、更に自己採点の点数を上方修正し、勘違い(過大評価)が更に広がった。

「バカの問題は自分がバカであることに気づいていないことだ」


民主的な社会


①集合知の実現

集合知を実現するには「一定以上の能力を持つものたちだけで話し合う」ことが大切だ。

優秀な人物同士で、それぞれを補い合い、質の高い議論ができる。

仮に、それが無理な場合の選択肢は「優秀な個人一人の判断に従う」こと。

どちらにも共通することは「バカは排除したほうが良い」ということである。


②集団の平均化

人は無意識のうちに集団のメンバーを平均化することがわかっている。

なぜなら、能力の高い者は自分を「過小評価」し、能力の劣っている者は自分を「過大評価」するからだ。

その結果、バカに引きずられてしまう。


③自尊心

バカを排除できなくても、話し合わなければ意思決定の質は下がらない。

それは自尊心で説明がつく。

自尊心というのは、他者からの評価であり、この自尊心を傷つけられることは、ナイフで刺されることと同じようなものである。

人は数万年かけて、自尊心を高く保ち、自己肯定感が下がる事態を徹底的に避けるように進化してきた。

話し合いでメンバーの自尊心を傷つけると、なりふり構わずその自尊心を回復しようとする。

結果、意思決定の質が大きく下がってしまう。

ワンマン企業が成功する理由は、独裁者の意思決定によってバカに引きずられることが避けられているからかもしれない。


合理的な無知


①現代社会の複雑化

バカと無知は違う。

無知とは「問題解決に必要な知識を欠いていること」であり、実際にはほとんどのことを詳しく知らないまま生活しているだろう。

それは、現代社会がものすごく複雑だからであり、あらゆる疑問に知識を得ようとしてしまうと、人生200年でも足りない。

そのため、何か(例えば家電)を購入する際、全てのメーカーやモデルを詳細に比較せず、店員や他者の評価を参考にして「ベスト」とは言えないが「ベター」であろう選択をする。

ベターな選択の方がコスパがいい。


②投票の価値

政治の世界では、有権者の「政治的無知」が問題になっている。

有権者の大半は、投票・政治に対する基本的な知識を持っていないことが、あらゆる調査で明らかになっている。

大規模な投票では、一人の一票の価値は限りなく小さい。
「一票の価値はほぼゼロ」である。

だが、それでも有権者の半数近くは選挙に行っている。

合理的に判断するならば、行かないほうがいいではないか。


③同調圧力

なぜ半数近くの人が選挙に行くのか?

民主的な社会では「同調圧力」が働くからだろう。

学校では選挙は「国民の義務」と教えられ、社会人になれば、会社から「選挙に行け」と言われる。

会社によっては「済証」を持ってこいと言うところもあるかもしれない。

行きましたと嘘をつけばいいのかもしれないが、それでは気分が悪い。

だったら、出かけるついでにフラッと投票所に立ち寄り、適用な人物に投票をした方がスッキリするんじゃないだろうか?

実際に10分とかからず終わるため、コストはそれほど大きくない。


④真のコスト

真のコストは一体どこにあるのか?

それは、候補者の詳細な情報を入手し、誰に投票するかを検討することである。

正しく投票しようと思うと、自分の理想の政治像を思い描き、現実との乖離を認識し、各候補者の政策方針を調べあげなければならない。

「一票の価値はほぼゼロ」なのに、こんな面倒なことを一体どれだけの人がするだろうか。

このことから、有権者にとって合理的なのは「何も調べずに、とりあえず適当に投票する」ということになる。

合理的無知の出来上がりだ。


自尊心


①優位性

自尊心は「他者との関係性」で決まる。

相手に対して圧倒的に優位な立場にいる場合は、何を言われても自尊心は傷つかない。

たいていの親が、幼い我が子に反抗されてもなんとも思わないのは、大きな力の差があるからだろう。

かつて、日本は「アジアで一番」だった。

しかし、いまや中国のGDPは日本の三倍となり、マカオやシンガポールにも大きく引き離されている。

今、日本人の自尊心は大きく揺らいでいる。


②集団同士の抗争

人間は「自分が所属する集団」をトップにしようとすると同時に、その「集団の中」で自分がトップに躍り出ようとする。

今まで戦国の作品で、散々描かれてきた構図である。

なぜ、このような競争が脳にプログラムされたのか。

それは集団同士の構想に敗れれば、男は皆殺しにされ、女は子供を奪われ陵辱されてきたからであろう。

このような環境にあれば、どんなことをしても集団を防衛し、敵を殲滅しようとする本能がインプットされたのは当然と言える。


③集団内の地位

それと同時に、集団内で高い地位にいた者はは、より条件の良い性愛者を獲得できる。

この条件は、自らの子孫を後世に残すのに非常に有利に働くため、集団内での競争が激化してしまう。

アイデンティティは自分が属している集団と、集団内の地位で決まるということから、シンプルな社会モデルが出来上がる。


④マジョリティ(多数派)とマイノリティ(少数派)

アメリカで、ある研究が行われた。

まずはこの二つのグループに社会を分断する。

一般的に、マジョリティのメンバーは自尊心が高く、マイノリティは自尊心が低い。

その上で、さらにこの二つのグループ内で「上位層」「下位層」に分ける。

すると四つのグループが出来上がる。

そして、それぞれのグループのメンバーに「肯定的な評価」と「否定的な評価」を同じだけ与え、自尊心にどのような影響が出るかを調べた。

マジョリティ側のメンバーに対する肯定的な評価は、下位層に大きな影響を与え、同様に下位層のメンバーは否定的な評価にも強い反発を示した。

逆にマイノリティ側は、どちらの評価も上位層が強い反応を示したのである。

なぜこのようなことになるのか?

自尊心の低い者は、もともと自集団への評価も低いので「当然だ」「まあそんなものだろう」と、素直に否定的な評価を受け入れる。

逆に自尊心の高い者は、自集団にも高い評価を期待するため「そんなはずはない」「もっとできる」と、強く反応し、拒絶する。

どうやら、マジョリティとマイノリティで地位と自尊心の関係が逆転してしまうらしい。

この研究結果は、現代のジェンダーをめぐる争いにも当てはめることができると、本書では書かれている。

これ以上は長くなってしまうので、気になる方はぜひ、実際に手に取って読んでみてほしい。


⑤自尊心は結果

よく教育現場などで「褒めて育てる」や「自尊心が傷つく行為は避けるべきだ」という声が聞こえる。

しかし、ある研究の結果「自尊心を養っても学業やキャリアが向上することはないし、それ以外にも特にポジティブな影響はない」ということが判明したという。

自尊心は原因ではなく結果。

恵まれた家庭に育った人は、あらゆる環境で上手くやり、結果や成績を出すので自尊心も高い。

テストで良い点数を取ったり、何かで良い成績を上げることで「自尊心」が高まる。




まとめ


まだまだ、これ以外にもたくさんの、紹介しきれていないお話しがたくさん出てきます。

その全てが、さまざまな研究や実験に基づいて話されており、とても面白く興味深い内容となっています。

本書では、人間の認知、教育と情報の格差、社会における知識の分配などについて具体的な事例や理論を基に解説し、最終的には自分の「無知」を理解することが、賢く生きるための第一歩だと述べています。

ぜひ、『バカと無知』を手に取って、日常生活やビジネスに役立つ新たな視点を学んでみてください。


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